
風にそよぐワタスゲと言いたい所だが、生憎のガス空では、何故か寂しい。

しかし木道の脇には、色々な花が咲いている。
この花は、葉がイチョウの葉に似て、岩場に咲くので「イワイチョウ」と名付けられた
と言うが、実際には岩場では無く、湿地に咲く事が多いので、「ミズイチョウ」と言う
別名を持っている。
同じミツガシワ科なので、ミツガシワの花と似ているが、ミツガシワの花弁に毛が
密生するのに対して、こちらには毛がないので見分けやすい。

こちらは食虫植物で有名な「モウセンゴケ」、花はまだ咲いていない。
葉に紅紫色の腺毛が多数あり、粘着性の消化液を出す。
トンボくらいの大きさの昆虫なら、逃げることが出来ないほど強力である。

これは何かと言えば「ワタスゲの綿毛」の写真、絞りを思い切って絞り込み、撮って
見たら、周辺の光量が落ちて暗くなり、綿毛だけが浮かび上がった。
誰かの白髪頭にそっくりだなんて、言っちゃーダメだよ(笑)

木道が登りになり、やがて下りの道になると、途中に人形石への分岐がある。
この分岐から左に行くと人形石で、そのまま直進すると大凹の花畑になる。

階段状の木道を降りて行くと、腹ばいで花を撮っているご夫婦がいた。
私たちが、ツマトリソウの名前の由来である、花弁の端に赤い模様の入った花を
探していると、「何の花ですか?」と尋ねてきた人がいた。
花友がツマトリソウの由来を説明して「そのツマの模様が無い、ツマナシばかりなの」
と言ったら、先ほどのご夫婦の奥様が、「やもめなのね。」と言う。
この機知に富んだ言いように思わず「その言い方、ブログのネタに貰います。」と
言うと、にっこりほほえまれた。
それにしても「やもめ」等という言い方を聞くのも久しぶりであった。

霧に覆われた梵天岩の有る山を見ながら、なおも下ると前方に少しだけ残雪のある
湿原「大凹」が見えてくる。
名前の様にこのコースの一番の低地で、ヒナザクラの群生地でもある。

ここは大凹の直前にある旧人形石との分岐で、現在は植生保護のため立ち入り禁止に
なっている。
前に掲載した俯瞰図の「007」の番号の所である。

大凹に入ると、賑やかな花畑となる。
チングルマ、イワイチョウ、イワカガミなどが色とりどりに咲いている。

イワカガミの群生

ヒナザクラの小さく可憐な花が慎ましく

木道のすぐ脇にアオノツガザクラが群生して見事だ。

ピークが過ぎかかっていたが、まだまだ見頃のチングルマ。

残雪の消えた後に、一面に咲くヒナザクラ

斜面の上部に残る残雪、お会いした観察指導員の方によると、このところの暑さと雨で
あっという間に消えて少なくなったという。
わずか4~5日前は、倍以上の残雪が有ったと言う。
そう言う意味では、私たちは運が良かったかも知れない。
なぜならヒナザクラの見頃は、雪解け直後が良いからである。
あと一週間遅かったら、見頃を過ぎていたかも知れないから。

木道の左側には池塘が多く、ワタスゲが彩りを添えている。

これは昨年の大凹の様子、えー右のモデルは、言わぬが花と言うことで(笑)

大凹の一番奥に水場がある。

樋が粗末だが水はおいしい、ここで水の補給をしておこう。
コップが一個おいてあった。

黄色いスミレが咲いていた。
たぶん「キバナノコマノツメ」というスミレだと思う。
と言うのは、佐藤光雄さんの書かれた「ふるさと吾妻山の植物」には記載が無かったが
日野東さんと葛西英明さんの共著した「フラワートレッキング吾妻連峰」という
本の中に、ウスバスミレの解説があり、その中で吾妻には「キバナノコマノツメ」が
産すると文献にあると書かれているからだ。
そして嬉しいことに、その「ウスバスミレ」ではないかと思う菫も見つけた。

先ほどの佐藤光雄さんの本によれば、西吾妻山や西大嶺の林床や林縁の少し湿った
所を好んで生える多年草である。
茎は短く根元から3~6枚の根生葉をだす。
葉身は円形で長さ2~3cm、葉縁に鋸歯がある。花期は6~7月頃で、花柄を伸ばして
白花をつける。
花弁の長さは7~10mm、唇弁には紫色の筋がついている。
とあり、特徴もあっているからだ。
大凹からいろは沼に向けては、大岩のゴロゴロした急登になる。
遙かに離れた藪の中に、キヌガサソウが咲いている。
藪の隙間から望遠で撮ってみた。

この写真は、花の部分のみをトリミングして拡大しものなので、流石にピントは
ずれているが、キヌガサソウと判ると思う。
以前は登山道の脇に咲いていたというが、盗掘と踏みつけによって激減したという。
どこに行っても盗掘の話が出る。
いつから日本人の心がそれ程貧しくなったのだろうか。残念である。
次回の登山でも、無事にけなげな花に会いたいと思うのだ。
続く