旅に病んで 夢は枯野をかけ廻る
私にとって芭蕉の辞世の句、心
こそが旅人だと教えてくれた宝
物のような一句である。
一人旅を初めて経験したのは、二
十代の半ば。その時、私は伊勢神宮
を参拝し、志摩に泊まった。今でも
明るい光に彩られた、晩秋の伊勢志
摩の風景が目に焼き付いている。
一人って、なんて気ままなんだろう、
なんて解放感があるのだろうと、
その時初めて一人旅の楽しさを知
った。
仕事場の机にしがみつきながら、
ふっとため息を漏らす。旅に出たい
などと突然思う。その思いが高じ
ると、心が勝手に空を駆ける。
美しい景色が目の前に浮かぶ。
優しい人たちが笑顔で語りかけて
くれる。
そんな時、この句が心をよぎる。
たとえ体は病んだとしても、心
は千里を走り、野を駆け巡り、
逢いたい人のもとへ飛んでゆく。
そう、人間は無限の中に生きて
いるのだと、この句は教えてく
れる。
夢のように過ぎていく人生もまた
旅。多分、芭蕉はそう言いたかっ
たのだろう。
一生を旅の空で過ごした芭蕉の
辞世の句と思えば感慨もまたひと
しおだ。
旅にも人生にも未熟な私はまだそんな
心境にはなれないが、この句の中に
旅の醍醐味と真実が隠されているよう
で、思い出すたびに心がサワッと揺れる。
私にとって芭蕉の辞世の句、心
こそが旅人だと教えてくれた宝
物のような一句である。
一人旅を初めて経験したのは、二
十代の半ば。その時、私は伊勢神宮
を参拝し、志摩に泊まった。今でも
明るい光に彩られた、晩秋の伊勢志
摩の風景が目に焼き付いている。
一人って、なんて気ままなんだろう、
なんて解放感があるのだろうと、
その時初めて一人旅の楽しさを知
った。
仕事場の机にしがみつきながら、
ふっとため息を漏らす。旅に出たい
などと突然思う。その思いが高じ
ると、心が勝手に空を駆ける。
美しい景色が目の前に浮かぶ。
優しい人たちが笑顔で語りかけて
くれる。
そんな時、この句が心をよぎる。
たとえ体は病んだとしても、心
は千里を走り、野を駆け巡り、
逢いたい人のもとへ飛んでゆく。
そう、人間は無限の中に生きて
いるのだと、この句は教えてく
れる。
夢のように過ぎていく人生もまた
旅。多分、芭蕉はそう言いたかっ
たのだろう。
一生を旅の空で過ごした芭蕉の
辞世の句と思えば感慨もまたひと
しおだ。
旅にも人生にも未熟な私はまだそんな
心境にはなれないが、この句の中に
旅の醍醐味と真実が隠されているよう
で、思い出すたびに心がサワッと揺れる。