好きな曲

帽子

西条八十　作　

--母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね？
ええ、夏碓井から霧積へ行くみちで、
渓谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ。
--母さん、あれは好きな帽子でしたよ。
僕はあのとき、ずいぶんくやしかった。
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
--母さん、あのとき、向うから若い薬売が来ましたっけね。
紺の脚絆に手甲をした---。
そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたっけね。
だけどとうとう駄目だった。
なにしろ深い渓谷で、それに草が
背丈ぐらい伸びていたんてすもの。
--母さん、本当にあの帽子どうなったでせう？
そのとき傍に咲いていた車百合の花は、
もうとうに枯れちゃつたでせうね。そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが鳴いたかも知れませんよ。
--母さん、そして、きっと今頃は、--今夜あたりは、
あの渓間に、静かに雪が降りつもっているでせう。
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y・Sという頭叉字を
埋めるように、静かに、寂しく--。
　
　先日亡くなられたジョー山中さんの代表作である人間の証明。この詩を題材に作られたと聞きました。この曲本当に好きな歌でした。

おやじ達の会合（プロローグ）

　実は、定期的に会っている友達2人には本当に感謝しています。1つは野球。小学校時代の野球の話は何回か書きました。監督の息子ということで、家でも周りの父兄からも罵声をあびせられ、中学でも野球部に入るつもりでいましたが、精神的に耐えられなくなり、もう、2度と野球はしないと自分に言い聞かせ、野球部には入りませんでした。ところが、短大1年の5月、2度と野球はしないと決めていた自分にこの二人が大学内の大会に出たいので名前だけでいいからチームに入ってくれないか？って言ってきたんです。同じ短大の同じ学部でしたが、全く面識が無かった二人でした。もちろん僕は断りました。でもね、この二人、しつこく勧誘してくるんです。下手でもいいとか、あと一人で9人揃うとか言って。根負けした僕は、下手でもいいならということで大会に出ることにしました。この大会で運命の人と出会いました。四年制大学の方の研究室のチームと戦ったとき、その研究室の先生が凄く暑いんです。１球１球学生に支持を出し、これがまた的確なんです。春の大会は、このチームに負けました。でも、自分の中で、何かを感じこのまま秋の大会に向かって練習するようになりました。昼休みだけしかグラウンドが使えなかったので、毎日練習していると、この研究室の先輩も毎日練習していました。時々一緒に練習させてもらうようになり、時々先生も練習を見に来られていました。この指導がまた的確でユニークだったんです。そして、秋の大会。なんと僕たちのチームは準優勝したんです。このとき、本当にうれしかった。そして、このとき、この先生の元で、もう一度野球がしてみたいと思ったんです。それには、難関が待っていました。４年制のその先生のいる学科に編入しなければならない。それから、必死で勉強し、編入試験に合格しました。しかし、短大の教科数とこの学部の教科数の違いからもう一度２年生から、しかも、１教科も落とせない。人間何か目的があるとがんばれるもんですね。そして、なんとか３年になった春、真っ先にこの研究室の先生を訪ねました。研究室に入れてくださいと。そして、４年生、見事にこの研究室に入ることができました。この後のことはまた後日。
　このことは、この二人に話したことなかったんじゃないかな？本当に感謝しています。