止血剤の服用を中止して三日目。今のところ、再喀血の兆しはない。ただ、今まで味わったことのない塩辛い痰が喉に絡む。これって、気管支で出血していると現れる症状らしい。
そりゃあ、あれだけ毎日繰り返し血を吐いてたのに、突然きれいに止まるはずはないよね。
と言って、止血剤を再度服用するほどのものかどうか。
寝ている間に大量再喀血が起これば、窒息死もあるわけだから用心にこしたことはないかもしれないけど、ずっと飲み続けるわけにもいかんしね。
悩む。
今は一応、日常生活が舞い戻ってきている。
咳と痰はしつこく続いているけど、仕事に支障が出るほどではない。
本当に怒涛のような三週間だったけど、貴重な日々でもあった。
一番の発見は、いざとなったら人間というのは、意外とあっさり死を受容できるものらしい、とわかったことだ。
症状の消えた今は、再び死は怖いものになっているけど、余命告知も覚悟していた一週間前は、けっこう冷静に最期を計算していた。
人生は有限であり、私という存在は消えてなくなるのだという事実を、実感をもって受け止めていた。
それでいて、そんなに怖いとも思わなかった。
「まあ、仕方ないよな」という程度の感覚だ。
なんせ、検査結果が出る前から、イレッサの説明をされるんだもんね。
最近は本当に隠さないのね。
今回は必要なかったけど、いつかその時がきても、今回と同じように冷静に説明を聞くことができるのではないかと思う。
本当に今も不思議に思えるほど、動揺はなかった。
あくまでも経過観察なので、3月にはまたレントゲンを撮りに行かなくてはいけない。
「ゲーッ、また病院かぁ」とも思うけど、実は楽しみなこともある。
病院の近くに、激安洋品店と美味しいパン屋さんをみつけたのだ。
ささやかだけど、楽しみはないよりあるほうがいいよね。
もしまた入院することになっても、楽しみはそれなりにみつけていけそうな気がする。
とりあえずは、病室を抜け出しての一服かな?
(禁煙しろよ)