余白のメモ

詩と短歌と好きな本
指の上で四季はほほえむ

あやうさ

2020-10-17 21:50:14 | バラ色の獣の詩
ドンキホーテでいい
僕はヒーローなのだ
誰にも負けない
あなたを愛する

妄想じゃない
空想でもない
幻覚でもない

ドンキホーテになろう
危うさの残る物語は
誰を幸せにする?
決まってるさ
愛する人を幸せにする

ドンキホーテになってきた
危険じゃないよ
危なくないよ
怖くなんかないよ
ドンキホーテは素敵な話だから

愛しているから
誰にも負けない
槍で一突き
愛馬の輝き
無敵の主人公
ドンキホーテ

内緒だけど
僕はドンキホーテなのさ
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観察

2020-10-15 23:57:14 | バラ色の獣の詩
毎日同じ席でコーヒーを
飲む男の子がいた
そのお店に行くたびに
私はその男の子を観察する
そう観察する
味気ないその男の子は
どこか物悲しさをまとっている
悲しみの影が私には
安心感と
忘れてしまった子供の頃の
無邪気さを思い出させてくれる
ような気がする
男の子は同じ時間、同じコーヒー、
同じ席、同じ表情をしている
私は見るたび
どこかで求めながら
一方では避けていたのかもしれない
それが私を観察というものに
駆り立てる
見ているあいだ私は
時間というものを忘れる
周りの喧騒を忘れる
私と男の子とコーヒー
それだけ
コーヒーの香りが異空間への入口
男の子のカップを持つ手の温もり
私は男の子に包まれる
私は男の子のすするコーヒーになり
身を委ねて口の中で男の子を温める
飲み終わり席を立つ
あどけなさの姿勢は
さっとドアを開け消えていく
私は現実に戻される
そこには私とコーヒー
男の子の座った席の影を
私はまた観察する
時計の針の動く音を気にしながら
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になり

2020-10-15 23:52:06 | バラ色の獣の詩
大人になり
子供になり
子供になり
大人になり

好きな花になり
鳥になり
風になり
波になり
星になり

好きな本になり
雨になり
傘になり
靴になり
恋をして

子供になり
大人になり
大人になり
子供になり
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カフェ

2020-10-15 23:48:43 | バラ色の獣の詩
女は一人考えた
一人の余韻さえ楽しめないで
ドライブするのも億劫なほど
頬杖ついて考えた
お腹がなるまで考えた

女は恋に芽生えていた
芽生えたというより摑まえられた
摑まえられたというより殴られた
殴られたというより落とされた
落とされた底に花びらの泡
吸い寄せられる甘すぎる蜜の接吻
鳥肌のたつ官能の眩暈

女は一人考えていた
気の遠くなるほどの一人の余韻を
愛の孤独に耐えられるのかを
愛という晴れやかさと
孤独という雨音と

女は知らずうちに泪を零した
同調する雨音と泪の雫は
ベッドの温か味を遠ざけて
泪は季節の手触りと重なり合う

女はそこで想いを綴る
雨の匂いのする空間で
季節の天気を綴っていく
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夜光虫

2020-10-15 23:46:01 | バラ色の獣の詩
重く背中をゆさぶっている
無様に彩る看板等の灯り
身にまとうのは微笑みの渦
心は鎧で埋めていく
重すぎることなく
口元と泪で耐えている
振り切っていく情熱と戦慄
演じきる夜と朝
偽りは悲しみで暴かれていく
安らかな睡眠
よりかかりたい衝動
求められるものは何も無い

うばわなくっちゃ
欲望でうめなくっちゃ
とらなくっちゃ
心の奥底に横たわる
清潔と孤高とユーモラス

(素顔をみせられるのは )

空には不安と悲しく濡れた頬
潤む唇から発する言葉は地をとぶ
見つめたのは鏡に映った自分
飾られたのか裸体の自分
歩きだすのは左目の闇と
右目の光
飛び立つ鳥は風をまとい
地をゆくのは人の波
人ごみから見つけ出せるのは
輝きかける自分と瞳にうつる反射
求めるのは未来の幸せ
私は金色の夜叉になる
私は金色の夜叉になる
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