「朗読者」
ベルンハルト・シュリンク 著
松永美穂 訳
朗読という行為はむつかしい。
どんな声で読めばいいのだろう。
どんな抑揚をつければいいのだろう。
会話のようにはいかないし、
役を与えるのは大変だ。
15歳のぼくは恋に落ちた。
ハンナという女性に。
36歳の年上でストッキングをはく姿をみた
その時から。
ふたりで過ごしたある時からハンナに朗読をしはじめる。
ハンナは夢中に本の物語のなかの人たちをそれぞれおもう。
それからいっぺんに場面はかわる。
戦争の裁判へと。
ふたりの関係はつかずはなれず、
ハンナ・シュミッツ、ミヒャエル・ベルク、
ふたつの物語が交錯する。