「類」
朝井まかて 著
森鴎外の子、類の生涯を描いた小説。
長女森莉、次女杏奴、そして長男類。
母の志げ。
子の時代から老へと過ぎゆく時の流れの中を、
父の死母の死、子を授かり、
画家を志しパリへ行き、日本は戦争へと突入し、
家は焼け、財産は無くなり、困窮し、
妻と共に生きていく。パッパ森鷗外と家族の思い出を携えながら。
自身の才能に時には感嘆し時に疑問を持ち、
芸術の芽は泡のように膨らんでは萎む。
割れない泡の甘美の花。
生きていくための生活をささやかなる喜びの日常へと、
変わらずにある人の苦悩と、
愛という当たり前にあるものに手を差し伸べている。