「姫君を喰う話」
宇能鴻一郎 著
著者は芥川賞をとった後に官能小説の大家となった人である。
この本の短編集はエロティシズムに満ち溢れている。
いや、まだよんだことのないものも含めてそのような気がしてくる。
著者の眼差しが官能によって生と死を物語らせて、美醜を発露していく。
性もまた人間にとっての重要なもののひとつであること。
生き物にとって必要なことのひとつであること。
賞をとった鯨神もまた、生の輝き、向かい合う死、性の色彩。
巨鯨との死闘によってあらわされる。
姫君を喰う話、鯨神、花魁小桜の足、西洋祈りの女、
ズロース挽歌、リソペディオンの呪い。
人間世界の神話として。