「鳩の撃退法 上下」
佐藤正午 著
とにかく面白かった。
自身と他人。
他人からみた世界と、自身からみた同じ世界は、
微妙に食い違っているものだ。
その世界観を小説だからこその表現として、
とらえている。
主人公は直木賞をとったことのある小説家の津田伸一。
いまはお金もなく小説も書きあぐねている。
女の部屋に転がり込み送迎ドライバーをしている。
そこに大金が手に入ったらと思ったら、それは偽札。
小説を書きながら疾走する。
その小説のなかの出来事と、実際の出来事とを、
交錯させている。
その交錯が自身の津田伸一の世界へとなるのだろう。
時々思う。
ぼくはなにを見て、
なにを欲し、なにを好きで、
なにを楽しみ、生きるのだろうかと。
たしかな記憶のなかで。
今日も雪が降っている。
生きることを見続けているいま。
久しぶりにお酒を飲もう。
言の葉を吐き出しながら肴にして。