彷徨う普代村民

普代村の一村民、
彷徨う村からの貧民の呻き声

いじめの傍観者たち

2023年04月09日 | Weblog

いじめ「重大事態」を報告せず=1年以上、校長ら謝罪―茨城大付属小

時事通信4/7(金)17:22 (文中の太字はブログ投稿者による)

『 茨城大付属小(水戸市)で2021年、いじめにより4年生だった女児の不登校が続く「重大事態」に当たると認定したにもかかわらず、約1年3カ月にわたり文部科学省に報告していなかったことが7日、大学への取材で分かった。女児の保護者に対し、報告済みだと誤った説明もしていたという。大学は第三者委員会を設置して調査開始すると決定。同小校長らが女児と保護者に謝罪した。

 大学側によると、付属小4年生だった女児の保護者から2021年6月、いじめを受けて学校を休んでいる、との相談が同小にあった。同年11月になっても欠席は続き、いじめ防止対策推進法上の「重大事態」だと認定したが、法律で定められた文科省への報告はしていなかった。』


東洋経済いじめの研究者の記事より

和久田 学(わくた・まなぶ)
公益社団法人子どもの発達科学研究所所長・主席研究員
静岡大学教育学部卒業。特別支援学校教諭として20年以上現場で勤め、その後科学的根拠のある支援方法や、発達障害、問題行動に関する研究をするために連合大学院で学び、小児発達学の博士学位を取得。2012年より現職、子どもの問題行動(いじめや不登校・暴力行為)の予防・介入支援に関するプログラム・支援者トレーニング・教材の開発に取り組む。大阪大学大学院招聘教員、日本児童青年精神医学会 教育に関する委員会 委員。著書に『学校を変える いじめの科学』(日本評論社)など

海外に比べ「いじめ」が増える日本、決定的に欠けている「エビデンス」の視点欧米で成功している予防の8割は「傍観者教育」

『文部科学省の「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」

(以下、文科省調査)によると、小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数は61万5351件(前年度51万7163件)

過去最多を記録

いじめを苦にした自殺など重大事態も後を絶たないが、

いじめに対して学校はどう対応すべきか、未然に防ぐことはできるのか。

子どもの発達科学研究所所長の和久田学氏に、科学的根拠に基づく

いじめ予防のアプローチについて話を聞いた。

2023/03/23 東洋経済education × ICT編集部
 

海外に比べ、日本のいじめが減らない理由とは?

子どもの発達科学研究所所長の和久田学氏は、

「とくに重大事態の件数が705件と前回調査から37%増えている点から深刻な状況にあるといえます」

と指摘し、海外の現状についてこう語る。

 

「海外ではいじめの研究が進んでおり、

例えば米国では学校での銃乱射事件の背景にいじめの問題が隠れていることも多いので、

予防策が熱心に研究されてきました。

現在、世界のいじめの研究で主流となっている領域は

『インターネット』『LGBTQ』『職場』で、

実は『学校』に関しては対策がある程度明らかになっています。

実際、われわれの研究所の調査でも、いじめの件数が確実に減っている国は多い。

一方、日本のいじめは増えています」

和久田氏によると、欧米で成功しているいじめ予防プログラムの8割は

「傍観者教育」だという。

 

複数の研究で、いじめには約8割の傍観者がいることがわかっています。

例えば1990年代のカナダの研究では、いじめ事案の85%に傍観者が存在していました

また、そのうち74%は加害者側に、23%は被害者側についていましたが、

実は傍観者の約80%がいじめを嫌だと感じていた

さらに、13%の傍観者がいじめを止めようとしたところ、

57%のいじめが数秒以内に止まったといいます

また、教員がいじめの現場にいたケースは13%と、

いじめを教員が見つけるのは難しいことも明らかになっています

いじめを見つける努力をするよりも、

日頃からいじめに関する正しい知識や行動を教えるほうが、

子どもが傷つく機会をはるかに減らせるということです」

また、いじめは被害者だけでなく加害者や傍観者にも大きな影響があることが、

さまざまな研究結果から明らかになっている。』


いじめは学校だけではない。
「いじめに関する正しい知識や行動を」教えられないまま
大人になっている社会人がはるかに多い。
大人になって学校を出てもその延長が続く。
多勢についていた方が安全で安心するもの。
無勢は村八分。
本人のモラルと知識にゆだねるなんつうのはきれいごと。
それが「傍観者」でもある。
 

 

河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」

 全ての社員が、家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり、苦しめたりして良いわけがないだろう。

 これはこの連載でもたびたび引用している、2012年1月に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」のワーキンググループが提出した、報告書の最後に書かれていた言葉です。

 全くもってその通りだなぁとつくづく思いますし、「私」たちは労働力を提供しているのであって、「人格」を提供しているわけじゃない。なのに、「人を傷つけずにはいられない人」が一向にあとを絶ちません。

 「愛があればパワハラにならない」などと豪語する人はさすがにいなくなりましたし、職場で蹴りを入れたり殴ったりと、暴行まがいの悪行をするふとどき者も消えました。しかし一方で、精神的な攻撃は続いている。いや、むしろコロナ禍で増えたのでないか? そんなやるせない気持ちになることもしばしばあります。

 実際、私のインタビューに協力してくださった人たちの中には、上司の陰湿ないじめに耐えきれず、コロナ禍で転職が厳しい時期に辞めた人や、うつを発症し会社を休職した人もいました。

精神的なパワハラの被害が後を絶たない(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 いったなぜ、こんなにもパワハラはなくならないのか?


 「いやいや、あれをパワハラといったらかわいそうだよ」と加害者を擁護する人もいます。ならば、“あれ”を側で見ていた=傍観者の「あなた」はなぜ、何もしなかったのか?

 加害者の中には、「いっときの気分」で、心の奥底に秘めていた不満をぶちまけてしまった“だけ”の人もいるかもしれません。

しかし、被害者にとっては「永遠の心の傷」です。

ちょっとした加害者のしぐさ、視線、言葉の語尾にも心と体が敏感に反応する。

いじめられた経験が一回もない人には分からないかもしれないけど、

加害者が視界に入るだけでも心は疲弊します。

 これまで報道された「パワハラ事件」でも、

他の社員がいる中で繰り返されていたケースがたびたび報告されていますし、

うつで休職して復帰した新たな部署で、再びパワハラ上司と一緒、

しかも席は斜め向かいといった、信じられないことも起きていました。

 もし、傍観者がもっと「自分ごと」として関わっていたら、

最悪の事態を避けることができたのではないか? そう思えてなりません。

 そこで今回は、「傍観者問題」から、「私」にできることを考えてみたいと思います。

 

「自分が悪いのか?」 42歳男性のケース

 僕、前の職場でパワハラに遭っていたんです。でも、渦中にいる時って、そうは思えないんです。変な例えかもしれませんが、ドメスティック・バイオレンスを受ける人の気持ちが分かるような気がしました。

 これは以前、インタビューした男性がこぼした一言です。

 男性は某企業に勤める42歳。「自分のキャリアをひたすら語ってもらう」という趣旨の私のインタビューで、自身のパワハラ経験を話してくれたのです。 

42歳男性のケース(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 僕は若い時から生意気で、相手が上司だろうと何だろうと意見を言ってきました。上は使いづらかったと思います。でも、入社して最初の上司が、社内の改革派と呼ばれている人でして。その人がサポートしてくれたおかげで、いろいろとやらせてもらいました。

 ところがその上司が異動し、新しい上司の元で働くことになって、全てが変わりました。何を言っても否定され、みんなの前で怒鳴られる。部屋に1人呼ばれてチクチクと言われることもありました。

 そうやってずっとダメ出しばっかりされると、だんだんと自分が悪いのではないか、と思うようになってしまったんです。

 それで、とにかく上司に認めてもらおうとするようになった。よくドメスティック・バイオレンスを受けている人が、悪いのは自分だと言って相手をかばうと聞きますけど、僕もずっとそんなふうに自分を責めていたように思います。

 でも、周りはパワハラに気が付いていたはずなんです。コテンパンにみんなの前でやられることはしょっちゅうありましたから。それである日、僕がいつものように上司に怒鳴られて、その時はもう、自分でもどうしていいのか分からず、立ち尽くすことしかできませんでした。

 そうしたら、結構仲良くさせていただいていた先輩から、「まぁ、お互いうまくやろう」と言われてしまった。先輩は励ましたつもりだったのかもしれません。でも、ああ、やっぱり自分がダメなんだと、自分が嫌になりました。

 今振り返ると、僕はあの時はすでにうつの一歩手前だった。それから数日後、朝、どうしても起きられなくて会社を休みました。家でずっと寝ていたんです。

 そしたら、たまたま大学の同級生から電話があって、多分僕の様子が変だって、気付いたんでしょうね。彼は同級生たちの近況をいろいろと話してくれた。僕のリアクションが薄いのに、ひたすら話つづけました。あいつがどうしてるだの、〇〇さんが結婚したらしいとか。

 で、その時に上司からパワハラを受けて自殺未遂を起こした同級生の話を聞いて。急に目の前が開けた。ああ、僕と同じ目にあってるじゃないか、って。悪いのは僕じゃなかった。あれはパワハラなんだって。

 そう気づいたら、ずっと自分にのしかかっていた重しが取れて、会社をやめようって決心しました。

 僕は運が良かったんだと思います。同級生との電話に救われたんですから。もし、それがなかったらって考えると、ちょっと怖いですね。

 さて、いかがでしょうか。

 

 この男性のように、実際にはパワハラなのに、「自分が悪いのではないか」と自分を責める人たちは少なくありません。人間の「他者に認められたい」という承認欲求の隙間に、パワハラ上司が入り込んでいくのです。

 

傍観者が加速させる、日本のいじめ構造

 件の男性のケースでは、それに拍車をかけたのが「まぁ、お互いうまくやろう」という先輩の一言でした。

 お互いうまくやろう──。先輩は一体、どういう意味でこの一言をかけたのでしょうか?

 「おまえも大変そうだけど、オレたちも大変なんだよ」と、自分たちも同じようにパワハラを受けていると言いたかったのでしょうか?

 あるいは、「おまえのやり方にも問題があるから、もう少しちゃんとやれよ」と、暗に彼にも問題がある、と言いたかったのでしょうか?

 真相は分かりません。しかし、一つだけ確かなのは、“傍観者“である先輩も「パワハラに結果的に手を貸した」という、歴然たる事実です。

 そして、傍観者がパワハラを加速させる構造は、日本特有のものだと推察できる分析結果があります。

傍観者がパワハラを加速させる(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 「子どもの世界は大人世界の縮図」と言われますが、1980年ごろから日本も含めて世界の国々で、「子どものいじめ」に関する研究が蓄積されています。その中で、日本には欧米とは異なる独特の「いじめの構造」があることが指摘されているのです。

 欧米のいじめでは、「強い者が弱い者を攻撃する二層構造」が多いのに対し、

日本では「いじめる人、いじめられる人、はやし立てる人、無関心な傍観者」という

4種類の人で構成される「四層構造」がほとんど。

四層構造では強者からの攻撃に加え、観衆や傍観者からの無視や仲間はずれといった、

集団内の人間関係からの除外を図るいじめが多発します。

いわば「集団による個の排除」です。

 その結果、被害者は孤立し、

「自分が悪いのでは?」と自分を責める傾向が強まることが分かりました。

パワハラの構造と似た「子どものいじめ」(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 もちろんこれは、「子どものいじめ」研究の中で確認されたものです。

 しかし、大人社会の「村八分」などは、四層構造の典型的なケースですし、四層構造における

「はやし立てる人」には、件の先輩のように「まぁ、お互いうまくやろう」と

パワハラを批判しない人たちも含まれます。

 

 さらに厄介なのは、四層構造の「無関心な傍観者」の多くが、

自分がいじめに加担しているという意識がほぼないという、困ったリアルです。

 

パワハラ防止策が「無意味」になる理由

 「さわらぬ神にたたりなし」という言葉があるように、

いじめを目撃しても「自分には関係ない」と放置したり、

遠くから乾いた笑いを浮かべながら見守ったり。あるいは、

「倫理委員会に報告したら、報復措置をとられるかもしれない」と考えたり。

 

 そんな見て見ぬふりをする同僚たちの行動が、

いじめられている人をさらに追い詰める。

誰にも言えなくなる。逃げる気力ない。

そして、傍観者は傍観者にさらに徹していくのです。

 

パワハラ防止法が中小企業にも適用されて半年がたち、

相談窓口を設置したり、社内コンプライアンスを徹底する企業も増えてきました。

 しかし、どんな制度も仕組みも、「その場」にいる人たちが、どう行動するか?

 で、無意味な制度に成り下がります。

 とりわけ今のようにギスギスとした社会では、

誰もがパワハラの加害者になるリスクも、被害者になるリスクもあります。

そのリスクを下げるためにも、「自分ははやし立てる人になっていないか?」

「私は傍観者になっていないか?」と自問することを、忘れないでほしいです。

 

 だって、誰もが、家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、

尊敬されるべきお父さんであり、お母さんなのですから。

河合薫氏のプロフィール:

photo

 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿