残虐非道の米トランプ政権 (その2)
―――利潤追求と市場拡大のために医療破壊を画策する米トランプ
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が全世界で猛威を振るう中、米トランプ政権は、自らの意に添わぬ国々への経済制裁・封鎖を強化し、戦争挑発さえ行っている。それはその国の人々の生活を極度の困難に陥れ、深刻な医療破壊をもたらしている。しかも、ほとんど知られていないが、実は米国による制裁・封鎖は、米医療産業複合体の中心である製薬独占企業(ビッグ・ファーマ)の利潤追求と世界市場拡大に結びついている。
キューバ、ベネズエラ、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、シリア、ジンバブエなど、米国による制裁・封鎖の対象は、医療の国有化と無償化をおこなった諸国に集中している。この国有・国営医療を叩き潰せば、ごっそりとその国々の医療体制をビッグ・ファーマの支配下に置くことができ、巨額の企業利潤が手に入るからだ。つまり、これらの国々の医療破壊は、制裁・封鎖の単なる副産物ではなく、制裁の主要な狙い、目的のひとつなのである。
パンデミックという全人類的災禍をも利権のために利用する、米政権の残虐非道には言葉を失う。
ベネズエラでは、故チャベス大統領が率いたボリバル革命とこれを引き継ぐマドゥーロ政権下で、広範な予防接種プログラムと無料の医療が利用できるようになった。ベネズエラの医療はラ米・カリブで最も先進的なレベルに達した。しかし、米国が制裁・封鎖を課した後、ベネズエラの医療制度はほとんど崩壊に近くなった。医薬品の86%が輸入されていたためである。手術用品が68%、薬が70%不足している。大規模な病院には、必要な備品のわずか7%しかないところまできている。2019年3月に、ウォール・ストリート・ジャーナルでさえ次のように報告した。「ベネズエラの健康システムはかつてラテンアメリカで最高のものだったが、その崩壊により、乳児および妊産婦の死亡率が急増し、ほとんど根絶されたと考えられていた希少疾患(黄熱病、デング熱、マラリア、結核など)が再発した」と。「経済政策研究センター(CEPR)」の報告によれば、制裁は、主に医療へのアクセスを奪うことにより、ベネズエラでここ2年間に4万人以上の死亡の原因となっている。
イランでは、1979年のイラン革命で石油とガス資源を国有化して以来、政府は基本的な医療の拡大に注力してきた。1万7千を超える「ヘルス・ハウス」の広大なネットワークがある。これは、予防接種、出産前後のケア、緊急ケアなどのニーズに対応した近隣ヘルス・クリニックである。それによって、イランは、戦争で荒廃した諸国・地域にとっての「医療ツーリズム」(居住国とは異なる国や地域を訪ねて医療サービスを受けること)の重要な国になった。2016年には10万人以上を引きつけた。しかし、その後の制裁・封鎖の強化とその結果生じたハイパーインフレは、数十年の進歩を台無しにした。
イラク、リビア、シリアでの米国による戦争は、広範な破壊を引き起こした。戦争前は、これら3か国は中東および北アフリカで最も近代的な国家であり、政治的には様々な問題があるにしても、生活水準、無料でアクセス可能な医療などで優れた状況にあった。とりわけシリアには、村、地区、州の3つのレベルで医療の高度なネットワークがあり、多くの訓練を受けた医師と医療関係者がいた。米国はシリアでも国家医療を標的破壊している。医療従事者と医療施設の意図的な標的化は、訓練を受けた医療スタッフの多くの出国をもたらした。
これらはほんの一例に過ぎない。米国による制裁・封鎖は残酷な「集団的懲罰」であり、国際法違反の一方的・強権的なものである。1949年のジュネーブ条約では「人民全体にダメージを与える政策は戦争犯罪」と規定されている。また、1947年の国連国際法委員会で定義されている「人道に対する犯罪」に当たる。米制裁・封鎖は、国際法に違反する非人道的なものとして即刻解除すべきである。(H/N)
(つづく)