改憲の危険シリーズ 緊急事態条項(3)
一切の反政府行動の規制・弾圧とメディア・言論統制
彼らが想定する3つの「緊急事態」なるものは実は別々にあるのではありません。安倍政権自身がそう考えているはずです。安倍政権は高齢者や若者が貧困にあえぐ中、それを放置し戦争体制に血道を上げています。戦争する国は生活を破壊する国、国民の命と生活を切り捨てる国です。戦費調達は生活関連予算を切り詰め人民を窮乏化させます。
※「戦争法で軍事費膨張! どうなる生活!?」(リブ・イン・ピース☆9+25)
http://www.liveinpeace925.com/action/atcafe160131.htm
このような政策と社会のあり方は人々の政権への反発を強め反対の世論や反政府運動を引き起こします。海外での侵略戦争加担は「テロ」の危険を高め、社会秩序の混乱を招きます。大規模な自然災害が発生すれば、政府の関心は人命や被災者・避難者の生活ではなく支配秩序の維持です。東日本大震災と福島原発事故に対する政府の対応がそれを物語っています。「その他の法律で定める緊急事態」も含め、「緊急事態」なるもののあいまいさ、発動の敷居の低さも大きな特徴です。社会全体が矛盾を抱え、人々が生きづらくなる中、どこから不満や反発が政権に向かうか分かりません。政府は不測の事態に備え、それを押さえ込むためのフリーハンドを得ようとしているのです。
デモも内乱?政府に都合の悪い動きはすべて封じ込め
「内乱等による社会秩序の混乱」はきわめて曖昧です。国会や官邸包囲の抗議行動が「緊急事態」と発令されかねません。昨年夏、十数万人が集まった国会前行動での規制線決壊は彼らにとっては「秩序の混乱」でしょう。沖縄基地反対闘争や戦争法反対運動、東日本大震災における政府の無責任対応への抗議等々大小様々な反政府行動が日本国内で展開されています。中でも沖縄闘争は熾烈を極めています。日米合意から20年近くにもわたって新基地建設を阻止してきました。政府は工事着工を阻止しようとするカヌーに対して暴力的に襲いかかり、代執行や県を相手の裁判などおよそ考えられない禁じ手を使って強引に基地建設に進もうとしています。これら一切の辛気くさい手続きを経ず、国策に抵抗する知事や運動を政府自らが「緊急事態」を作り出すことによって一気に解決しようという衝動が安倍政権に出てきても不思議ではありません。
自然災害でも、政府の強権発動は、生命と安全を脅かす危険
自然災害でも政府の強権発動はきわめて危険です。2011年3月の東日本大震災と福島原発事故では、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言が発出されています。ところがそのもとで、「ただちに影響はありません」といった事故実態の隠蔽や、避難指示の遅れと屋内待避の強要、障害者や高齢者の置き去り、避けられた被爆等々が起こりました。そして現在避難地域が年間20ミリシーベルトもの高レベルの基準をもとに解除され、帰還が半ば強要される事態になっています。問題は憲法に「緊急事態条項」がなかったことではありません。住民の命と健康をないがしろにした無責任とご都合主義の対策が取られたことです。このような政府が「緊急事態条項」を手にしたらどうなるでしょうか。被災者の移動・避難・居住等の権利の制限、メディアの徹底統制、政府に都合の悪い情報の隠蔽、反対運動の弾圧等が「社会秩序維持」の名のもと公然と行われることになるでしょう。丸川環境相は「1ミリシーベルトは科学的根拠がない」と言ってのちに発言を撤回させられましたが、この事件は象徴的です。このようなデマが政府の公式見解として垂れ流され、被ばくを危惧する報道は「不安を煽る」と規制される危険が出てきます。
岩手、仙台、福島、新潟、兵庫の被災地の各弁護士会は、災害対策を口実とした「緊急事態条項」改憲に反対声明を出しました。関東大震災では、政府が戒厳を布告し、朝鮮人や共産主義者、社会主義者が政府や警察権力と結びついた流言飛語によって虐殺・弾圧されました。けっして過去のことではありません。
(ハンマー)