改憲の危険シリーズ 緊急事態条項(2)
戦争への国民総動員
安倍政権が「緊急事態条項」を持ち出す最大の理由は、「戦争法」制定後の戦争する国内体制を一気に作り上げるということにあるのではないでしょうか。国会論戦で、「緊急事態条項」の先行改憲が議論されるなかで、9条改憲の議論が同時に進行したことは象徴的です。
ではなぜ、戦争法を作った上でもなお「緊急事態条項」や9条改憲が必要なのでしょう。たしかに有事=戦時における総理大臣への巨大な権限付与はすでに一連の「戦争法」に規定されていますが、戦争は自衛隊を派遣するだけでは出来ません。既存の法律では国や地方公共団体の指示=命令に対して、国民の服従義務がありません。日本国憲法の遵守と14条、19条、21条等国民の諸権利の不可侵が前提となります。現行の憲法に従う限りこの壁を乗り越えることが出来ません。だからこそ安倍首相は、憲法も国会も一切無視できる非常大権を「緊急事態条項」の改憲によって手に入れようとしているのです。
緊急事態条項は、軍による非常事態統制=戒厳令と同じ
それは、軍司令官に憲法・法律を超越する一切の権限を与える戒厳令に等しく、違いは首相が代行するという点にあるに過ぎません。しかし自衛隊の最高指揮監督権を持っているのは安倍首相です。そして首相は自衛隊を「わが軍」と呼んではばかりません。従って名実ともに戒厳令といってもいい過ぎではないのです。
自民党改憲草案で人権制約の例ととして挙げられているのはいずれも重要な基本的人権です。
--第14条、人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別の禁止。
--第18条、奴隷的拘束や苦役の禁止。
--第19条、思想・良心の自由。
--第21条、集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由、および検閲の禁止。
「緊急事態」のもとでは、基本的人権の核心とも言えるこれら憲法の基本条項が停止されてしまいます。在日韓国・朝鮮人、在日中国人、イスラム系の人々などマイノリティは差別と弾圧の対象です。徴兵制を認める法律を閣議決定すれば否応なく自衛隊に入れられ戦地に送られます。戦争反対、命の尊厳を守るなどの思想自体が許されません。そして反戦を訴える集会やコンサート、演説などの言論活動、新聞やビラ・リーフレットの配布などを禁じることも可能となってしまいます。
(ハンマー)