空飛ぶ自由人・2

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映画『僕の人生に追いつくとき』

2023年05月24日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

2010年のイタリア。
ダンテは保険会社の敏腕社員。
いつも時間が足りないと嘆き、遅刻ばかりしている。
偶然の出会いで、アリスと恋仲になり、
一緒に暮らすようになる。
ただ、仕事に忙殺されていて、
良い家庭人とはいえない。

40歳の誕生日に異変が起こる。
寝て、起きると、1年が経っていて
アリスは妊娠している。
その夜、寝て起きると、
また1年が経ち、42歳の誕生日。
アリスの側に赤子がいる。
ダンテは眠らないようにするが、
顔を洗うと、
娘は1歳になっている。


とうやら、タイムトラベルに法則はないようで、
あっと気づくと1年がたっていて、次の誕生日が来ている。
ダンテは社長になっており、
アリスとは不仲になり、別れが来ている。
しかし、どうして不仲になったのか分からないダンテは
アリスへの愛は継続しており、戸惑うばかり。
やがて、秘書と不倫したり、
認知症の父が自殺を企てたり、
親友がガンに冒されたり、治ったり、
犬が一瞬で成長したりと、
次々とタイムトラベルが起こり・・・

という、タイムスリップものの変種。
1年跳んだことは、
ダンテの服装や髪形、ヒゲの有無などで観客は判断する。
ダンテの人生は継続しており、
仕事もちゃんとしているらしい。
飛ぶのは意識だけで、
過ぎた1年間の記憶はない。
だとしたら、1年の間に、次の飛翔時の準備をすべきだと思うが、
まあ、そういう野暮は言いっこなし。

医師の診断を受け、
「最近、時間が早く過ぎていて」
と言うと、医師は
「私もそうです。40歳以降、時間の過ぎるのが早く感じられる。
まあ、家庭でのんびりしてください」
と言われる。

実は、ここに解決のヒントがあるわけで、
日々の忙しさに自己を埋没させ、
無意識に過ごし、周囲に無関心の生き方そのものを
寓話的に描いている。
毎日同じ生活の繰り返し。
刺激に乏しく、生きるのにも飽き、何も覚えていない。
それに気づいた時、ダンテは
限られた時間の中で、日々を大切に生きる気持ちを
徐々に取り戻してゆく。
そして、思い切って、96日の休暇を取り、
仕事から離れて、家庭に帰ることを決断すると・・・

タイムトリップの原因は最後まであかされず、
実は、夢だったという終わりでもなく、
元の時間軸に戻るわけでもなく、終了する。

監督は、アレッサンドロ・アロナディーオ
ダンテを演ずるエドアルド・レオがうまい。
タイムスリップをくり返して戸惑い、疲れていく姿と、
年をとって枯れていく感じがうまく表現されている。

Netflix で配信中。