[映画紹介]
今より50年以上前の1970年代、
子供が欲しくても出来ずに悩む夫婦に
希望を与える体外受精の技術を確立した
医学チームの話。
実話をベースにしたドラマ。
当時若き看護師であり胚培養士であったジーン・パーディは、
生物科学者ロバート・エドワーズや
産婦人科外科医パトリック・ステプトーと力を合わせ、
体外受精の道を切り開き不妊治療を大きく前進させた。
人工授精は、
人為的に採取した雄の精液を
雌の生殖器内に注入し受胎を試みることを言う。
種馬や和牛のタネ付けなど、
家畜・水産動物の繁殖・品種改良や、
夫の精子や精液の量に問題がある場合や
射精や性交に障害がある場合、
不妊症対策としてヒトに対しても用いられる。
ヒトの人工授精の例は、
早くも1799年に報告がある。
体外受精は、それとは違い、
排卵誘発剤や外科的手法などによって取得した卵子を、
体外で精子と接触させて人為的に受精を行ったのち、
培養した胚(受精卵)を子宮内などに戻して妊娠を図ることを言う。
俗語では、「試験管ベビー」と呼ぶことがあるが、
実際には、体外受精はもっと浅い容器であるペトリ皿を用いている。
4細胞期または8細胞期の受精卵の内、
発生が順調で形態の良い受精卵だけが膣から子宮内へ注入される。
今では普通に行われる赴任手術だが、
当時は、宗教的価値観から考えると、
“生き物を作り出す" ように思われ、
悪魔的な、神に背く行為と見做されて
周囲からの理解を得られず研究は難航した。
ジーンは教会から出席を拒絶され、
母親からは勘当される。
「罪人」と書かれた人形が送られて来、
研究所の壁には、「フランケンシュタインの館」と書かれ、
研究に協力する妊娠希望者の名前は秘匿される。
医学者からも、
採取した卵子の劣化による
染色体異常により、
障害を持った子供の誕生が懸念され、
再三のテレビ出演では、恥をかかされる。
しかし、ジーンらの意識は、
妊娠したくても妊娠できない人々の役に立ちたいとの希望であり、
科学の進歩がその手助けになれば、
との思いだった。
ジーン自身が重度の子宮内膜症で
子供を持てない体ということも中盤明かされる。
ようやく着床したのも束の間、
子宮外妊娠で失敗、
試薬の再検討をしてみたり、
ホルモン注射による排卵促進ではなく、
自然排卵の採用など、
いくつかの課題を乗り越える。
その途中で、ジーンの戦線からの離脱や
エドワーズの議員出馬などがあり、
再結成したチームのもと、
1978年、体外受精で初めての赤子
ルイーズ・ジョイ・ブラウンが誕生する。
10年間続けられた絶え間ない努力が報われたのだ。
この場面は感動的だ。
ミドルネームの“JOY”(喜び)は、
請われてた、エドワーズ博士により名付けられた。
以来、体外受精により1200万人もの人が誕生した。
今でこそ体外受精は不妊治療として当たり前になっているが、
半世紀前に大変な苦労があったと分かる。
この3人の科学者たちのおかげで
世界中で沢山の命が誕生した。
エドワーズはこの業績により2010年(随分時間がかかった)、
ノーベル生理学・医学賞を受賞した。
ルイーズが39歳でガンで亡くなってから30年後、
ようやく彼女の功績が讃えられて、
「彼女なしでは何も成し遂げられなかった」との
エドワーズ博士の強い希望で、
プレートに名前が刻まれることになった。
大きな困難を乗り越え、
多くの人びとの夢を実現させた
3人が見せる不屈の精神力と、科学の驚くべき力。
史実を元にした骨太の見応えある作品。
主人公の希望や絶望が大変ていねいにい描かれている。
Netflix で11月22日から配信。
監督はベン・テイラー、
ルイーズにトーマシン・マッケンジー
エドワードにジェームズ・ノートン
パトリックにビル・ナイ。
俳優も抜群にいい。
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