空飛ぶ自由人・2

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タナカヒロカズさん集まれ

2022年10月18日 23時00分00秒 | 様々な話題

10月13日、
面白い広告が新聞に掲載された。


「尋ね人」として、
「タナカヒロカズを探しています」とのこと。

10月29日、
渋谷で同姓同名の「タナカヒロカズ」さんが集まるイベントを開催し、
ギネス世界記録に挑戦するというのだ。
主催者は一般社団法人の「田中宏和の会」。
代表を務めるのは、東京都の会社員、田中宏和さん(53)。
田中さんが同姓同名集めを始めたのは平成6年。
同年のプロ野球ドラフト会議で
田中宏和さんが近鉄バファローズから1位指名を受けた時、
「名前が同じだけで他人の人生を疑似体験できる」
と感激したのがきっかけだという。
当初は人の紹介が中心だったが、
インターネットによって、
同姓同名を集める機会が増えた。

2003年に自分ではない田中宏和さんと初めて対面。
その後、多くの田中宏和さんと交流するとともに、
09年には11人の田中宏和さんが歌う「田中宏和のうた」
(作曲・田中宏和、作詞・田中宏和。二人は別人)も作った。
2014年には「田中宏和の会」を設立。

平成23年10月には、
67人の田中宏和さんが東京都内に集合してギネス記録を申請したが、
米国のカリスマ主婦、マーサ・スチュワートさんが、
テレビ番組の収録で164人のマーサ・スチュワートさんを集めていたため、
記録は認められなかった。


平成29年にも再挑戦したが、
集まったのは87人で、記録達成は持ちこされた。

しかし、今年、
これまで同じ漢字の「田中宏和」に限っていた同姓同名の対象を、
読みが「タナカヒロカズ」であれば漢字は問わないと改めた。
これは、英ギネスワールドレコーズのルールがそうなっているからだ。
確かに、漢字圏でない欧米では、
読みさえ合っていれば、
同姓同名ということになる。
漢字圏である日本人としては、
やはり同姓同名とは、
漢字が同じ人だと思うが、
ギネスのルールなら仕方ない。
(ギネス世界記録の「同姓同名の最大の集まり」のルールでは、
団体の会員数だけでは認められず
「1 カ所に集まり3分以上いること」
などが求められる。
広告には186人のタナカヒロカズさんが掲載されており、
名簿上は満たしているが、
一堂に会することが要件となっている)

で、今回は田中浩和さんも田中弘和さんも田中弘一さんも田中寛和さんもOKで、
再度ギネス世界記録に挑戦。
165人以上集まれば、達成だ。
会場の安全性と予算の関係で、
上限は184人としている。

会場はcocoti SHIBYA(渋谷ココチ)ビル。
8階のヒューマントラストシネマ渋谷で
ギネス世界記録挑戦イベントをする。
同劇場では、3つあるスクリーンのうち、
1が200席、2が183席、3が87席だから、
1か2でやるのだろう。
その後、懇親会。

当日はパスポートや戸籍謄本、免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど、
証明できるものを持参
旧姓もOKなので、その場合は、
旧姓を証明できるID(たとえば、旧姓のパスポートなど)を持参。

遠隔地からの参加者には、交通費補助も。
(北海道・九州・沖縄は3万円、
 中国・四国は2万円、
 東北、近畿、北陸、中部、信越は1万円。)

ギネス世界記録公式参加認定証は5000円でもらえる。

一般社団法人田中宏和の会の名簿を見てみたいものだ。
全員「田中宏和」。
壮観だろう。
みんな同じ名前なので、ニックネームで呼んでいるらしい。

高齢者も多いので、
年々減るのか、増えるのか。
最高齢会員は88歳だという。
「生きているうちに世界一になりたい」と言っているという。

ところで、「名字由来net」では、
「田中宏和同姓同名は全国でおよそ30人」と出ている。
これは、修正が必要か。

なお、同サイトでの
同姓同名ランキングは、↓のとおり。

1位  田中 実    およそ5,300人
2位  佐藤 清    およそ4,900人
3位  佐藤 正    およそ4,800人
4位  佐藤 進    およそ4,700人
5位  高橋 清    およそ4,600人

6位  鈴木 実    およそ4,600人
7位  佐藤 博    およそ4,400人
8位  田中 稔    およそ4,400人
9位  鈴木 清    およそ4,300人
10位  佐藤 勇   およそ4,200人

11位  鈴木 博   およそ4,200人
12位  佐藤 実   およそ4,100人
13位  小林 茂   およそ4,100人
14位  鈴木 勇   およそ4,000人
15位  佐藤 茂   およそ3,800人

16位  鈴木 茂   およそ3,700人
17位  佐藤 誠   およそ3,700人
18位  佐藤 弘   およそ3,600人
19位  高橋 勇   およそ3,600人
20位  佐藤 隆   およそ3,600人

なぜか男性ばかり。
名前が一文字ばかり。

ここまで書いて、
古い記憶が蘇る。
もしかして、あいつも・・・?

と、高校時代のクラス名簿を引っ張りだしたら、
いました、田中宏和。


このイベントに参加するのだろうか。

「人はちょっとした同じで仲良くなれる。
タナカヒロカズ運動は、
社会実験型の平和活動です」

 


小説『音楽が鳴りやんだら』

2022年10月16日 23時00分00秒 | 書籍関係

 [書籍紹介] 

主人公の福田葵は、作詞・作曲の才能に恵まれ、
友人とバンドを組んでいた。
バンドの名前は、「Thursday Night Music Club 」、通称サーズデイ。
メンバーはボーカルとギターの葵、
ギターの智樹、ベースの啓介、ドラムの伸也。
昔からの幼なじみだ。

小さなライブハウスで少ない観客を相手にした音楽活動だったが、
大手レコード会社の目に留まり、契約を勧められる。
しかし、プロデューサー・中田の条件は、
ベーシストを入れ替えることだった。
友情は捨てられない、と葵は拒絶するが、
中田は殺し文句を口にする。
「君には音楽の才がある。
代償を恐れて自分で才能の芽を潰すことは、
音楽への裏切りにもならないかね」
「私は君に、今世紀を代表する
ロックスターになって欲しいと思っている」

ベースの啓介に事情を話すと、
啓介は外れることを受け入れる。
「武道館でライブをやる時は、特等席を用意してくれ」
との言葉を残して。
啓介は葵の才能を知っていたのだ。

こうして、新ベーシスト田村朱音を加えた新バンドはスタートする。
じきにサーズデイは人気バンドとなり、
ツァーを続ける中、ドラムの伸也がメンバーから外れる。
演奏の問題だった。
葵の話し合いで、伸也は、こう言う。
「おまえには感謝しているんだ。
三千人の前で、歓声を浴びながらドラムを叩ける人間なんて、
普通はいないよ。
おまえが俺を、プレハブ小屋からあの舞台に引き上げてくれたんだ。
短い間だけど、夢が叶った気分だったよ。
夢が叶う人間なんて、普通はいないよ。
だから俺から見ると、おまえは本当にすごいよ。
才能があって、夢を叶えて、夢の舞台で活躍できるんだ」

そして、ギターの智樹は、ステージでの照明器具落下で重体になった。

こうして、葵を残して、サーズデイのオリジナルメンバーは総入れ換えとなる。
ベースの田村朱音(あかね)は高校生の天才ベーシスト。
ドラムの九龍(クーロン)こと渡辺真は、
父親が母親を惨殺する場面の目撃者で、
施設にいた時、天職の教師に見いだされて、ドラムに至った人物。
そして、ギターの山口昴(すばる)は、
右手が先天的に4本しかないのに、
常人を越えた演奏をする。
それは、最初からの中田の計画のようだった。
結局素人バンドで中田が本当に欲しかったのは、葵一人だったのだ。

新生サーズデイは瞬く間にファンを獲得し、
順調にスケールを広げていく。
海外に出かけて録音をし、
最終武道館へ向けてのツァーを計画する。
しかし、暴力事件を起こし、
更に悲惨な出来事が襲う・・・

中田の過去が明らかになるところは、なかなかスリリング。
全体的にロック音楽がどのように創造されるかの部分は、
理解不能ながら興味津々だった。
頭の中でメロディーが生れ、言葉が紡がれる。
まさに無から有を生み出す作業で、
神が与えたギフトとしか思えない。

著者の高橋弘希は、
大学卒業後、予備校講師として勤務しながら
ロックバンドで、作詞、作曲、ボーカル、ピアノなどを担当した人物。
やはり音楽をやる人だ。
そうでなければ書けないだろう。
随所に才能あふれる書き手だと分かる筆致。
芥川賞作家だから当然か。

小説でありながら、
芳醇な音楽体験が出来る小説だった。

 


映画『ハリガン氏の電話』

2022年10月15日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

2003年。
メイン州の小さな町ハーロウで暮らすクレイグは、
大金持ちの老人、ジョン・ハリガンのために
本を朗読する仕事を請け負う。
視力が低下し、代わりに本を読む人物を探していたハリガン氏は、
教会の礼拝で聖書を朗読したクレイグに目をつけたのだ。
クレイグにとって、週3回、時給5ドルの仕事は魅力的だった。

ハリガン氏は資産家だが、
冷酷で利己的な人物として世間から嫌われていた。
未婚で子供も無く、親族とも連絡を絶った孤独な人物だった。

読んだ本は「チャタレイ夫人の恋人」や「闇の奥」、
「彼らは廃馬を撃つ」など、
子供には難しい内容だったが、
長ずるに従い、クレイグは作品の内容を理解できるようになる。

5年の歳月が経ち、(2008年)
クレイグは成長し、高校生になっていた。
高校では、スマホを介在してグループが出来ており、
クレイグはその一つに参加する。
と同時に、問題児のケニーという男からのいじめが始まる。


そのことをハリガン氏に話すと、
「容赦しない」、それが老人の答えだった。
敵に出会ったら急いで片付けろ、
罪悪感を感じる必要は無い、とも言う。

また、他に興味のある事は沢山あるのに、
なぜ週3回も通ってくれるのかと訊いたハリガン氏に、
クレイグは楽しいから、本の臭いも語り合う事も、音読するのも好きだ、
自分の意志で通っていると答える。
老人と青年の間には、いつのまにか敬愛と友情が生まれていた。
            
ハリガン氏は記念日に宝くじを送る習慣があり、
クレイグに送られた宝くじが3千ドルの大当たりとなる。
クレイグはスマートフォンを買って、
ハリガン氏に渡し、使い方を教え、
老人がいつも気にする株式市場もリアルタイムで見れる、
新聞や雑誌の記事もより早く読める、と教えると
ハリガン氏はその有用性を素直に認めて活用するようになる。

いつものようにハリガン邸を訪れたクレイグは、
椅子に腰かけ亡くなっている老人を目にする。
そして誤ってハリガン氏のスマホを持ってきてしまう。

教会で行われたつつましいハリガン氏の葬儀
最後の別れををする人々の列の最後尾に並んだクレイグは、
誰もいないのを確認すると、
ハリガン氏のスーツのポケットに彼のスマホを忍び込ませる

葬儀が終わった後、
クレイグはハリガンの会計担当の男から、
彼が2ヶ月前にクレイグに宛てに書いた手紙を渡される。
そこにはハリガン老人がクレイグに、
80万ドルの信託財産を遺したと記してあった。
大学に通い好きな事業を始めるには充分な額だ、とも。

夜が明け目覚めたクレイグは、
ハリガン氏の携帯からメールが送られてきたと気付く。
生きたまま埋葬されてしまった、助けなけりゃ、
というクレイグに、
父親は、看取られずに死んだハリガン氏は検死解剖されており、
生き返る事は有り得ないと告げる。
ハッカーか誰かがしているいたずらだと。

ケニーは校内で大麻を売り退学になるが、
クレイグが告げ口したと勘違いしたケニーが暴力をふるう。
その夜ハリガン氏のスマホに電話をかけ、
クレイグは暴行された事実を語る。

次の日、酔っぱらったケニーが自宅の窓から落ちて首の骨を折って死んだ。

クレイグは今のスマホを手放し、
新しいものに機種変更する。
もうハリガン氏のスマホには連絡が取れなくなった。
しかし、クレイグはスマホを捨てず、
クローゼットの中の箱にしまいこむ。

やがて、大学に進学し、故郷を離れて、
クレイグはボストンの大学で学び始める。(2012年)

そこへ、高校の時、クレイグをケニーから守ってくれた
ハート先生が亡くなった知らせが届く。
婚約者と旅行中の彼女の車に、
ディーン・ウィットモアという男の車が衝突したのだ。

ハート先生の葬儀に参列したクレイグは、
事故の相手のディーンは飲酒運転の上に無免許で、
無傷だったと友人から教えられる。
しかもディーンは罪を問われず、
豪華な矯正施設に送られただけだった。

自宅に戻ると箱の中にしまった古いスマホを取り出したクレイグ。
充電すると、棺の中のハリガン氏に電話をかける。
ハート先生の死の経緯を告げ、
ディーンに死んで欲しいとクレイグは伝えた。

そしてある日、クレイグは
ディーンが死んだことを知る。
ディーンの入所した矯正施設を訪れたクレイグは、
そこの男から死因を聞き出す。
ディーンの死は自殺で、
朝食前にシャンプーと石鹸を飲み込み、
石鹸を喉に詰め窒息死したという。
彼が自殺に使用した石鹸はハート先生が愛用したものだった。

そして・・・

偏屈な老人とピュアな少年が心を通わせる
ハートウォーミングなドラマかと思いきや、
老人が死んでからも少年と繋がったかのようなホラー。
原作は、あのスティーヴン・キングの短編。
いかにもスティーヴン・キングらしさにあふれた内容。
スマートフォンが重要なアイテムになっているのは、
やはりスティーヴン・キングらしい取り入れ方だ。

ラストはあいまいだが、
もしかすると、
二人の死は、
ハリガン氏によるものではなく、
クレイグ自身の怨念の結果かもしれない。

監督・脚本は、ジョン・リー・ハンコック
出演者は、クレイグにジェイデン・マーテル

ハリガン氏にドナルド・サザーランド
サザーランドの存在感が光る。

クレイグが墓中のスマホに電話をかけ、
墓の地面に耳をつけて、
中から呼び出し音が鳴っているのを確認するなど、
めざましい描写もあるが、
総じて単調。
もっとホラー的な演出はいくらでも出来たのではないか。

10月5日からNetflixで配信

 


独裁者の延命

2022年10月14日 23時00分00秒 | 政治関係

中国共産党大会が16日から始まるが、
益々独裁の方向に進んでいる。

というのは、習近平国家主席が3期目の続投をするための
規約改正がされようとしているからだ。


中国共産党は、国家主席は2期10年まで
という決まりを鄧小平が作った。
これは、毛沢東のような独裁者を再び出さないための安全装置を意図したもの。
前国家主席の胡錦濤もこのルールに従って、
2012年の党大会で退陣し、
後任の習近平に政権をバトンタッチした。
その先人の知恵が生んだ良き伝統を
習近平はやすやすと破ろうとしている。

中国共産党は、
もう一つ、指導者は68歳以上は引退するという慣例もあった。
これは世代交代を促進し、長期政権を阻止するためのものだ。
習近平は現在69歳。
当然、身を引くべきなのに、これも破ろうとしている。

その上、「二つの確立」として、
「習氏の党中央・全党の核心としての地位」
「習氏の思想の指導的地位」
の確立を意味するものを
党規約に明記し、
習氏への絶対的忠誠を党内に求める規定がされようとしている。

党規約に盛り込まれている指導思想で
個人の名前に「思想」がついているのは
「建国の父」とされる毛沢東の「毛沢東思想」だけだが、
「習近平思想」が党規約に明記される予定だという。
個人崇拝を党の規約で決めるというのだから、
ただごとではない。

こうして習氏の体制が5年、場合によっては10年続く。
10年後といえば、2032年だ。
その間に世界はどう動くのか。

習は「中国の夢」を語り、
「中華帝国」の再興を目指す人だ。
そのために、「一国二制度」の約束を破って香港を吸収し、
台湾を狙い、場合によっては沖縄まで狙っている。
つまり、21世紀は中国が世界の騒乱の中心になる世紀なのだ。

中国の憲法は、中国共産党の指導による、としている。
つまり、党規約の方が憲法より上だ。
その党規約で個人崇拝を決めるとは。
中国共産党の人々は何とも思わないのか。
中国の人民は行動を起こさないのか。

2020年に実施されたロシアの憲法改正も異常だ。
プーチン大統領の任期の「リセット」がされたからだ。

憲法改正前のプーチン大統領の任期(2期12年)は、
2024年までだった。
ところが、憲法改正によってこれまでの任期をリセット、
つまり無かったことにして、
新たに最長2期12年、
2036年まで大統領職に就けることにしたのだ。

更に、大統領の権限が強化され、
議会が承認した首相を解任する権限や、
大統領経験者には不逮捕特権適用、
大統領経験者は終身上院議員とする、
という滅茶苦茶な改悪がなされた。

異常な憲法改正だが、
国民投票の結果、
約78%の賛成で承認された。
大規模な改正であったにもかかわらず、
コロナ下、国民的議論がなされないまま短期間で成立した。

憲法改正の結果、
2000年の大統領就任から
実に36年間も実質的な権力を持ち続けることになる。
その権限の強化の結果が
今のウクライナ侵略につながったといっても過言ではないだろう。

「権力が長引けば、腐敗につながる」
というのは、歴史的に証明され、教訓としている。
だから、民主的な各国は権力に制限をつけている。
アメリカ合衆国の大統領2期8年はよく知られているし、
守られている。
韓国大統領の1期5年は異論はあるが、
仮にその任期を変更する憲法改正が行われたとしても、
その改正をした時の大統領には適用されない、
という予防策を講じている。

独裁者はその統治期間を長引かせたい、というのは当然だ。
だから、弾圧をする。
独裁国家の人民は悲惨で不自由な生活を強いられる。

ひるがえって、日本を見てみよう。
日本共産党の志位和夫
共産党のトップである委員長として22年の歳月を重ねていることをご存じだろうか。


というより、共産党のトップはそもそも長い。
委員長のポストが設けられた昭和45年以降、
委員長をつとめたのは
宮本顕治、不破哲三、村上弘、志位和夫の4人しかいない。
終戦直後の昭和20年から45年までの間、
トップだった書記長職をつとめた徳田球一、野坂参三を加えても77年間で6人。
うち村上は病気を理由に1年半で退任しているから、
実際は5人がトップだった。

なぜ長期にやれるのか。
選挙で負けても、他の政党のように、
責任を取って辞任することはないからだ。

そもそも、一般党員はトップを選べない
中央委員会なる組織が委員長を選ぶ。
中央委員と准中央委員は党大会で選挙によって選出される。
しかし、中央委員会が候補者を推薦する制度だというから、笑える。
代議員(選挙人)も自由に候補者を自薦も含めて推薦することができるが、
前例は少ない。
つまり、代議員そのものが党中央によって統制されている。
中央委員会総会(年2回以上開催)が最高決議機関だが、
常任幹部会や書記局、中央機関紙編集委員会などが
日常的な指導や事務をつかさどる。
総会から総会のあいだ中央委員会の職務をおこなうのは幹部会で、
幹部会の職務を日常的に遂行するのは常任幹部会。
つまり、中央委員会の日常的任務をになう機関は常任幹部会であり、
幹部会委員長が党首として扱われている。

他の政党が、選挙に負けて責任をとって辞任したり、
党員が参加した党首選で選ばれたりするのは、
権力にとっての弱点だと思っているのだろう。
他の政党とは様相が異なり、
党組織の中での権力闘争によって、
党首となるのだ。
つまり、独裁制
日本共産党も、中国共産党やロシアと体質は同じだ。
根本に共産主義という、
既に滅亡した思想の残滓が残っているとしか言いようがない。

会社のトップもそうだが、
あまりに長期にわたって社長が変わらない会社の先は見えている。
後継者を育てるのが最後の仕事だと言われている。
それを怠ると、「老害」と呼ばれる。
共産党は老害の温床だ。


小説『黛家の兄弟』

2022年10月12日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

著者の砂原浩太郎は、
前作「高瀬庄左衛門御留書」は高く評価されたが、
同じ架空の藩・神山藩を舞台にした第2弾。
ただ、登場人物も時代も異なる。

黛家は、神山藩の筆頭家老の家柄で3千石の大身。
当主の清左衛門のもとに、栄之丞、壮十郎、新三郎の三人の兄弟がいる。
黛家は、次席家老の漆原内記との間に確執がある。
冒頭の「花の堤」の花見の席で、
後に新三郎の妻となる黒沢りく、
新三郎の道場仲間・由利圭蔵を含め、
主な登場人物が全員顔を揃える。
この「花の堤」の章は小説現代に掲載されたが、
あとは書き下ろし。

新三郎は、大目付(監察)の黒沢織部正(おりべのしょう)に見込まれ、婿に入る。
その際、幼なじみの由利圭蔵を召し抱え、身近に置く。
目付の仕事を学ぶ中、
次兄の壮十郎が刃傷沙汰に巻き込まれ、
次席家老の策略で、裁きの場に立たされ、
成り行きで新三郎の口から次兄に対して切腹の沙汰が下される。
壮十郎の罪は、次席家老の跡取りを殺したことで、
正当性は壮十郎の方にあったのだが、
あくまで壮十郎は単純な喧嘩と主張し、
喧嘩両成敗が適用される。
次兄は黛家の繁栄のために自らの命を捧げたのだ。
娘を側室にあげた次席家老の
孫・又次郎を藩主に置こうという策謀に
父が加担したのも、黛家の存続のためであった。
当時は、家の存続が至上命令だったのだ。
新三郎の中には、次兄の命に対する後悔の念が深いところに根ざす。

以上が第1部「少年」で、
この時、新三郎は17歳。
第2部「十三年後」では、30歳になっている。

新三郎は黒沢家の当主を継ぎ、織部正を名乗っている。
兄も黛家を継ぎ、清左衛門を名乗っている。
筆頭家老の地位は一代限りとの条件で漆原内記に奪われている。
そして、新三郎の名は、
実の兄を死に追いやった者として知れ渡っていた。

そんな時、又次郎の世子継承により廃嫡となった
藩主の長男で蟄居生活をしていた右京正就が亡くなる。
その検死のために訪れた織部正は、その死因に不審なものを感ずるが、
漆原の手前、不問に付す。
その結果、織部正は正式に大目付に就任する。
漆原内記の信任が篤くなったのだ。

兄の清左衛門は、治水のために堤の造成をしている最中、
台風の来週の中、水に飲まれる。
又次郎に本藩の姫を輿入れさせる祝いの席の場で、
一気に事態が明らかになり、
綾部正は、漆原内記と対決をする。
様々な隠された真実が明らかになる過程は、
意外に継ぐ意外、
また、これも意外な裏切り者も出て来る。
そして、三兄弟の長い計画が明かされる。

「されば、なにゆえ」
と問う漆原内記に、織部正は、こう答える。

「それはわれらが、黛家の兄弟だからでござる」

小藩での権力争いと、
家=血のつながり。

「未熟は罪だ」

という新三郎の述懐が胸に染みる。
17歳だった若者は、30歳になって成熟し、
政争に翻弄されながらも、勝利する。
この物語は、
一人の人物の成長と成熟の物語である。

物語を彩る女性たちが生き生きとしている。
新三郎と結婚する、美しいりく、
新三郎の世話役女中で、後に胡弓弾きとして再登場する、みや、
壮十郎の種を宿し、居酒屋で暮らす、おとき、
など、黛家の周辺を飾る。

自然描写や情景描写、人物の内面描写は、
前作に引き続き、素晴らしい。
中には藤沢周平の後継者と呼ぶ人もいる。

ただ、壮十郎の裁きの場に筆頭家老、次席家老が同席したり、
又次郎の嫁の姫の輿入れの祝いの宴の場で、
捕り物が行われたり、
少々不自然な作為も目立つ。
何だかテレビドラマを観ているかのよう。

第35回山本周五郎賞受賞作