読書メーターというのに参加しているのだけど、カエサルが読んでいるのは短編(ほんの数ページというものも含む)ばかりなので、読書冊数のグラフがグングンと伸びていきます。小学校のときの「図書館から借りた本のグラフ」みたいな感じで、楽しいです。
そうした中で読み続けているのが、高村光雲先生の『幕末維新懐古談』です。全80巻ということになるのだけど、各巻はほんの数ページなので秒殺で読み終えることができます。今、27巻まで読んだところかな。イッキに読んでしまってもいいのだけど、毎日1巻ずつ読んでいこうかとも思ったりして、読書計画などというものはありません。今月中に読み終えてしまうかもしれないし、5月、6月までかけて読むことになるかもしれません。
実際に、と言っても、写真で、ですけど、実際に光雲先生の作品を見たのは数年前、申年のときにネットでサルの写真を探していて、光雲先生の『老猿』と出会いました。凄いと思いました。高村光雲は彫刻家であるという認識をもったのは、そのときです。でも、他の作品のことなどまったく知らなかったわけですけどね。
キンドルで青空文庫を読み始めたとき、「とりあえず100人の著作者を読んでみよう」という目標を立てました。漱石・鴎外・芥川・太宰・・・と読み進めていったわけですが、100人となると、さすがに厳しいのです。そんなところで高村光雲という名前を見つけたので、とりあえずダウンロードしてみて、とりあえず読んでみたわけです。これが、案外に面白かったわけです。
当時の慣習として、11~12歳になると丁稚奉公に入り、10年+1年(お礼奉公)を経て、独立することができる・・・ということだったみたいです。丁稚奉公というのがどういうことなのか、くわしいことはわからないのだけど、衣食住の面倒は見てもらえるけど、無休で働くことになるんだと思います。その間に、知識や技術をみにつけるということなんだと思います。
カエサルとしては、こういうあたりの話がすごく面白かったわけです。義務教育なんてない時代ですからね。労働基準法なんてものもありません。そういう時代の庶民がどんな生活をしていたのか、とか、ほとんど知らないわけですよ。
幕末・維新という時代を舞台とした小説や映画・テレビドラマは数限りなくあるけれど、そういうのの主人公は、たいていの場合、オサムライさんですからね。上級だろうが下級だろうが、しょせんは支配階級に属する人たちです。政権をとっているのが徳川なのか薩長なのか、自民党なのか共産党なのか・・・なんて、どうでもいいことではありませんか。それに、そもそもが小説であり、ドラマですからね。言葉は悪いかもしれないけど、「上から目線のつくり話」なんですよね。幕末・維新と言う時代が、庶民にとってはどういうものだったのかということは、すごく興味があったわけです。
そうした意味で、この『幕末維新懐古談』は、当時、名も金も地位も何もない一少年が見聞きした幕末・維新という時代について、それが具体的・現実的にどういうものであったのかを雄弁に物語ってくれます。凄いです。
たとえば、上野戦争。旧幕府軍と新政府軍が・・・みたいな話を聞いたことはあるし、その政治的な意味なんかを聞かされたこともあるのだけど、その戦場となった地域で生活していた庶民にはどんな影響があったのか・・・なんかについてはまったくわからなかったわけです。新聞もラジオもない時代ですからね。戦争があるという話は、誰かから聞かされてわかる。近所づきあいが悪いと、ご近所の人たちがみんな避難しているのに、自分たちだけポツンと残っていたりする。あくまでも一少年の回想に過ぎないとは言え、すごく新鮮な思いで読むことができました。
これまで読んだ中で一番印象的だったのは、「徴兵制の導入」でしょうかね。光雲先生は、徴兵が始まったということは知っていたのだけど、その翌年に自分が徴兵されることになるとは思っていなかったのだそうです。光雲先生ばかりではなく、親御さんや師匠さんなんかも気がつかなかったというのですね。明治6~7年の話。この時代の庶民の政治感覚、凄いと思いました。現代の若者は政治に対する関心が低い・・・なんてことが言われたりするわけですけど、次元が違います。凄いですね。凄い凄いです。
光雲先生は丁稚奉公の年期が明け、給金をもらえるようになったとは言うものの、東雲先生の弟子という立場に変わりはありません。光雲先生の作品が博覧会で1等賞をとったりしているのだけど、名義としては師匠・東雲先生の作品で、まだまだ高村光雲という名前は世に知られていません。
この後、老猿を彫ったり、西郷隆盛像を彫ったりすることになるはずで、トントン拍子に立身出世していくことになるはずなのだけど、その背景に「廃仏毀釈」とかがあるはずなんですよ。どうなるんでしょうか。楽しみにしているわけです。
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