茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

亥の子餅 と 亥子祝

2024-11-13 12:37:54 | 和菓子の銘

 茶道の炉開きは、現代では基本的に11月の最初の亥の日に行われます。

 2024年は11月7日でした。今年はもう一回19日が亥の日となっています。

 

 『茶遊庵』でも炉開きを致しました。ちょうど7日にお稽古がありました。

借り茶室の為、本物の炉ではなく、電熱器での炉開きですが、

今年は茶壷のお話もして、亥の子餅を食べながら、新たに迎えた炉の季節を祝いました。

 

 炉開きで頂く亥の子餅、最近は、デパートの和菓子屋さんでも見かけるようになりましたね。とはいえ、茶道を習っていない方には馴染みのないお菓子でしょう。

 先日、樂茶碗の個展を見にでかけた日本橋三越でも、今日から亥の子餅が入りました!とおっしゃる和菓子屋さんが沢山ありました。

 

 亥の子餅はその名の通り、いのししの子供(うりぼう)を象った御餅です。

 お店により異なりますが、私がお世話になっている龍月さんでは、丸められたお餅に5つ(陽の数)小豆が入っています。他に、うりぼうのように背中に焼筋が入った御餅もよく見かけますね。

 

 ところで、炉開きに、何故亥の子餅を食べるのか?

 それにはこんな歴史があります。

 

 全国的に有名ではありませんが、日本の伝統行事の一つに亥の子祝、亥の子祭というものがあります。

 今は主に西日本の一部で残っているようですが、田の神様をお祀りし、収穫を祝うものです。

 具体的には子どもたちが藁で作った”亥の子槌”や、大きな石に縄をつけた”亥の子石”を持って町を練り歩き、亥の子唄を歌いながら地面をつくのだそうです。

 これは、収穫が終わり、山に帰って留守になった田んぼに悪いものが入り込まないように、もぐらやネズミなど農作物に害を与えるものを追い払うように、という目的があるとされています。

 感謝をこめて地面をつくことで、邪気を祓い、鎮め、その土地の神様を強くするというような意味合いがあったのでしょう。

 子どもたちは近所の家をまわって、亥の子餅やお菓子、お小遣いをもらう地域もあるといいます。

 なんだか、和風ハロウィンみたいですね。

 昔の人は、こうやって地域で収穫を祝い、感謝し、楽しんでいたのでしょうね。

 

 この亥の子行事の由来は、中国の風習”亥子祝”が伝わったものとされています。

 古代中国では、亥の月亥の日に穀物を混ぜた御餅を食べることで、無病息災を願うというお祝いだったそうです。

 平安時代に、それが伝わり、宮中行事では、豆、小豆、ささげ、胡麻、栗、柿、糖といった七種の粉を混ぜ合わせて作った御餅を食すように。

 そういえば、源氏物語にも亥の子餅が出てくる場面がありますね。

 猪は多産でもありますから、子孫繁栄の意味も込められていったのでしょう。

 

 やがて、収穫の祝いも加わって庶民にも広がり、旧暦の亥の月(旧暦10月)亥の日に、冬支度の火入れ(炬燵開き、火鉢を出すなど)もするようになります。

 

 亥は、中国の陰陽五行思想(万物は全て陰陽、木火土金水で出来ているという考え)の”陰”、”水”にあたり、火伏せの意味があると言われます。

 現代の茶の世界もそれに倣い、亥の日に炉開きをするのです。



 こういった由来や意味を知ると、茶道の楽しみというのは点前やお茶だけでなく、様々なものに日本人が込めてきた願いや季節の節目を味わえることにもあるような気がします。

 

 いよいよ始まった炉の季節。

ちょっと前までは暑い位の秋だったのに、急に寒くなって、火が恋しくなって丁度よくなりました。

火の扱いに気を付けて味わっていきたいですね。

 


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