今年も入試の季節になり,京大の理系の数学の問題をまず解いてみました.
釣り,車中泊に行った際に,一人の時間に,今年の京大の数学の入試問題を取り出し,続きの解答を考え始めます.考えるときは,いつものツバメノートを取り出し,

いつもの0.9mmのシャープペンシル,ぺんてるのTAFFを取り出して,書いていきます.

1番から解き始めていきましたが,今年の問題は,1番から受験生を意識して,最初から難しい問題ではなく,すぐに手が付けられそうな内容の問題になっています.
1番は小問が2題で,最初が複素平面の問題で,極形式で計算すれば,三角関数の最大最小の問題に帰着されますが,図形的に考えればほとんど計算なしに答えが分かります.次の問題は積分の計算2問で京大受験生なら,まず確実にできて欲しい問題で,受験生は少し安心したのでは.
その背景には,医学部の中にある医学科以外の学科の難易度は低いので,その受験生にもある程度得点できることを意識したのかもしれません.医学科以外の学科である人間保健学科は,私の在学中は存在せず,京都大学付属医療技術短大という,通称「医技短」と呼んでいた別の短大でしたので,当然入試も別でした.全国的に見ても,今の看護大学や看護学科等は我々の学生時代は,看護短大という名称で,大学とは別の入試で選抜されていましたが,あるときから,看護短大が,看護大学や医学部の看護学科という形で,4年制大学になって,同じ大学の入試を受験するようになりました.したがって,京大の中でも,人間保健学科は元は京都大学付属医療技術短大というところから4年制大学に昇格して,医学部人間保健学科として今は存在しています.そういういきさつもあってか,京大の中でも入試の難易度レベルは一番低く,中には,京大という名前が欲しくて,ここを受験するとか,京大の合格実績を増やすために高校側が指導して,受験させるようなことも,現実にはあります.
もっとも,私の学生時代では,農学部は入試が易しく,つまり同一問題で,合格最低点が低かったので,私の知り合いで,京大ならどこでもいいと,農学部を受験した人もいました.
また,工学部では今の5学科ではなく,もっと細かく分かれて17学科別で合格者が決められて,合格最低点でも900点満点(英200,数200,国200,理科200,社会100)で100点以上の差があり,自分の得点から1割差し引いて第2志望の学科に合格できることも有りました.私が受験した時,数理工学科は4.9倍で900点満点で合格最低点が550点で,17学科の中では情報工学科に次いで2番目でした.その結果,第2志望で何人かの受験生が他の学科(例えば,合成化学工学科,化学工学科,石油工学科等)に合格していました.後から聞いた話では,女性も3人が数理工学科を受験していましたが,合格したのは一人で,残り2人は他学科に合格でした.ちなみに,当時,私の入試の年では,工学部は975人ほどの定員で女性の合格者は5人ほどでした.数理に一人,建築に一人,他の学科に3人という具合でした.今と比べて隔世の感があります.そういえば,当時の工学部の連中で,「ここしばらく女性と会話したことないなあ」なんて言っていたり(笑).今と違って,2次試験の記述式問題で,理系はすべて同じ問題で,配点も同じなので,合格最低点で学部間や学科間の難易度も比較できる点では今よりすっきりしていました.とは言え,今ほど偏差値による輪切りもひどくはなく,それ以上に,何を勉強したいかを考えて受験していたように感じます.共通一次,センター試験,共通テストと続くこの試験制度のために1点刻みによる難易度が生じ,それに影響を受け受験するという今の状況につながってると実感しています.また,この試験制度のために,文化祭や体育祭の日程も早まり,かつ,公立中学の数学英語の授業時間数の減少のために,公立高校から,大学受験に有利な,つまり,中学段階で高校の教科を勉強して,大学受験に有利な中高一貫の私学に成績優秀者が流れる傾向になり,今に至っていると言えます.
さて,2番は整数問題でシンプルな問題分文でその意味では京大らしい問題です.かつて,京大の入試の数学で,受験史上,最も問題文が短いとされた,「tan1°は有理数か」という問題を思い出させてくれます.
正の整数x,y,zを用いて
N=9z^2=x^6+y^4
と表される正の整数Nの最小値を求めよ.
というものです.整数の6乗と4乗和が平方数の9倍になるという,そんなNの最小値を求めるのですが,6乗と4乗和が9の倍数と考えると,x,yが3の倍数ならその6乗,4乗和は確かに9の倍数になる.それ以外ならどうかなと考えると,整数を3の剰余類で考えることになる.その結果,xもyも3の倍数でないといけないということが分かり,必要条件が分かります.そこで,x,yが3の倍数として与えられた式に代入して,更に進めていくと,自然と正解にたどり着けます.予備校の解答等では何故,3の剰余類で考えるのかが説明されてなく,教育的には,そういう発想になることの説明が一番大切なので,高校の授業ではそういう視点を大切に生徒に説明をしていきますが,多くの教員は,解答を配っておしまいというタイプが多く,あまり指摘されないのですが,こういう点が今の高校生や受験生の勉強の中で問題点であると感じています.
3番は,2番に比べて問題分が長く,それでも,書いてあることをグラフを書きながら状況を正確に把握できて,法線の方程式から考察する関数p(t)が確実に導けて,後は関数p(t)の増減を,愚直に微分計算して調べて,変数tの範囲内で増減票を作っていけば確実に正解にたどれるので,まじめに勉強している現役生には難しくはない問題です.
4番は,意外とできなかったのではないかと思います.問題は前半と後半があり,前半の問いかけが,ある条件の下で,平面が一定の点Pを通ることを示せとなっている.この平面は一定の点を通ることとは,数式的にどう示せばいいのかというところが難しいのではないか思います.実は,与えられた条件を満たすとき,平面が定点になってしまい,そのことをいろいろ平面ができてても一点Pを通ると表現していることになるということを理解して初めて,問題文が納得できるというところに難しさがあります.後半の問題はベクトルの外積と内積で三角錐の体積が表現できるので,それを使えば機械的に計算して,解が得られます.予備校等の解答では外積を使った解答はありませんが,高校の教科書では,平均的なレベルの教科書でも,発展事項としてベクトルの外積の話はあるので,そこで,教師がベクトルの外積とその性質を話していけば済みます.決して難しい話ではないので,定義と少しの性質を紹介するのに30分あれば十分で,その後の授業で折に触れて言及することで生徒は使えるようになると思います.具体的には,ベクトルa,b,cで張られる平行六面体の体積は,ベクトルの外積と内積を用いて,
(a×b)・c
で表せます.これは,内積と外積の定義から言えます.したがって,四面体OABCの体積は
{(a×b)・c}/6
で計算でき,ベクトルpがベクトルa,b,cで表せられるので,四面体PABCの体積もベクトルa,b,cで表現でき,この体積が四面体OABCの半分になることが計算できます.
5番は問題文に従って,交点のx,y座標をパラメーターθで表現して,次にパラメターθを消去するために,sinθとcosθについて解いて,それぞれをx,yで表現して,sin^2θ+cos^2θ=1に代入すれば点Qの軌跡の方程式が得られます.その後,θの制限から,x,yの制限を求め,それを加味した範囲の軌跡の方程式が求めるものになり,それを図示すれば出来上がりです.
6番は一番難しい問題ですので,次回に解説します.