268の2『岡山の今昔』岡山人(20~21世紀、大森久雄)
大森久雄(おおもりひさお、1940~2015)は、教育者、社会運動家にして「郷土史家」でもある。
高校在学時には、既に日本歴史の研究に携わろうと考えていたという。そのきっかけを知りたい。かかる意味では、勉強できなければ人生は切り開けない、との思いであったのだろうか。
1962年(昭和37年)に、愛媛大学を卒業する。おさめた課程は、文理学部の人文学科史学課程 とのことで、さぞかし充実した学生時代であったのではないか。
教員となっては、1963年(昭和38年)から1999年まで、岡山県立玉島高等学校で教鞭をとる。
さりとて、大学教員や専門機関専門職と異なる身分に違いない。それだから、学問に振り向けることのできる時間を得るには、どう対処すればよいのか。いずれにしても、勉強、研究なりは、かなり制約されていたのではないだろうか。
そんな中でも、渋染一揆を中心テーマに選び、当時の岡山藩の財政状況などもふまえ、厳密な研究を行い、とりわけ、その背景そして社会への影響の全体を明らかにしようと努めたのは、偉大だ。その現代的意義については、こう述べる。
「渋染一揆の背景には「世直し」をねがう幕末の広範な民衆運動があった。渋染一揆はその一環として闘われた。渋染一揆は(えた)中下層百姓主張のもとに団結し、百姓と同じ扱いをせよとの平等要求をかかげ、上層判頭の指導のもとに村役人・目明しの妨害をこえて藩権力と対決する整然として強訴を成功させ、藩の差別法令を骨抜きにして勝利した。」(大森久雄「概説・渋染一揆」岡山問題研究所、1992)
大森はまた、学問の域よりやや広い意味合いでの社会活動家としても、広く知られる。主には、1990年から2002年にかけて、岡山問題研究所の理事を務める。ほかにも、いつ頃からか、日中友好協会や人権研究センター、倉敷九条の会、岡山県歴史教育者協議会、倉敷の街並み保存など、その活動範囲は、大変広かったようだ。
これらのうち倉敷の地元、伝統的な町並みが色濃く残る美観地区・本町通りの町屋に住み、そこからの歴代の人々の日常、やがては「備中倉敷学」までを考えてみたらしい。
珍しいところでは、郷土の写真や、外国の本の翻訳なども手掛けたという。後者での、ナイトリーの「アラビアのロレンス」の翻訳(2002)にも、興味を惹かれる。
大森久雄(おおもりひさお、1940~2015)は、教育者、社会運動家にして「郷土史家」でもある。
高校在学時には、既に日本歴史の研究に携わろうと考えていたという。そのきっかけを知りたい。かかる意味では、勉強できなければ人生は切り開けない、との思いであったのだろうか。
1962年(昭和37年)に、愛媛大学を卒業する。おさめた課程は、文理学部の人文学科史学課程 とのことで、さぞかし充実した学生時代であったのではないか。
教員となっては、1963年(昭和38年)から1999年まで、岡山県立玉島高等学校で教鞭をとる。
さりとて、大学教員や専門機関専門職と異なる身分に違いない。それだから、学問に振り向けることのできる時間を得るには、どう対処すればよいのか。いずれにしても、勉強、研究なりは、かなり制約されていたのではないだろうか。
そんな中でも、渋染一揆を中心テーマに選び、当時の岡山藩の財政状況などもふまえ、厳密な研究を行い、とりわけ、その背景そして社会への影響の全体を明らかにしようと努めたのは、偉大だ。その現代的意義については、こう述べる。
「渋染一揆の背景には「世直し」をねがう幕末の広範な民衆運動があった。渋染一揆はその一環として闘われた。渋染一揆は(えた)中下層百姓主張のもとに団結し、百姓と同じ扱いをせよとの平等要求をかかげ、上層判頭の指導のもとに村役人・目明しの妨害をこえて藩権力と対決する整然として強訴を成功させ、藩の差別法令を骨抜きにして勝利した。」(大森久雄「概説・渋染一揆」岡山問題研究所、1992)
大森はまた、学問の域よりやや広い意味合いでの社会活動家としても、広く知られる。主には、1990年から2002年にかけて、岡山問題研究所の理事を務める。ほかにも、いつ頃からか、日中友好協会や人権研究センター、倉敷九条の会、岡山県歴史教育者協議会、倉敷の街並み保存など、その活動範囲は、大変広かったようだ。
これらのうち倉敷の地元、伝統的な町並みが色濃く残る美観地区・本町通りの町屋に住み、そこからの歴代の人々の日常、やがては「備中倉敷学」までを考えてみたらしい。
珍しいところでは、郷土の写真や、外国の本の翻訳なども手掛けたという。後者での、ナイトリーの「アラビアのロレンス」の翻訳(2002)にも、興味を惹かれる。
自らの学問に向かっては、渋染一揆の地にある案内板に見える説明の不正確さを指摘するあたり、やや重苦しい雰囲気もありがちな印象ながら、こちらの方面では、かなり気さくな人柄が温かく感じられて、なんとも心地よい。
(続く)
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(続く)
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