シッポ振ってられるかよ!

イラストレーター&デザイナー
マサキ・キャンベル公式(?)ブログ
日常の妄想と焦燥と衝動をあなたもどうぞ

サイン

2005年10月22日 | 焦燥&妄想事情
もう7、8年前ぐらいの話になるが、俺様は道端で『サイン』をせがまれたことがある。

当時は会社を辞めてフリーの絵描きになったばかり。
もちろん売れてない頃(今も売れてないが)だったし、自分がサインをねだられるなんて夢のまた夢、そんなことより絵描きがサインを求められるなんて、借金の借用書以外に考えられないのだが。
まぁ昔からよく『●●と似てる』と、初対面の人に言われてたのは確か。
「弟に似てる」とか「友達の彼氏に似てる」とか、大概は自分の知り合いか身内。当然俺様は知らない。知らないから似てると言われても嬉しくない。
どうせなら有名な芸能人に似てると言われたいが、言われたことがない。
要するにドコにでもいそうな顔なんだろうと自分で言うと情けなくなるが、そんな俺様が道端でオンナの子にサインするなんて想像すらしなかった。その時までは。

話を戻そう。
その日、俺様は渋谷の明治通りを歩いていた。
古着屋巡りをして楽しんでいたのだ。
ちょっと疲れたので宮下公園のベンチで休んでたら、同い年ぐらいの女の子が近寄ってきた。
その女の子は友達でも何でもない、知らないコだったので無視してたら、どうも俺様に用があって近寄ってきたらしい。
訝しげにそのコへ視線を向けたら、彼女はバックから手帳を取り出して俺様に向かってこう言った。
「あのぉ、サインください」
……はぁ? 一瞬、新手の逆ナンかと思った。が、どうせ芸能人の誰かと勘違いしてると思い、
「ホントに俺でいいの?」
と聞いてみた。そしたら、
「はい」
と二つ返事。俺様のサインがほしいらしい。

間違ってる、このコぜぇ~ったい誰かと間違ってると思いながらもサインに応じることにした。
しかし俺様でいいと言うことは俺様のファンなのか。俺様の情報をドコで手に入れたのだろう。無名の絵描きを知ってるなんて恐ろしいコだなこのコは、などと思いながら彼女の差し出す手帳に、

------------------------------------------







マサキ・キャンベル








------------------------------------------

と、でっかく書いて彼女に返してあげた。
彼女はありがとうと笑いながらその手帳を眺めた瞬間、それまでの笑みが消えた。
それから彼女は五秒ほどその場で考え込み、手帳と俺様の顔を交互に眺め、小首かしげながら去っていった。












やっぱり誰かと間違えてやがったな。

誰かと間違われたこと、何より自分のファンでは決してなかったことは間違いない。
いったい誰と勘違いしてたんだろうか。竹之内か? キムタクか?
よっぽど視力が悪かったんだなあのコ……。

あれから随分たったが、あの時が最初で最後のサインだ。今のところ。
これから一生サインしなかったら、あのサインが最初で最後のサイン。
彼女は今でも持っているのだろうか。捨てちまっただろうな……。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イラスト&写真のデータ販売

イラスト&写真のデータ販売してます

↓フォトライブラリー↓
フォトライブラリー

↓PIXTA↓
PIXTA


こちらでTシャツ等グッズ販売してます

↓UPSOLD.com↓
UPSOLD