12/24(金)~27(月)の4日間、南アルプス・北岳(きただけ/3193m、山梨県南アルプス市)へ行きました。2001年以来9年ぶりの訪問で、積雪期は初めて。
メンバーは、山岳同人K代表のT氏と私の2名。
当初は、北アルプス・槍ヶ岳を予定していたのですが、皆さんご周知の通り、クリスマス・イブを境に今年一番の寒気が南下。日本海側は大荒れになると判断し、比較的天候が安定する(はずの)北岳へ急きょ転進しました。
しかし、北日本上空約5000mに流れ込んだ氷点下39℃の寒気(読売新聞12/27付朝刊)の影響は強く、太平洋側のこの山も暴風雪に。結局2900m付近で敗退となりました。
《前編》と《後編》に分けての報告です。
<24日/曇り>
5:00 T氏の自家用車で東京発。
計画では、北岳東方の夜叉神峠(やしゃじんとうげ)から入山する予定だったのですが、南アルプス林道が工事中で通行止め。ショックを受けつつも、同市早川町 奈良田(はやかわちょう ならだ)へ素早く移動、県道南アルプス公園線経由で入ることにしました。
しかし、こちらでも…
奈良田への入口で、やはり工事中のため片側交互通行の時間規制。約1時間待ちとなってしまいました。
通行時間は、写真右端看板のとおり。今冬2/2までに、北岳周辺へ入られる予定の方は、お気をつけください。(林道情報も含めて、下調べをしておくことをお勧めします!)
それにしても、スタートから何やら暗雲…?(苦笑)
10:20登山口のある奈良田第一発電所(標高900m)に何とかたどり着き…
10:40「冬期閉鎖中(車)」ゲートをくぐり、やっと第一歩を踏み出すことができました。気温5℃。
とはいうものの、北岳への登路となる池山吊尾根(いけやまつりおね)への入口、歩き沢橋までは13km近い舗装路歩き。幕営用具一式の重荷(25kg前後)が応えます。
周辺は南アルプス国立公園。
イワヒバリ(岩雲雀/スズメ目イワヒバリ科)にじっと見つめられながら…(写真真ん中やや左寄り。わかりづらくてごめんなさい)
延長1km近い、長ーい新鷲住(しんわしずみ)トンネルをはじめ幾多のトンネルを抜け…
足裏の痛みがピークに達し始めた14:00前…
今日の目的地、歩き沢橋(1230m)に到着しました。周辺はうっすら雪化粧。山の稜線には灰色の乱層雲がかかり、寒気が強まっているのを感じさせます。気温2℃。
本日はここで幕営です。
冬場はテントの中で炊事することが多いため、内部が結露して濡れてしまいます。今回は、アライ・ゴアライズ(透湿防水性のあるゴアテックス製)を使用。これは、快適です。
今日は何の日?…そう、クリスマス・イブですよね。
国産牛肉入りのすき焼きと…
こだわりの?ロールケーキで大の男が二人、ちょっと贅沢な夜を過ごしました。寂しいなぁ…(笑)。18:00過ぎには就寝。
〈25日/曇りのち雪〉
5:00起床、7:00前に出発しました。気温-2℃。
登山口からいきなりの急登に息が切れます。(1/25000地形図の計曲線=50mごとの太い等高線の間隔が約2㎜ということは…)傾斜は45°ほど?
標高1400m付近で見かけたこれ、何かおわかりですか?ニホンジカ(日本鹿/ウシ目シカ科)のオスによる角砥ぎ跡です。痛々しい。
こちらは…
常緑樹のシャクナゲが、葉を針のようにすぼめていました。こうすることで葉の表面積を減らし、厳しい冬の雪と寒さから身を守るのだそうです。生き残りの戦略ですね。
トレース(先行者が歩いた跡)はあるのですが、膝下くらいまで雪に埋まるようになり…
1800m付近からは、秘密兵器スノーシューの登場です。
実はこれ、槍ヶ岳山行用に清水の舞台から飛び降りるつもり?で購入したのですが、「せっかくだから…」ということで持って来ました。今回の山行中、腿まで埋まるような深雪でも、膝下くらいまでのラッセル(雪をかき分けて進むこと)で済み、思わぬ助けられることに。ワカン、もう履けなくなってしまうかも…。
標高2040m、池山御池小屋(いけやまおいけごや)前。いよいよ風と雪が強まってきました。周辺の積雪は1mほど。
無人小屋の中には、40代前後の単独男性が一人。3日ほど前から停滞し、北岳を狙っているとのこと。ここへ来るまでにも、下山中の単独男性2人とすれ違いましたが、いずれも風が強く頂上を断念したとのことでした。やはり、今回は条件が悪そうです。
小屋泊まりの誘惑に駆られながらも、「できるだけベース(キャンプ)を上げておきたい」私たちは、寒気迫る山へ戻ったのでした。
2200m付近からはトレースも消え、T氏と交代で新雪のラッセルに。肩に食い込む重荷と風雪も加わり、二人とも疲れが溜まってきたころ…
14:30 標高2500m地点に到達。尾根北側斜面に幕営適地を確保し、テントを張りました(防寒のための外張りがないためフライシートで代用)。
気温は-15℃。一気に冷え込んでいます。
テントの中に逃げ込むように潜りこみ、まずしたことは…
急激な冷え込みで凍りついた水筒の水を溶かすことでした。凍結防止カバーをしていてもなお、この状態です。
いつもなら「まずは一杯!」ですが、今日は二人ともグッタリ…。酒よりも、レモン湯やカフェオレなどの“栄養価の高い水分”を身体に流し込み…
本日のメーンディッシュ、鶏肉とキノコのすき焼き風炒め(前日のすき焼きのタレが残っていたため)と、α米の白飯をむさぼるように食べました。旨かった…。
山で(酒があるのに)呑まなかったのは、初めてかもしれません。
次第に強まる風が森の樹々をゆさぶる中、明日の天候を気にかけながら、昨夜と同じ18:00過ぎにはシュラフに入り、身体を横たえました。
《後編》につづく-
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私は、12月31日奈良田からあるき沢橋、元旦2700mポイント、2日北岳登頂、3日奈良田に下山というルートで行ってきました。
皆さんのトレースのお陰で登頂できました。
ありがとうございました。
元旦にすれ違った4パーティーは全て、強風と厳しいラッセルに遭い、ボーコン沢の頭から撤退してきたと言っていました。
次回の登頂を祈念しております。
冬の北岳登頂おめでとうございます!
私たちと同じルートでの入山。しかも、元旦にすれ違った4パーティがことごとく断念する中での成功とは、本当にわずかなチャンスを活かされたのですね。トレースが少しでもお役に立ったのなら、嬉しい限りです。
「遠い頂」、私たちは今後の宿題です(笑)