濃い森林(もり)と火山湖が印象的な北八ヶ岳。その中にあって、同ロープウエー山頂駅周辺に広がる坪庭(つぼにわ)の植生が、興味深い。
標高2200~2300mに広がるこの溶岩台地は、本来であればコメツガ、シラビソなど亜高山帯針葉樹林に覆われるはずの場所。しかし、高木は育っていない一方で、背の低いハイマツや高山植物が見られる。これよりも標高の高い北横岳や縞枯山など、周囲の山々は樹林に覆われているにも関わらず…この高山帯の“逆転現象”は、坪庭周辺が「(溶岩流で埋め尽くされており)土壌の発達が悪いため」(『山の自然学』(小泉武栄著))、だという。
高山の植物と風景を誰もが気軽に楽しめる場所-先日訪れた八ヶ岳/坪庭の花と自然をご紹介。
ハクサンフウロ(白山風露/フウロソウ科)
ハナイカリ(花碇/リンドウ科)
ヤマハハコ(山母子/キク科)
ゴマナ(胡麻菜/同)
コケモモ(苔桃/ツツジ科)
ガンコウラン(岩高蘭/ガンコウラン科)
ミヤマシグレ(深山時雨/スイカズラ科)
こちらは、登山靴にしきりに止まる…
ベニヒカゲ(紅日陰/タテハチョウ科)
高山蝶の一種で、長野県の天然記念物。この個体は、赤い靴を花と間違えているのでしょうか…?
こうした高山の自然が身近に感じられる一方で…
おわかりですか?
シロツメクサ(白詰草/マメ科)です。そう、ヨーロッパ原産の「クローバー」があちらこちらに入り込んでいたことに、ショックを受けました。
坪庭のような観光地に限らず、人間が自然の奥深く入り込む登山活動も、そこに棲む生きものや本来の生態系に影響を与え、知らず知らず負荷をかけている事実を、私たちは知っておく必要があります。登山ブームの今だからこそ、歩道を外れない、ストックの先端には保護キャップを付けて使用する、ゴミや残飯は持ち帰る、(特に高山では)携帯トイレを使用する…など、「自然にローインパクト」を一人ひとりが心がけていきたいものです。
「チェンソーを用いれば、1ヘクタールの森も数日で伐採できるでしょう。しかし、(これまでの研究からは)裸地から極相林の形成までにはおおむね1000年以上かかると推定されます」(『森を読む』(大場秀章著)より)
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