〈現在公開中の映画「岳」を観ました。
この手の山岳映画にありがちな「ん?…」という場面はいくつかありましたが、山岳救助の厳しさや喜び、主人公の女性隊員の成長過程などがうまく描かれていたように思います。長澤まさみが良かった!(笑)
穂高の映像も素晴らしく、娯楽作品として楽しめました。〉
5/19 秋川消防署・山岳救助隊による救助訓練が、今年もあきる野市深沢の同署訓練場であり、仕事で招かれて行きました。※
訓練の内容は、沢登りパーティ3名のうち一人が谷底に転落。別の仲間一人も負傷し、自力で動けない状態。その二人を尾根から下降して、30分以内に救助します。
中隊長の指揮の下、1チーム5人で動きます。
同署員によると、ポイントは3つ。
・要救助者が二人
・谷底に落ちた重傷者を担架で一旦斜面中腹まで引き上げ、数m水平搬送したあと、救急隊員らが待機する安全な場所まで下ろす
・担架を吊り下げるブリッジ線に結び目があり、それを通過させなければならない
前年よりも、厳しい想定とのこと。
要救助者のもとへ懸垂下降する隊員たち(写真右)。さすが早い!
まず谷底の重傷者(人形)を応急手当して、担架に収容。
「○○さん」「大丈夫?」「痛くない?」常に声掛けを怠りません。これって、精神的に参っている遭難者はとても救われるんですよね…(恥ずかしながら私も経験あり)。
すぐに一人は、担架を引き上げるブリッジ線の支点工作に取りかかります。「カラビナよし!」「安全環解除!」など声を出して自らの動作を一つ一つ確認。その手際の良さに、日ごろの訓練の成果が現れていました。バックアップも入念。
さらに、チームが上下に分かれての作業。「下部8割!」「上部完了!」など、お互いに自らの進行状況を伝え合います。チームレスキューの要ですが、一般登山者が行うセルフレスキューでも非常に大切ですよね。
ブリッジ線となるロープに担架をセット。
フリクションノットや制動器具を使い、ロープを張り込んでいきます。
斜面の引き上げ。上の様子はよくわかりませんが、滑車と制動器などを使い、あとから駆け付けた隊員と力を合わせて、ゴボウ(ロープを力任せに引っ張ること)で引き上げているようでした。
この際、担架が揺れないようにするのも重要なポイント。スピードと(要救助者に対する)心配りの両立。これがプロの技術です。
目標のほぼ30分で、重傷者を安全な場所へ。
この間、もう一人の負傷者は、別の隊員がザック?か何かで背負い搬送。先に尾根上へ上げられていました。急斜面を登るのは体力勝負です。
本日は、五日市警察署・山岳救助隊員も見学に訪れていました。消防や警察など、これら救助隊員たちの厳しい訓練の積み重ねによって、多くの遭難者が救われて社会復帰を果たしていることを、私たち登山者は知っておきたいものです。
このような訓練を、定期的に一般公開することはできないのでしょうか?気持ちが引き締まり、安全登山の普及・啓発につながると実感しました。
※昨年の同署訓練の様子については、2010.4.27本ブログ「鍛え抜かれたチームワーク‐秋川消防署山岳救助隊」参照
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一般登山者の方に見ていただく機会を設けるといいかもしれませんね。
事故を起こすと、救助する側がどれほどたいへんなのかを実感していただけますよね。
「事故を起こさないように、遭難しないように気をつけて」って言うだけでは、なかなか実感として認識してもらえないというか、
「自分だけは大丈夫」「関係ない」と思いたいのが人の心理なので…
そうですよね、今の山岳遭難ってほとんど「自分は関係ない」と思っている人たちが起こしている気がします。若い世代を中心に登山ブームが盛り上がる中、遭難も右肩上がり…危険を伴う救助活動や訓練に真摯に取り組む隊員たちの姿を見る機会があれば、感じること、得るものは大きいのではないでしょうか。