多摩、ときどき山

多摩の暮らしと山のブログ

「奇跡の山」/高尾山

2011-02-04 18:29:04 | 自然のこと

昨日3日、八王子市の高尾山(たかおさん・599m)へ仕事で行きました。

私が上京する4年ほど前、広島から訪れて初めて登った東京の山がここ。「首都
のすぐ近くに、広葉樹のこんなに素晴らしい森林(もり)が…」感動したのを、今でも覚えています。

高尾山は都心から電車で1時間あまり。信仰の山でもある頂上周辺は、真言宗の寺院・薬王院(やくおういん=行基開創
(744))や売店、ビジターセンター、ケーブルカーなどがあり、一年を通じて参拝者やハイカーの姿が絶えることはありません。誰でも気軽に登ることができる、都民や観光客のオアシス。2008年には「ミシュランの三つ星」観光地にも選ばれました。

年間250万人が訪れる観光地のイメージが強い高尾山ですが、忘れてならないのは豊かな自然。この小さな山で、一つの山としては国内最多の1500種以上の植物が確認されており(ちなみにイギリス全土で約1400種)、これは日本全国に生育する植物の約30%に上るそうです。

「南東側の斜面に常緑広葉樹林、北西側の斜面にイヌブナ林を中心とする落葉広葉樹林と、性格の異なる森林が分布している。このことが高尾山の植物の種類を多くする最大の原因になっている」(「自然を読み解く山歩き」小泉武栄著/JTBパブリッシング)。

前置きが長くなってしまいましたが…(苦笑)約2年ぶりに訪れた、冬の「奇跡の山」(同著)あれこれ。

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8:50高尾山ケーブルカー清滝駅前。気温1℃。

南東側の3号路から登りました。
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ブナ科のアカガシ(赤樫)。奥多摩ではあまり見られません。広島では、海岸沿いの山に多く自生していました。

そのほか、同じ仲間のウラジロガシ(裏白樫)、アラカシ(粗樫)、スダジイなど常緑広葉樹のうっそうとした森林が続きます。これが高尾山の気候に合った本来の植生なのだそうです。針葉樹のモミやスギの大木が、あちらこちらに混じるのも印象的。

足元に不思議な形の落ち葉がチラホラ…
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何でしょう?

実はこれ、“空飛ぶ座布団”ムササビ(
鼯鼠/ネズミ目リス科)の食痕です。いずれもアカガシの葉ですが、折りたたんで食べる習性があるため、こんな左右対称の食べ残しになるのだそうです。面白いですね。

豊かな森林が、多くの生き物の生活を支えている証しでもあります。

そして、ここでも…
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野鳥の餌付け防止標識。
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こんなところにも…(笑)。
そう、みんなで協力して野鳥を自然に返してあげましょう!

浄心門(じょうしんもん)を経由、
北西側の4号路に入ると…
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森林の様子が一変しました。

やはりブナ科のイヌブナ(犬橅)をはじめ、オオモミジやイロハモミジといったカエデ類、サワグルミ、ホオノキ、トチノキ、シナノキ…落葉広葉樹の明るい森林に。

さらにこの標高で…
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ブナ(橅)も登場。太平洋側の、標高600mに満たない山にブナが生育しているなんて…私は4年前に訪れた時、この事実にとても驚きました。冬の降雪量が東京都よりずっと多い広島県でも、広島市北部1000m前後の山々からようやく姿を見せ始める種類です。

高尾山にブナがある理由…先の小泉先生の著書によると、江戸時代(16~19世紀)「小氷期(しょうひょうき)の凍結破砕作用(とうけつはさいさよう)」に関係しているそう。現在は「気温の上昇と冬場の乾燥のために、跡継ぎは育っていない」とか。興味のある方は、同著をぜひお読みください。自然に親しむ山歩きが、これまで以上に楽しく充実したものになりますよ。

ちなみに上の写真のブナ、「美人ブナ」と呼ばれているそうです。いかがでしょう?(笑)

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11:50高尾山山頂着。気温10℃、快晴。
西の空の下には、丹沢山塊(写真真ん中左)と…
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富士山が出迎えてくれました。

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山頂の大見晴台周辺は、平日にも関わらず行き交う人が絶えません。が、これでも静かなのです。

紅葉シーズンや年末年始はもちろん、たとえオフシーズンでも、休日はこの広い場所が人、人、人…で埋まってしまうことも珍しくないとのこと。「三つ星」や、マスコミへの露出度の高さも影響しているようです。

本日くらいが、山の中、自然の中らしくて快適に思いました。

下山は、西にある一丁平(いっちょうだいら)経由で、北側の日影沢(ひかげさわ)へ。
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史上2位、35日連続「乾燥注意報」が出されている東京地方(2/3時点)の山は、乾き切っています。高尾に限らず奥多摩でも、写真のように、歩くだけで砂埃が舞いあがるほど。丘陵地では、地面にひび割れが入っているところも…。

跡継ぎが育たないブナの話ではないですが、植物など自然環境への影響や夏の水不足などが、さすがに気になり始めました。

下山中、もう一つ気にかかったこと…
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何かおわかりですか?

利用者が、シモバシラ(霜柱/シソ科)という植物にできる氷結※を見たり、写真を撮るために、歩道から外れて生育地へ入り込み、地面が裸地化した跡です。「登山道を外れないで」とお願いしている標識のすぐ脇での光景。あちらこちらで見受けられました。

一度失われた植生を取り戻すには、その数倍、数十倍の時がかかります。二度と元には戻らないことさえあります。「自分一人くらいなら…」が、100人、そして250万人になったら…?「奇跡の山」を後世に残していくために必要なのは、一人ひとりの「ちょっとした心がけ」なんですよね。

16:30日影バス停着。気温6℃。

※「シモバシラの氷結」については、本ブログ2010/12/20『たま百景一景 《冬編②》-「12/17 三頭山」』参照












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2 コメント

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めじろ台に住んでた時には (~の)
2011-02-07 18:46:38
めじろ台に住んでた時には
しょっちゅう行ってたよ。
当時はとても静かな山で
山頂で昼寝も出来たんだ。
今じゃ考えられないよね。
返信する
~の さん (masa)
2011-02-07 20:21:41
~の さん
そうですか、私が人の少ない頃の高尾山を知らないもので…。
人口1300万の首都のすぐ近く、交通機関の充実、「三つ星」、マスコミへの露出度、そして登山ブーム?なども相まって、人が集まるのは至極当然な流れなのでしょうね。
その一方で、マナー面や、ケガや病気での救助要請が年間100件をゆうに超えるなどの問題も、深刻になりつつあるようです。
返信する

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