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多摩の暮らしと山のブログ

ロープ技術研修/鷹取山

2011-02-10 20:54:55 | ガイドのこと

《関東地方南部は9日夜半~朝にかけて、数十日ぶりのまとまった降雨に!あきる野市周辺では雪になりました。積もるほどではありませんでしたが、空気がちょっと潤った感じ…?ホッとしました》


昨日9日(水)、所属するガイド団体のロープ技術研修へ行きました。

場所は、おなじみの鷹取山(139m、神奈川県横須賀市・逗子市)の岩場。先輩ガイド指導の下、クライアント(顧客)の安全な歩行を助ける固定ロープやショートロープ、救助活動におけるシステム構築と引き上げ、懸垂下降技術などを練習しました。

(今回の記事は専門用語等が多くなっています。わかりづらい方はごめんなさい)

P1050080_3

海にほど近い鷹取山は雨上がり。霞がかった空模様の下、まずは休憩舎をお借りしてロープ結束のおさらいです。

ガイドがよく使うムンター・ヒッチと仮固定(インク・ノット、ミュール・ノット)、ヨセミテボウライン(変形ブーリン)、バタフライ・ノットなどを、「確実に美しく結ぶ」方法を練習しました。

実践編。
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危険箇所トラバース(斜面を横切ること)時の、固定ロープの一例です。

この固定ロープとクライアントのハーネスを、スリングとカラビナ2枚で連結して通過させます。ポイントは、クライアントがバランスを崩して固定ロープに荷重がかかった時、大きくたわまない(落下距離を最小限に抑える)ようにしっかりと張ること。これが意外に難しい…。

それを可能にしてくれる結びの一つが、これです。
P1050095_2
シープシャンク。強い荷重がかかっても、エイト・ノットなどのように締まってほどきにくくなることはありません。この結びでできる二つの輪と立ち木(写真では左奥の柱)などを支点に折り返し、強く張り込んで固定。これは使えます。

青空が覗き始めた昼過ぎからは、実際に山の中を歩きながらショートロープを行いました。ロープでつなぎあって一緒に行動しながら、クライアントの(転・滑落につながる)転倒を防ぐ技術。

地形や場所によっては、スタカット(ガイドが安全圏でクライアントを確保しながら交互に行動すること)に切り替えるなど、臨機応変にロープ操作を変えます。確実さとスムーズさが要求され、大前提として「ガイドは絶対に転倒してはいけない」高度な技術。実践の積み重ねしか、上達への道はないようです。

救助技術は、
岩場や登山道から落ちて、自力で動けなくなった人を安全な場所まで引き上げる想定。
P1050109_2
ここではまず、要救助者の荷重がかったムンター・ヒッチを解除するために、ミュール・ノットとマッシャー(オートブロック=赤スリング)で仮固定。このマッシャーを確実に効かせることが、最大のポイントになります。

P1050108_3
二つ目のポイントは、ロープがかかった引き上げ支点(写真一番下のカラビナ)を、ロープが逆戻りするのを防ぐマッシャーの支点(同真ん中のカラビナ)よりも、下に設置すること。写真では、赤いマッシャーのすぐ左上に白と青のダイニーマスリングをかけて“ひげ”を出すことで、引き上げ支点を下げています。

こうすることで、引き上げ時にマッシャーがカラビナ内を反転してブレーキになることを防げるのです

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1:5システムが完成。

救助者が一人の場合、傾斜が少し急になると、1:3では引き上げるのがかなり厳しくなります。1:5は手間と時間がかかります(ロープを5m引っ張っり、実際に上がる距離は1m
(あくまでも理論上))が、現場の状況や人数などを考えて、臨機応変に使い分ける必要がありそうです。

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最後は懸垂下降技術。
P1050115_3
ここでも“ひげ”が有効なようです。

ビレイループにカラビナと下降器を直接かけるのではなく、スリング類をハーネスのウエストベルト部などに直接セットして、それに確保器をかけることで、
・確保支点が上に上がって、バランスがよくなり安定する
・写真のように、制動をかけるなどのロープ操作が身体のすぐ前でできる
・ビレイループが空くことで、バックアップや仮固定をとる際の作業性が良くなる

などのメリットがあるようです。

本日も「目からウロコ」の連続で、とても勉強になりました。

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