多摩、ときどき山

多摩の暮らしと山のブログ

心配です…南アルプスの自然

2017-08-17 23:04:09 | 自然のこと
先日訪れた南アルプス/仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ・3033m)は、かつて「高山植物の宝庫」として有名な山でした。が、今回、藪沢(やぶさわ)コースで見た光景に私は愕然としました。



シカ防護ネットは昨年もありましたが…中にある花のほとんどが、シカの食べないマルバダケブキ(丸葉岳蕗)に代わっていました。(開花時期の多少のズレはあるにせよ)ハクサンフウロやシナノキンバイなど、他の種類はちらほらと散見される程度。森林限界周辺でも、有毒でやはりシカの食べ残し?コバイケイソウが目立ちました。5年前の同時期に訪れた際にはこれほどではなく、一見してシカの食害がかなり進んでいると感じました。

ニホンジカの食害の問題は、南アに限らず奥多摩、奥秩父、大菩薩、八ヶ岳…全国的に問題になっています。樹皮を剥がされて立ち枯れの目立つ亜高山帯の森、草花や若木がほとんど消えた落葉広葉樹林、草本が食べつくされて崩壊した山肌…このままでは「日本の森は消えてしまうのでは…」と危機感を感じる場面にもたびたび遭遇します。もちろん、各所でシカの食害を防ぐ取り組みは行われています。が、その対策はと言えば「防護ネットで囲む」「裸地化した斜面の土壌流出防止」「シカの捕獲」…などの「対症療法」に頼らざるを得えないのが実情のようです。

国の特別天然記念物であり絶滅危惧種であるライチョウ(雷鳥)も、1980年代に3000羽の生息が確認されていましたが、現在は2000羽を切っているとのこと。とりわけこの南アでの減少が著しいそうです。原因ははっきりわかっていませんが、地球温暖化などの気候変動により、シカやサルが高山帯に登りライチョウの餌となる高山植物を食べてしまったり巣の周りを歩き回ったりすること、同時にキツネやテン、チョウゲンボウなどの捕食者も植えていることが影響を及ぼしているのではないかと心配されています。

こうした環境の変化は、私たちの生活から遠く離れた高山帯や極地、海洋などから現れるため、遠くない将来には、私たちの暮らしにも様々な形で影響を及ぼしてくるのではないでしょうか。

下山後に見学した「野呂川広河原インフォーメーションセンター」のパネル展示。





山や森に出かける機会の多い私たち登山者に、何かできることはないのでしょうか?地元まかせ、専門家まかせ、お役所まかせにするのではなく「自分たちにも何か協力できることはないか」を考えながら、素晴らしい日本の山と森を守っていく一助になりたい…そう考えさせられる企画でした。

今夏、南ア北部の仙丈ヶ岳や北岳に入られる方は、同センター2階に立ち寄り、ぜひこのパネル展示を見て帰ってくださいね。

野呂川広河原インフォーメーションセンター



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