南米はサボテンがいたるところに顔をだす。よく見かけるのが円筒状で、白い綿のような針で覆われた2,3メートルにもなる例の種類だ。名を知らないが、誰でもどこかで見かけている。中心に大きなのはすっくとそびえ、周りに小ぶりなのが居並ぶように育っている。父、母、長男、長女、赤ん坊のように見えてくる。ほほえましい。
ボリビアに入ると同じサボテンが違った風貌を帯びてきた。最初は卒塔婆に見えた。次には無数の墓標にみえた。何故、同じサボテンのみえ方に変化を生じたか。これは理由がはっきりしている。
アルゼンチンでは、大平原でも山中でも、全く人が住んでいないようなところで、サボテンを見た。赤茶けた土地に白い柔毛をまとったサボテンは、アルパカやグアナコが草を食むとよくマッチしているのだ。
ボリビアに入ると、高地には、インディヘナが住んでいる。インカの末裔たちは追われるようにして、粗末な家に、とうもろこしやトマト、トウガラシを小さな畑で作り、それで暮らしを立てている。高地の村と村の間には延々と無人の荒地が続き、そこには、ところどころに例のサボテンが群生している。
既にガイドブックで散々コンケスタドールの悪行を知識に詰め込まれたわが目には、サボテン群がなにやら栄華を葬り去られたインディヘナ達の墓標に見えたのであった。