東京証券取引所で1日のシステム障害が起きた。
富士通の東証システム失態は2005年、12年に続き3度目だと責められている。
2005年に富士通のシステムエンジニア(SE)によるプログラミング設定のミスで全銘柄取引停止。2012年株価情報配信システムのサーバー故障で大規模なシステム障害が起きた。今回も富士通製のストレージ(外部記憶装置)「エターナス」のメモリー部分が故障し、本来は自動で切り替わるはずのバックアップが作動しなかったことが原因だと報道されている。
東証の宮原幸一郎社長は「責任の所在は市場運営者として我々に全面的にある」富士通に損害賠償を求めない考え。これは当然の回答だろう。しかし裏返せばシステム屋の責任だとの声もあるのだろうと憶測できる。
「部門任せにせず、全社をあげて対応してほしい」。富士通の時田社長は1日、今回のシステム障害について担当副社長らにこう指示した。時田社長はSEとして一貫して金融畑を歩み、東証のシステムにも関わった経験があるという。それでも回避できなかったのはやはり富士通経営層にSE経験者の厚みが足りなかったからだろう。
高橋洋一氏が実に適切な指摘をしている。
筆者は、理系出身なのでプログラミングは得意だ(正確にいえば、実際にプログラミングするには年を取り過ぎているので、得意だったというべき)。そして、PCは今でも自作で、スマホなどの小物ガジェットには目がないほど好きだ。
はっきりいえば、この種の「システム話」では、優秀といわれる東大法学卒の文系官僚ではまるで歯が立たない。御託はいえても、せいぜい2,3分であり、専門的な質問をするとまったく答えられない。というのは、プログラミング経験がないので、総論しか言えないのだ。
わたしもかつてNTTデータで携帯電話基幹システムのプロジェクトリーダを務めたことがあるが、NTTデータの経営陣や幹部層にプログラム経験のない人が圧倒的に多かった。NTTデータでさえプログラム経験なんて軽んじられていたのだ。
たいそうな理論を並べる人や、開発側の失敗を叱り飛ばす幹部が多かったが、実際はプログラム経験が全くない。まるで軍で実戦経験のない幹部ばかりの軍のような様相を呈していた。(現在では改善されているだろうと推測する)
上述の高橋洋一氏の発言はそのあたりの事情が今も変わっていないことを述べているのだろう。
下記の午前7時4分から午前8時39分にニュースリリースを配信するまでが時間があまりにかかりすぎている。
アローヘッドは注文と取引を処理する高性能サーバー約350台で構成される。2010年に運用が始まった同システムは、処理のスピードの速さから「矢」、堅牢と信頼性を象徴する「頭」にちなんで名付けられたといわれ、2重化の切り替え機能ももっているはずだった。
おそらく東証と富士通経営陣に責任感は薄いだろう。「専門家しかわからないのでしっかりやれとしか言いようがない。俺たちは運が悪かったとして事故の責任を謝罪するしかできない。」そんなところではなかろうか。プログラマーやSEの地位は専門職とみなされ、経営レベルから見るとあまりにも低いのだ。(コロナ対策で名を挙げた台湾のオードリー・タン氏はプログラマーとしても一流らしい)
事故を知った他社の経営陣も、「運がわるかったな」とつぶやくしかない。そんな日本の現状を高橋洋一氏は指摘している。
では対策はどうか。日本を支えるものたちの教育を変える必要があるのではないか。プログラム教育を数学なみに引き上げることが必要だ。プログラムを仕事にするしないにかかわらず、あたかも数学が頭脳形成に必要なように、AI時代に生き抜くためには必要な教育だと思う。
参考 事故の時間経緯
午前7時4分 東証が株式売買システムのアローヘッドに問題があることに気付く。
午前8時 「気配値が表示されないので、何らかの障害が起きたのではないかと感じた」
午前8時1分 取引所が最初の連絡を行う。証券会社のシステム管理者に、何らかの問題があったことを通知。
午前8時5分頃 ツイッターでうわさが広がり始める。
午前8時39分 取引所がようやくニュースリリースを配信。
午前9時 通常の株取引が開始される時間だが、取引が行われることはなかった。
午前11時50分頃 終日売買停止になったことを知る。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-10-02/QHK8NEDWRGGB01