はじめに
現在日本の通信業界で大きな話題になっているのが、NTT法をなくすかどうかの議論です。NTT法とは、日本の大手通信会社であるNTTに関する特別な法律のことです。この法律を廃止するかどうかについて、いろいろな人たちが考えたり話し合ったりしています。この議論は、ただの法律の話ではなく、日本の通信業界のみならず産業界の将来や経済、私たちの生活に大きく関わる重要な問題です。
多くの点で現在の世界情勢や産業構造に合わなくなったNTT法を廃止あるいは改正するとしてもNTT民営化以来の大きな課題が手付かずで残っています。それは地域インフラのボトルネック問題です。地域インフラは国民の資産か、あるいはNTT株主のものかであたかも神学論争の様相を呈しており、出口の見えない議論が続いています。
さらにはNTTが競合2社の持つ伝送路インフラに対して「それを言うならあなた方のインフラも国民の資産ではないか」と反論しています。これは先進諸外国では見られない得意な論争でありNTT法廃止論議の根底にいつも蟠る議論です。
自民党PTの提言ではその解決の萌芽がみられますが現在NTTが有している財産権や未来に対する開発、維持をどうするかで新たな展開を示すまでには至っていないようです。今後の議論に待つとしているのでしょう。その鍵は道路占用権をてこに地域インフラの管理権を国に取り戻すことですが、ここで大事なことはNTTの持つ有形資産の財産権には手をつけないことがポイントです。主としてとう道空間の管理権つまり無形資産のみの管理を国に取り戻すのです。この著作はその実現のため今このタイミングで声を挙げなければと記したものです。
このまま地域インフラのボトルネック議論が膠着状態に留まると、仮にNTT廃止法案が成立しても問題は以前燻り続け、日本が直面している「失われた30年」の問題の復活が左右されるほど危ぶまれます。これは、通信業界における競争力の低下やイノベーションの停滞、さらには経済全体の成長機会の損失を意味しています。
現代社会において、通信インフラの重要性は計り知れないものがあり、その進化と競争力は、国の経済的繁栄と密接に関連しています。このような時期に膠着状態が続くことは、国際競争において日本が遅れを取ることを意味し、(すでに大きく遅れを取っている)結果として経済全体への深刻な影響を我らが子や孫の世代に及ぼす可能性が十分に考えられます。
政府、産業界、そして国民が共同でこの問題に対処する必要がありそのためにも政府の諮問がなされています。解決策には、国内外の事業者間で健全な競争を促進し、通信インフラの自動運転やスマートシティ構想を見据えたさらなる発展を支える政策の策定が必要です。自動運転やスマートシティ構想技術革新を促進するためには、規制の緩和や技術開発への投資など、多岐にわたる分野での改革が求められます。
中でも特に重要なのは、地域インフラの一翼を担う道路占用権がNTTや競合企業だけでなく、国民の資産であるという深い認識を持つことです。この認識は電波が国民の資産であり通信事業者の資産ではないと言う明らかな事実からも容易に類推で理解されることですが、なぜか日本ではこの道路占用権に焦点を当てた国民の資産の主張が起こったことはありません。地域インフラが地下にあり、視覚的に認識されにくいためでしょうか。実はこの無形資産は通信インフラの適正な管理と利用において、従来のボトルネック論争に終止符を打つまさに目から鱗の重要な役割を果たします。
国民全体の利益を考慮し、公正なアクセスと利用が保証されることが不可欠です。これは、競合企業に対しても、公共の福祉を優先するという責任感を持つことを求めるものです。(なお課題が拡散することを恐れますがNTTの銅線廃止に伴うとう道空間の有効利用も単に通信に向けるだけではなく日本の国土利用デザインで大きな課題です。)
ユニバーサルサービスの維持と増進には、NTTのみならずすでに横綱クラスになった競合企業の責任感が不可欠ですがこれは競合他社も是とするでしょう。国民全体が安定して高品質な通信サービスにアクセスできることを確保するためには、これらの大手企業が積極的に役割を果たす必要があります。特に、離島や山間地域など、通信インフラが不十分な地域でのサービスの提供は、公共の福祉の観点からも重要ですがあえて強調しなくても競合他社は十分に責任を感じていると思います。
外資や技術面の安全保障に関しても、NTTと競合企業には同様の責務があります。国際市場での競争が激化する中、日本の通信インフラが外国の影響に左右されないよう、適切な規制と監視が求められます。これは、国の安全保障と経済の安定に直結する問題であり、通信企業には国益を守るための重要な役割があります。この問題もそれほどの議論にはならず解決すると思います。
以上の点を踏まえると、最大の解題として地域インフラのボトルネック問題の解消には、産業界、政府、そして国民が一体となって取り組む必要があります。国民の不可分な資産である通信インフラを適切に管理し、すべての市民が公平にアクセスできるようにすることであり、あたかも道路が国の管理が必須であると同じです。国有の情報ハイウェイ・共同溝管理が必要とされますが気づくのが遅すぎるようです。
銅線撤去と時を同じくしたNTT法廃止の議論は、情報ハイウェイ・共同溝構想への道を開き通信業界の健全な発展と、日本経済の持続可能な成長の鍵となるでしょう。
最終的に、地域インフラのボトルネック問題の解消は、日本が国際社会での競争力を取り戻し、新たな時代の先頭に立つための重要な一歩です。全ての関係者が協力し、企業エゴを廃して具体的な行動を起こす時が来ています。それによって、日本の通信業界だけでなく、経済全体が新たな成長と繁栄を達成することが可能となるでしょう。
これは、単に法律の改正や企業戦略の範囲を超えた、国家の将来にとって重大な意味を持つ問題です。通信インフラの進歩は、教育、医療、エンターテイメント業界をはじめ、国民生活の多くの面に影響を与えるため、その重要性は計り知れません。通信業界の健全な発展は、日本がグローバル化の波に乗り、デジタル化された新しい時代に適応するために不可欠です。このため、ボトルネック問題の解決は、日本が失われた30年を乗り越え、新たな成長と発展の道を歩むための重要なステップとなります。
日本の通信業界におけるNTT法の廃止議論は、単なる法律の見直し以上のものです。これは、通信インフラのボトルネック問題を解消し、自動運転とスマートシティー構想を実現するための、国民共有の資産の管理と活用に関わる重大な問題です。
NTT民営化以来の課題を解決し、通信業界の競争力を取り戻すためには、政府、産業界、国民が協力して取り組むべきです。共同溝構想の導入は、効率的なインフラ共有と持続可能な都市開発を推進し、スマートシティー構想の実現を支える基盤となります。
そして、NTTの銅線撤去に伴う道路占用権空間の有効利用は、無電柱化を促進し、自動運転車のための通信インフラを整備する上で極めて重要なステップです。これらの取り組みをNTT廃止議論に含めることは激突する議論を納め、日本が国際競争力を回復し、新たな成長と発展へと進むために不可欠です。