まさおレポート

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孫正義氏 株式の非公開化とメディチ家風ブランド戦略

2020-04-26 | 通信事業 孫正義

かつて作家の野坂昭如が天皇を究極のブランドと書いたのを読んだことがあり、ずっと脳裏の片隅に残っている。つまり一旦究極のブランドを確立してしまえばそれだけで個別の戦略に心身をすり減らす必要はない。たまに姿を現すだけでよく、頻繁に出てきてリーダーシップを見せつけるのはむしろ逆効果だ。長期に安定的な組織を維持発展させる究極の戦略ともいえる。

300年企業を目指す孫正義氏も今では62歳、若い時から激走してきた氏も心身にストレスをため込んでいておかしくない。このまま激走は危険だと気が付いているのではないかとふと思った。メディチ家のようにブランドだけで企業統治すれば孫正義氏は心身健やかで長命を保ち、目標である300年企業に近づける可能性が出てくるのではないか。

究極のブランドを確立することと今なお達成しえないでいる株式の非公開化はどこで繋がるのだろうか。

 

ソフトバンクグループは世界第6位の時価総額を持つ中国アリババ・グループの株式を16兆円保有し純有利子負債が6兆円だ。仮にアリババ株を売却すれば借金を返済してなお10兆円のアリババ株が保有でき総計25兆円の保有資産となる。

出典:ソフトバンクグループ 2020年3月期第3四半期決算説明資料

出典:ソフトバンクグループ 2020年3月期第3四半期決算説明資料

 

じたばたすることはないのだがメディアはなにかと姦しい。おおざっぱにいえば以下の課題も浮上しているがまだまだ余裕だ。

・3月23日に4.5兆円の資産を売却し、借金返済と自己株式取得に充当することを発表する。

・3月27日 2,000億円投資のOneWeb(衛星通信会社)が会社更生手続きを申請した。

・4月2日 ビジョン・ファンドも出資したWeWorkは経営危機に陥りその株式をソフトバンクグループが買い取る予定を撤回と発表。

・世界最大のホテルチェーンOYOはアガルワル氏がビッグデータを駆使し世界80カ国に110万室を保有するホテルチェーンへと成長させた。しかし大赤字で5,000人をリストラ。オヨは加盟ホテルに対し売り上げの最低保証も行いホテル稼働率の低下とあわせて苦難を強いられる。

・昨年の夏に6千円近かったSBG株価は、コロナの感染拡大とともに3月に一時2600円台にまで急降下。

 

冷静に考えてソフトバンクグループの株価は孫正義氏というたった一人のブランドに支えられていると言ってよい。極論すれば孫正義氏が元気で存在し続けさえすればソフトバンクグループの経営は多少の上がり下がりはあってもこのままなんとかなっていくだろう。

しかし孫正義氏が現在の暴風にかつてのように全力で立ち向かおうとすると健康を害する可能性を心配する。孫正義氏といえども人の子だ、極度のストレスを過去、長期に耐え続けてきた62歳の男は文字通り心身をすり減らしてきている。

かつてのように朝から深夜まで、ときには激高してリーダーシップをとるスタイルでは体がもたないのではないかと気になる。だからブランドを背景に隠然とにらみを利かせるブランド型経営スタイルが今後は望ましい。

非公開化はその戦略上にあるのではないかと思い至った。

3月23日に総額4.5兆円の保有株売却と計2.5兆円の自社株買いに乗り出したソフトバンクグループ(SBG)は孫正義氏が資金を借り入れて市場の株式を買い取る株式非公開化の案が議論されたという。

2008年のリーマンショック後の株価低迷時や、2015年のスプリントの業績低迷時にも非公開化が議論されたという。

3月13日に発表した5000億円を上限とする自社株買いは米ファンド、エリオット・マネジメントが最大2兆円の自社株買いを要求していたこともあるが孫正義氏自身がやりたかったとも言われている。

こうした動きは孫正義氏が自らの究極のブランドを知っており、株価の上がり下がりで都度株主の前に立って心身をすり減らすことよりもはるかに心身の負担の少ない、長続きするブランド化戦略に切り替えつつあるのではないかとの思いを持った。 

孫正義氏はSVFが目指す最終ビジョンについてメディチ家のようになりたいといったとか伝えられる。メディチ家はイタリアのみならずヨーロッパで究極のブランドであり、そのブランド力で金融界を制覇したのであり、個別の経営戦略で巨大権力を得たわけではない。メディチ家はパトロンとして悠然と構えているだけで発展したと考えている。


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