まさおレポート

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「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方 最終答申(案)」パブコメ私案

2024-12-30 | 通信事業 NTT法廃止と課題

総務省が公表した「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方 最終答申(案)」は、従来の通信政策からの大きな転換を示しています。

これまでの政策は、NTTの市場支配力を抑制し、新規参入企業の育成を重視する「護送船団方式」を採用していました。しかし、今回の答申案では、NTTを世界トップレベルの企業として成長させ、日本の国力向上に寄与させるという新たな視点が打ち出されています。新たな時代への変化に対応する答申内容となっています。

背景と意図

この政策転換の背景には、以下の要因が考えられます。

  1. 国際競争力の強化: 世界のIT市場では、技術革新と競争が激化しています。NTTが提唱する「IOWN構想」は、オール光ネットワークの実現を目指し、国内外での競争力強化を図るものです。NTTが先頭に立って失われた30年を取り戻してほしい、そのための答申になっている。

  2. 経済安全保障の確保: 通信インフラは国家の安全保障に直結する重要な要素です。NTTの国際的なプレゼンスを高めることで、経済安全保障の観点からも日本の地位を強化する狙いがあります。

  3. 技術革新とデジタル化の推進: Beyond 5Gや6Gといった次世代通信技術の開発競争が進行中であり、NTTのみならず、KDDIやソフトバンクの電気通信設備やインフラ設備への積極的な関与が期待されています。NTT対新規参入者の構図はすでに過去のものとなり3社対新規参入者への構図転換が報告書から見えてきます。

期待される効果

この顕著な政策転換により、以下の効果が期待できます。

  • グローバル市場での競争力向上:NTTのIOWN先端技術が世界市場でのシェアを拡大することで、日本企業全体の国際的地位向上につながります。

  • 技術革新の加速: NTTの技術開発開示義務の解消で研究開発を効果的に推進することで自動運転など次世代通信技術の実用化が早まり、社会全体のデジタル化が進展する期待が持てます。

  • 共同溝への道が開ける:基地局鉄塔のインフラシェアリング会社に公益事業特権を与える案が示され、NTTの線路・管路設備の空き空間利用を公益特権を付与することでインフラシェアリングする道筋が開けてくる。
    • 地域インフラを国や民間に移譲することは将来の自動運転等爆発的な光ファイバー需要に最も効果的な手段だがコストやモチベーションで大きなハードルがある。電気通信設備や管路設備を委譲することなく空き空間の利用のみを公益特権の付与対価として国に奉還することでコストのハードルが解消する。
    • NTTの光ファイバー設備は今まで通り電気通信事業法のもとで管理されるため、懸念される新たな公正競争上の問題は生じない。
    • NTTの技術開発モチベーションも損なわれない。

課題と懸念

一方で、以下の課題や懸念も指摘されます:慎重な今後の具体的な検討に委ねられるが解決可能だと考えます。

  • 新規参入企業への影響: NTTの強化が進むことで、市場競争が再び制約され、新規参入企業の成長機会が減少するリスクがあります。

  • 公正な競争環境の維持: NTTの市場支配力が強まることで、公正な競争環境の維持が難しくなる可能性があります。

  • 政策の一貫性: これまでの政策との整合性や、急激な方針転換による混乱を避けるための慎重な対応が求められます。

結論

総務省の最終答申(案)は、NTTを中心とした日本の通信産業の国際競争力強化を目指す重要な政策転換を示し或いは示唆しています。その実現には、公正な競争環境の維持や新規参入企業への配慮など、多面的な視点からの検討が必要です。政策の効果を最大限に引き出すためには、政府、NTT、そして他の通信事業者や関連産業が協力し、バランスの取れたアプローチを取ることが求められます。その大きな推進力は管路のインフラシェアリングにあると考えます。今後の深い検討を望みます。


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