まさおレポート

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電柱上の架空空間利用権設定の提案

2010-11-06 | 通信事業 NTT・NTTデータ・新電電

ソフトバンク・孫社長が従来からの考えである、NTT東西から分離した光ファイバ敷設管理会社あるいはラストワンマイル会社の構想を訴え、原口総務大臣(当時)も省内で2015年80%という目標を達成するための光ファイバ普及検討チームを立ち上げるなど、当構想実現の機運が高まりつつあるというのが昨今のメディアの見方だ。孫社長の提案は麻生総務大臣の頃から一貫しており、明治時代の水道や鉄道敷設の国策会社が歴史上のモデルになっている。当時はこれらの国策会社の原資を国債でまかない、国民生活を一挙に向上させた。これらの国策会社を推進したのは麻生総務大臣(当時)の高祖父の大久保利通で、そのせいもあって麻生総務大臣(当時)も少なからず関心を示していた。

2010年11月6日時点では総務省が「光の道」実現へのタスクフォースを立ち上げて、インフラ会社設立もその中で真剣に検討されているのだろうか。しかし、明治の国策会社の匂いがする新会社を今の時代に衣を新たにして持ってくるのにはいささか時代逆行の感がある。

利害関係者である通信会社が資本参加して新会社を作るとして、この会社はいくつもの致命的欠点を持っている。一つはNTT、KDDI、ソフトバンク等の寄り合い所帯になることだが、第三セクターの例を見る限りと寄り合い所帯ではうまくいかないのではないか。更に、この会社は相変わらず独占的性格を持つ。なんの事はないNTT独占がNTT、KDDI、ソフトバンクのコングロマリット会社になり、巨大独占の性格が三社独占=寡占に形を変えるだけの事になりかねない。

米国でも規制緩和で寡占が強まったとの反省の声が聞かれる。このインフラ会社は必然的に三社の資本参加比率によって発言力の軽重が変わるがおそらく三社はイーブンになるだろう。では他の新興通信会社はどうか。多少の株は持たせてもらえるかもしれないが、もはや参画して発言する余地はほとんど残されていない。これでは独占の主体が寡占に入れ替わっただけで、良い結果を生まないと思う。

インフラ会社にユニバーサルサービスを担わせるという点にも疑問がある。「NTT巨大独占」の著者・町田徹氏がなにかの寄稿で「ユニバーサルサービスは独占のエクスキューズ」と書いていたがその通りだろう。独占(あるいは三社独占=寡占)にゆだねなくてもいくらでもユニバーサルサービスを補償する手だてはある。例えば離島はすべて携帯電話にしてしまう。その費用はユニバーサル基金から出せばよい。かつて自民党のなかでも同様の提案があった。

肝心の光ファイバの敷設を独占から脱却させるにはどうすればよいか。電波行政と同じ視点に立てばよい。つまり電柱上の架空空間を国民の共同財産と認識して、組織論には立ち入らずに政府が再配分するのだ。電波の割り当て権を握っているのと同様に架空空間の割り当て権を立法化して持てばいいのだ。

しかし、既に既得権の塊となっているこの空間は整理といっても大変で、安全性や電柱荷重、他の回線との離隔距離、さらには電力会社やNTTへの許認可等々、複雑に絡み合っていて、一筋縄では行かない。かつて米国が線路敷設権問題を取り上げ、日米イニシアティブで解決を図ろうとしたが、現状の光独占を見る限り実質的効果はなかったといってよい。他にも総務省通信政策課がこの問題の整理を図ろうとしたが、同様の理由により実際的効力はなかったといってよい。

ADSLサービスが開始されるときに、NTTはゆくゆくは銅線の廃止を宣言していた。2010年11月2日の発表(注2)では2025年に銅線の完全廃止をするという。つまり光の時代に対応するためには現行の銅線を取り払うという計画だ。ソフトバンクを始めとするADSLサービス会社によって、事業投資の回収の観点から銅線廃止に難色をしめしていたが、すでにその時代は終わり、銅線から自前の光ファイバへと転換を望んでいるだろう。

銅線の撤去によって一挙に架空空間は余裕ができる。この現行銅線の占める架空空間は、それ以下の荷重であれば問題が全くないはずであり、光敷設のための荷重や離隔距離の検討が原則不要な点がポイントだ。そっくり政府に移管することによって電波行政と同様の再配分が可能になる。2010年11月2日にNTT東西は2025年を銅線廃止の目標に定めた。架空空間を政府所管に戻すためによい機会だ、もっと前倒しして銅線廃止と架空空間を政府所管の国民共有財産にもどすしくみを検討すべきだと思う。

この架空空間はかつて国民が施設設置負担金を電電公社に支払って構築した財産なのだが、元をと言えば道路占有許可の上に構築されたもので、国有財産の一部使用権(注1)をNTTと電力会社が独占してきたものだ。電柱の道路占有権はその有用性はむしろ架空空間にあるのだから、単に道路を占有しているのではなく架空空間を使用しているという考えを適用してもおかしくない。銅線の廃止を期に法律改正して架空空間の利用権は政府の管理下に返還し、その後入札なり、妥当な方式による割り当てを行えば、一挙に光ファイバ設置競争は活性化する。この架空利用権は売買できる性格のものであるため事業者間の譲渡も容積率の売買と同様に可能となる。

架空利用権の設定によって国の収入が増えることになるが、その額は膨大になるだろうと漠然と考えている。誰かしかるべき算出をしてほしいものだが、さらに真のラストワンマイル競争も引き起こされるに違いない。莫大な収入が確保できた類似の例が空中権の収入で想像できる。歴史的建造物は未利用の容積があり、将来的にも使用することがないので、空中権売買をすることができ、修復・保存の資金を得ることができる。東京駅は空中権売買により約500億円の収入を得て修復・保存費用を捻出したという。これを全国ベースで行えば財政赤字に悩む国の財源に寄与する可能性はあるだろう。

ラストワンマイルの独占性は主として管路や電柱財産の独占性(電力会社とNTT)に依拠しており、そして電柱財産の独占性は道路占有許可の先行取得性に基礎を持つ。つまり早い者勝ちだったわけだ。道路占有許可と占有料の法改正を含む見直しを行えば電力会社やNTTの財産権に直接立ち入ることなく架空利用権へと姿を変えることができるのではないか。道路占有許可は国土交通省、通信行政は総務省と監督官庁は異なるが、省庁の協力で一挙にラストワンマイルの独占問題が進展する。

NTT再編成ありきでは、再編成のための再編成議論になってしまう。持ち株会社制度は早急に完全分離すべきだが、ラスト1マイル会社は新たな独占・寡占を作るだけだ。


(注2)NTT東西、2025年をめどに既存電話網をIP網に移行する展望を公表
NTT東日本とNTT西日本は2日、既存の公衆交換電話網(PSTN)からIP網への移行についての展望を公表した。2020年頃からPSTNのIP網への移行を開始し、2025年頃をめどに移行の完了を想定するとしている。総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」では、2015年をめどにFTTHなど超高速ブロードバンドの整備率を100%とし、日本のすべての世帯におけるブロードバンドサービス利用の実現を目標とした「光の道」構想の戦略大綱案を8月31日に発表。

空中権売買の具体的なケース
●都心部でのビルの建替え資金に
建替え資金がない場合、新しいビルの設計では容積率を目一杯使用せず、余剰容積を売却して、その売却益を建替え資金に充当する。

●歴史的建造物の修復・保存費用に
歴史的建造物には未利用の容積があり、将来的にも使用することがないので、空中権売買により修復・保存の資金を得る。東京駅の駅舎は空中権売買により約500億円かかる修復・保存費用を捻出した。
http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/senyou-ryou/pdf/top_01.pdf
道路占用料制度に関する調査検討会
報告書
平成19年3月

占用料の性格については、公共用物の利用によって占用者が受ける利益を徴収する
という「対価説」と、公共用物の管理は住民一般の負担において行われるものである
にもかかわらず、占用は特定人の特別の使用を許し、かつ、公共用物の管理費用を増
加させるものであることから費用の一部を徴収して負担の公平を図るという「報償
説」がある。
これまで、占用料算定の基本的な考え方としては、「対価説」によってきたところ
であり、引き続き「対価説」に基づき、道路の利用の対価として一般的な土地利用に
おける賃料相当額によるべきことを基本とすべきである。

(基本的な算定式)
占用料の額= 道路の存する土地の更地価格(道路価格) × 占用面積
× 使用料率× 修正率

最後に、この提案は実は電柱地下化の代替案であり、それができれば同じ考え方を電柱地下化にも地下占有料として適用すれば良い。


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