まさおレポート

当ブログへようこそ。広範囲を記事にしていますので右欄のカテゴリー分類から入ると関連記事へのアクセスに便利です。 

フォト&幻想 サハラの老いたミュージシャン

2017-07-06 | 紀行 モロッコ・チュニジア

旅には「行きどき」というものがある。サハラの砂漠などもその代表的なところだろう。行き倒れになる可能性もあるサハラ砂漠の移動、砂の上で絨毯一枚の上で寝るテントはサソリや虫の恐れもある。今では自爆テロも怖い。旅には国際情勢や旅人の年齢によって「行きどき」がある。

 

サハラ砂漠のど真ん中にテント村があり数十人がテントに宿泊できる。(実は遭難一歩手前でたどり着いたがそのことはここでは触れない)テントの床にはモロッコの絨毯が敷き詰めてある。ハンベルと呼ばれるアトラス山中で織られたごつい絨毯で、砂の上に直に敷かれている。

満天の星明かりの下でモロッコ人ミュージシャンの民族音楽の演奏が始まる。大型のタンバリンと手打ちの太鼓ダフそれに一風変わった音色の笛、弦楽器ウードこれにボーカルの演奏だ。笛はナイと呼ばれる笛で倍音が特徴の、いわば動物の鳴き声のような割れてかすれた音だ。澄んだ音に慣れた耳には当初違和感があるが砂漠の風にぴったり馴染んでいる趣のある音で、これぞモロッコの音だ。モロッコ音楽と砂漠の風景は密接に関係しあう。満点の星と満月の下、時には踊りながらの演奏は興に乗れば6、7時間続く。

ミュージシャン達のリーダは老人だ。実はこの男に会うためにサハラ砂漠に行く。年齢不詳だが70歳はとうに超えているように見える、80歳に達しているかもしれない。左目が白く濁っている。歯はしっかりしている。背が2メートル近い。踊りながら笛を吹き、節目にジャンプして独特のポーズを決める。


砂漠の精悍な戦士あるいは族長を思わせる風貌だがあくまで優しい。何年かぶりであってもよくこちらのことを覚えていてくれる。最後に会った時はさすがにキメのジャンプはなかった。彼も人の子、やはり老いていた。

白い民族衣装にターバンをまき背筋を伸ばして悠然と砂漠を歩く骨格たくましい老ミュージシャンはそのままでアラブの土地と歴史を彷彿とさせる。翌朝我々と一緒に車でリッサニの街に戻った。リッサニの街で降りたミュージシャンはわれわれにお礼の手を降って街に消えた。とにかくかっこいいのだ、この老いたミュージシャン。

 

 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。