
NTT法は日本に競争を導入する目的で成立したが背景には1980年代初期の米国側の日米貿易赤字解消を米国一極集中しグローバリズムの世界的進展の中で解消しようとの強い意志があった。1990年代わたしは接続交渉の最前線で働いていて時折米国大使館を交渉で訪れる度に痛いほどそれを感じていた。
しかし地政学的変化の中で自国主義が主潮となりグローバリズムは終焉を迎えている空気を世界は感じ取っている。インターネットグローバリズムは安全保障の障壁が下がる。米外交問題評議会(CFR)は「グローバルインターネットは終わった」としている。
中国は米中対立によるデカップリング(分断)に備え、ネット検閲システムのグレート・ファイアウオールを、ロシアはインターネットの断片化、スプリンターネットや米国のSNSを禁止しインターネットをクローズ化している。
EUはGAFAM集中に一般データ保護規則(GDPR)、デジタル市場法(DMA)、デジタルサービス法(DSA)で対抗している。一般データ保護規則でYAHOOジャパンが使えなくなっている。
グローバリズムの結果日本のITサービス収支が2000年度から赤字幅は10年間で約6倍になるという。総務省の技術貿易統計でも赤字だから深刻な事実なのだ。
デジタル赤字の解消にはGAFAMを代表とする現在のグローバリズムと規模の経済を終焉させ日本に規模の経済効果をもたらさなければならない。そのためには日本に新しいIT技術が必要だ。NTTにはIOWNという有力なカーボンニュートラルの技術が折よく開発されてきている。
それではなぜNTT法を廃止するとGAFAMを代表とするグローバリズムを終焉させることができるか。NTT法が存続する限り電気通信に関する研究開発とその成果に関する開示義務がある。これは日本に規模の経済効果をもたらすためには実に厄介だ。
革新的なIOWNは広く情報開示が義務付けられるとNTT独占が不可でありGAFAMに並ぶことはできない。さらに厄介な経済安全保障の問題もある。すると現在のグローバリズムによるデジタル赤字や経済安全保障の問題を終焉させることはできないことになる。
そのためには不適切なNTT法を終焉させなければならないとの論法になる。
参考
日本は世界で戦うことに適した制度(法律、金融政策や財政政策)を確立する自覚がなかった。
85年から2022年までの37年間で、米株式市場のダウ(平均株価)は21倍伸びている一方で、日経平均は2倍しか伸びていない。GAFAとNTTの伸び比がダウと相似をなしている。
IOWN構想はNTTの研究所で光素材をチップに乗せる技術を確立したのがトリガー
ChatGPTなど生成AIの登場で統計データよりも、情報流通量やデータ量、IT機器消費電力量が爆発的に増える可能性。新しいIT機器は必然的にカーボンニュートラルを目指す必然性がある。