まさおレポート

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アラン・ド・ボトン 旅する哲学 メモ

2016-02-26 | 紀行 USA・UK・FR・BCN・GVE・AUS・DEU

アラン・ド・ボトン 「旅する哲学」の原題はthe art of travel で、邦題よりも内容よく表している。哲学などという仰々しいタイトルをつけたために売れ行きを逃しているのではないかと余計な心配までしてしまう。旅あるいは絵画と風景を扱っている。特にホッパーとゴッホの絵と風景に力が入っている。

ジェット機の窓から

広い視野でみるという昔ながらの教訓を私たちは知っているかもしれないが、冷たいジェット機の窓に顔を押し付けているときほど、その教訓が真実に思えるときはめったにない。アラン・ド・ボトン 旅する哲学 p62

旅は思索の助産婦である。移動中のジェット機や船や列車ほど、心の会話を引き出す場はまずない。・・・考えが進むのは、頭脳の一部がほかの課題に(例えば音楽を聴くとか、並木の列を目で追うとか)に気を取られているときが多い。音楽とか景色が、しばらくのあいだ、頭脳の神経質で批判的で実用的な部分の気を逸らせるからだ。 アラン・ド・ボトン 旅する哲学p73

これはバリから日本に到着する朝方、機内から見た雲上の朝焼けで、冷たいジェット機の窓に頭をくっつけて眺めいった。そして頭はこの世の出来事を離れ、世界外存在へと向かう。

広場

例えば蛇使いとか、後宮ハーレムとか、回教寺院の尖塔とか,駱駝とか、市場スークとか、髭面の給仕がすごい高さからトレイの小さなグラスに注ぐミントティーとか。19世紀の後半、エキゾティックという言葉は、中東の同義語になっていった。p87

モロッコ フェズの広場 サハラを超えてやってきた行商人が不思議なものを広げている。駱駝の卵や緑色の液体、薬草などに見入る男たち。ジュラバの男が熱心に見入っている。

糸杉と霧

ヴァン・ゴッホのプロバンス滞在の数年後のこと、オスカー・ワイルドは言った、ホイッスラーが描く前、ロンドンに霧はなかった、と。ヴァンゴッホが描く前、プロバンスの糸杉は、まちがいなくもっと少なかったに違いない。アラン・ド・ボトン 旅する哲学 P249

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー『青と金のノクターン-オールド・バターシー・ブリッジ』1872-75年頃

 

オリーヴの木

いまはわたしも、前には見逃していた角ばった形に気づく。・・・オリーヴの木から伸びる枝にも荒々しさがある。まるで殴りかかろうと待ち構えている腕のようだ。・・・ピンと張った銀色のオリーヴの葉は油断なく、しかもエネルギーを秘めている印象を与えるではないか。 アラン・ド・ボトン 旅する哲学 P249

イタリアのアグリジェント遺跡に頑丈な根を張るオリーブの木は周りに他の植物を寄せ付けないように見える。幹は節くれ立っている。

 

水仙

 ワーズワースはウルスウォーター湖の西岸で水仙を見た。・・・一万ほどの花が「そよ風に踊っていた」と彼は書いている。湖のさざ波もその傍らで踊っているようだったが、何といっても水仙が「抜きんでていて、歓喜のきらめく波だった」と。彼は至高の瞬間に加わることになるこの時のことを「何という富を、あのショーはもたらしてくれたことか」と説明している。 P199

 

30年近い前にウィンダミア地方を訪れた。そのときにワーズワースの住んだという家の売店でI wandered lonely as a cloud -William Wordsworthの詩を印刷したものを買った。

  I wandered lonely as a cloud
  That floats on high o'er vales and hills,
  When all at once I saw a crowd,
  A host, of golden daffodils;
  Beside the lake, beneath the trees,
  Fluttering and dancing in the breeze.

  Continuous as the stars that shine
  And twinkle on the milky way,
  They stretched in never-ending line
  Along the margin of a bay:
  Ten thousand saw I at a glance,
  Tossing their heads in sprightly dance.

 

芸術のふたつの目的

 ラスキンが判定した芸術のふたつの目的 苦痛の意味を明らかにし、美の源泉をはかること p301

 

ピンクとブルーのパジャマを着て

人間の不幸の唯一の原因は、自分の部屋で静かに過ごすすべを知らないところにある。 パスカル パンセ第136節 p308

ピンクとブルーのパジャマを着て、自分の寝室という限られた場所の中で満足したグザヴィエ・ド-メーストルは、私たちをそっとつついて、試してごらんとうながすのである  地球の遠い半球に出発する前に、わたしたちがすでに目にしているものに注目してみたら、と。 p321

 


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