まさおレポート

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NTTグループの共同調達と他社の反論

2020-04-01 | 通信事業 NTT・NTTデータ・新電電

NTTグループの共同調達に対して総務省の「最終答申」は以下のように述べる。

NTT 再編時等と比較して禁止行為規制等の公正競争を確保するための一定の規律が整備されていることを踏まえれば、NTT グループの強い購買力を背景とした公正競争の阻害を防止するという NTT グループの共同調達に係るルールの趣旨は引き続き維持しつつも、公正競争を阻害しない範囲において例外的に共同調達を認めることは、調達コストの低減等の効果を通じて、利用者への利益の還元が期待されるとともに、グローバル展開や先端的な研究開発に対する投資の促進に資すると考えられる。また、上記のスキームを通じ、希望に応じて他の事業者も含めた共同調達が行われることにより市場の活性化が期待される。「最終答申」

他社は公正競争を阻害しない範囲"が具体的にどういった内容になるのか明確に定めるまで共同調達を認めないよう総務省に意見をだしている。しかし公正競争を阻害しない範囲を明確に定めることなどおそらくできないだろう。わたしの30年前の記憶をたどると神学論争になるのがおちだ。

他社21社の意見として世界の中の日本産業育成という観点が抜けているのではないか。総務省もこの点ははっきりといえないのだろう。かつて電電ファミリーと称する巨大産業群を率いて君臨した電電公社の力の源泉は購買力であり研究開発支援だった。かつての半導体の隆盛と今の衰退は単純化して言えば電電公社の購買力が衰えたからだ。

現在の世界ではかつての公正競争を第一ルールとして唱えていた30年前の時代と様変わりしている。(私などもどれを唱えていた尖兵だった)

しかし中国をはじめとして米国など主要ライバルが国を挙げて力を入れているのは極めて強いダントツ企業の育成であり、それによる自国の産業育成であろう。総務省やあるいは公取りもそうした世界情勢を感じ取っているが、それをはっきりと表にだして言うことはまだできない。

おもえばグローバリズムや巨大独占、公正競争と国内産業育成は融和しにくい潮流だ。KDDIとソフトバンクをはじめとしたこうした意見はこの点を説得的に反論しないと総務省を動かすことはできないのではないか。

本日の時価総額をながめるとKDDI 7,466,534百万円、ソフトバンク6,649,345百万円でありNTT9,939,210百万円,ドコモ10,849,507百万円,データ1,445,978百万円と比べてかつての象と蟻の戦いではない。公正競争が錦の御旗をふるったのは象と蟻の時代である。

今では多くの有力な通信事業者が育ち、それなりの競争環境が整ってきたことから(一定の条件下における)共同調達の緩和に踏み切る「最終答申」

というのは正面から反論できない説得性を持っている。

旧電電公社は昭和60年の民営化まで通信市場を独占し、関連機器メーカーに対して巨大な購買力を持っていた。分社化したグループ会社が従来の購買力を維持すれば、競合企業が不公正な競争にさらされるとして共同調達を認めてこなかった。

いまでは国内メーカー主体だった通信機器の調達先は海外企業主体にシフトしNTT持ち株会社とNTT東西を合わせた調達額のグループ全体に占める割合はおおむね8割から2割に下がって以前のような巨大な影響力はなくなっている。

今はすでに本音はジャパンファーストなのだ。公正競争も大事だがジャパンファーストがもっと大事だろう。

この点が議論の中心になりにくいのは理解できるがこの点を忖度しなければ意見として受け入れられるのは困難だろう。(もちろん一部意見として受け入れられるだろうが)

意見の中心に公正競争阻害という数値化されにくいものを置くのではなくさらりと置いておいて、むしろ本音であるジャパンファーストを支援するうえでの課題をルール化として提案していけばよいのではないか。

NTTグループ内で設備・仕様の共通化が図られることにより、NTTグループ内では、早く、安価に設備利用が可能となる一方で、電気通信事業を営む各社では、仕様の違いによる新たな開発が伴い、期間や追加費用が必要になるなど、不公平な接続条件となると意見を述べている。

ならば例えば共同購買する際にライバル間で標準化仕様を推進する、購買量と価格にハンディをつけない、あるいは妥当な範囲に抑えるなど。そちらに議論の方向性をもっていかないといけないのではないか。

来るべき楽天の仮想化技術など、新しいライバルは異なった切り口で追い上げてくる。共同購入に対する公正競争一本やりの単純な反論では少しまずいと思った次第だ。


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