「殻ちゃん~⑱」
夜の8時すぎ水口が帰宅するなりアキに大きな封筒を渡す。
水口 「これはカルチャーの通信講座の案内。アキが今やるのはエッセイがいいと思うよ」
アキ 「エッセイ? オラは作文が苦手だったなあ」
水口 「800字のエッセイだから携帯のメールみたいなもの。月に一度書いて送るだけ。
アキはいま家事と育児と仕事があるから、でも、これならできるよ」
カルチャーのパンフレットの水口の奨める講座に黄色の付箋が貼られていた。時たま雑誌などで名前を見る女性のエッシスト。初級コースは1年、月に一度、決められたテーマのエッセイを書き、カルチャーに宛に送る。半月以内に添削され送られてくる。費用は教材込み半年分が17000円。手ごろな値段だ。とにかく、やってみよう。三陸の夏ばっぱにケータイのメールを送信するように。
先日、アキは書店で見た雑誌にユイがファッション関係のライターとして活躍していることを知り水口に「なにか勉強したい」と言い、水口も考えたくれたのだ。でも何故かユイのことは話さなかった。水口にユイを忘れて欲しかったのかもしれない。殻ちゃんが毎日のように行く近くの図書館でアキは本を借りようと思った。多くの本を読み殻ちゃんの良きママにならなければ、水口の良き妻にならなければ、できるだけ早いうちに。
夜、アキはテレビを見るのをやめて、久しぶりに「林真理子の語録」をひらく。
~やる気とパワーがあればそれで充分。それでたいていのことは叶う~
私もこれから近くの図書館へ行きます。桜並木を歩きながら
4月4日 松井多絵子
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