{ 漱石を語る声優・藤原啓冶 }
あの世の漱石は驚いているだろう。100年も前に朝日新聞に連載した小説 こころ が今また 同じ新聞に連載されていることを。連日のように漱石の記事で賑わう朝日新聞を。
声優の藤原啓冶さんはセリフで演じる✿ドラマCD「文豪シリーズ」で夏目漱石の声を担当している。天国にある大手出版社で、生前のように執筆している文豪たちの少しおかしな日常を、声優たちがセリフで演じている。漱石をはじめ、芥川龍之介、太宰治、谷崎潤一郎、志賀直哉、坂口安吾など有名な作家ばかりだが、それほど作品は読まれていないのではないかと、声優の藤原啓冶さんは語る。7月29日朝日 {リレーおぴにおん} 漱石と私 ⑫
藤原さんは古今東西の名作はかなり読み、漱石の作品はほとんど読んでいる。一番好きなのは 「こころ」。 中学の頃だったか、相当な衝撃を感じた。漱石の作品は、テーマは真面目でも、軽みやしゃれっ気がある。書かれた当時に読んでいたら、もっと気軽に読めたのに。演じるときも、重みの中に軽みがあるように心がけているそうである。
門下生やそれにつながる文学者が多い漱石は、文豪たちの兄貴分。それなりの威厳は持ちつつ、周りの騒動に巻きこまれるように藤原さんには思える。今は親分的な男が少なくなりましたものね。1964年生まれの藤原啓冶さんは、声優、俳優、ナレーターなどで活躍。代表作は
♠クレヨンしんちゃんの父・野原ひろし役。 「人は誰でも、表と裏がある。声をあてるときは、隠している面が垣間見えるような演技を心掛けている」 とのことである。
藤原敬始さま 今日はわたしの裏を詠んでみます。夜がふけてから。
7月尽日 松井多絵子