☀ 年間未来賞のひと ☀
いま、短歌人口の7割は女性だろうと或る歌人が言った。たしかに歌会はほとんど女、しかし昨年の角川短歌賞、短歌研究新人賞は男性、未来賞も男性だ。昨日届いた2月号には
年間未来賞に本川克幸、岸原さや、千坂麻緒の3人。男性の本川克幸の作品がトップに掲載されている。選考対象は、2013年10月から2014年9月号「未来」に発表された作品。
本川克幸さんはツイッターの常連である。わたしは会ったことがない。北海道の方らしい。
氏の受賞の対象となった15首を繰り返し読んだ。共感した作品を抄出してみる。
❤ 方位磁石がぐるぐる回る 本川克幸
帽子屋の帽子のなかの暗がりのどれかひとつに出口あるらし
そのむかし黒き電話のありしこと声は尊きものなりしこと
知られずに時間の過ぎる茶房ありしまふくろうの巣穴のように
君が好きな樹木のことを訊ねたし彫刻刀で雨を描くひと
君のいないソファーの上にぽっかりとなみだぶくろのような陽だまり
剥製の鹿の肌(はだえ)に射すひかり死後のからだがまたあたたまる
いずこにも出口の見えぬ海のうえ方位磁石がぐるぐる回る
年間未来賞は毎月誌上に載った作品のなかから選ばれるためか普段着の歌が多い。未来賞は「賞」を意識して構える。難解な作品になりがちだ。私は年間賞の作品のほうが親しめる。♦ 黒き電話のころは振込詐欺もなかった。いまは世にいない人々と語りあった黒い電話、本川さんは初老の方かしら。♦ 君のいないソファーの上の陽だまり の歌も胸があたたかくなる。♦ 剥製の鹿を「死後のからだ」とはベテランですね。本川克幸は。
岸原さやさんの年間未来賞作品 「妙な長さを」 も 後日のブログで、、。
1月尽日 晴れ 松井多絵子