「殻ちゃん⑭」
★ どこまでもどこまでも海どこまでもどこまでも空がつづいていたり (松井多絵子)
4か月ぶりにアキと殻ちゃんは三陸に来た。春子は仕事があり来られない。
夏ば~ 「アナゴの押し寿司作ったよ。殻ちゃんの好物の」。
殻~ 「これが食べたくて夏ばっぱに会いに来たんだ。ママはアナゴ寿司作ってくれない」
夏ば~ 「毎日毎日、印度屋のカレーだろう。あのコマーシャルのアキはきれいすぎるよ」
アキ~ 「そうかなあ、水口は髪型を変えたらもっとキレイに写ったのにって言ってるよ」。
夏ばっぱと殻ちゃんが楽しそうに話してる。アキは海が見たくて家を出る。この前に来たときは夏の海。今は冬の午後の海。7年も経ったかなあ。あの日から。この桜の木の下だった。紅葉の少しだけ残る木の下でアキは海を眺め、あのときを思っていた。後ろに人の気配を感じてふりむいた。リュックを背負った水口が立っていた、 あのとき。
アキ~「重そうだなあ。そのリュック。何処へ行くんですか、水口さん」
水口~「ただ散歩しているだけ。この木の下で時々本を読むんだ」
リュックのなかには5冊の本、その中の1冊を取り出す。『海へ空へ』 付箋が何枚も。
水口~「この小説の麻里って娘の役をアキちゃんにどうかと考えてるんだ。この5冊の小 説のなかで一番アキちゃんに適役は麻里なんだ。次のアキが主演の映画、、。」
アキはうれしくて言葉が出なかった。オラのことをこれほど大切にしてくれてたのか水口は。
紅葉のまだ残る桜の木にもたれてアキは海を見下ろし空を見上げて思う。林真理子の語録。
<運命というのは実は意志なのだ> 今日はここまで。「殻ちゃん⑮」は新年に。
12月27日 松井多絵子
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