松尾祥子歌集『月と海』
10月27日、歌人クラブ東京ブロックで「優良歌集」として表彰された3人の歌集について今日は『月と海』をご紹介したい。著者の松尾祥子は歌誌「コスモス」に所属している。河野裕子、栗木京子なども嘗ては「コスモス」の歌人、小島ゆかりは現在も「コスモス」で活躍している。この花が咲き始めると「秋になったなあ」とおもう。同時に咲いている秋バラのように華やかではないが、眺めていると気持ちのよい花である。
歌集『月と海』は松尾祥子の52歳から55歳までの作品を収めている。女盛りの終わる
その時期に松尾は父君を見送り、夫君も見送っている。母上も歌を詠まれ、母は病む夫を、彼女も病む夫をそれぞれ詠む。父を失う辛さと夫を失う辛さが同じ時期に襲う、この世は怖い。表彰式で短歌結社「宇宙風」の押切寛子が『月と海』から20首抄出し解説した。そのなかから、私の好きな7首をとりあげてみる。
『月と海』より七首
五歳にも二十歳にもなりこのごろの父は自在に時間を行き来す
夫のため押す保護者印その夜の夢にいちりん紅梅咲きぬ
「大丈夫」 夫に言ひつつ自らに言ひ聞かせをり雨やまぬ午後
病院へ帰る夫の背ゆらゆらすゆつくりゆつくりゆつくり生きよ
水仙に椿に君はやどりゐて君をらぬことまた思ひだす
人はみなだれかの遺族 春分の朝をしづかに白百合ひらく
月と海よびあひながらおんおんと水みちてくる稲佐の浜に
松尾祥子さま 私はときどき空が海に見えます。月は海に漂うような、
10月28日 松井多絵子
、。
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