今日の言葉
「勤勉は幸福の母である」 ベンジャミン・フランクリン
希望退職者募集
大手企業の経営方針の転換がメディアにチラリと取り上げられるようになりました。
終身雇用の終焉をつげるように、「早期希望退職者募集」の文字が躍っています。
中小企業が圧倒的な数を占めている日本の現状では、退職金プラス退社後のフォローを受けられるのは大企業の人たちだけになります。その前に、零細企業は倒産、その社員は何の補償もなく、職なしの状況に置かれます。どこにおいても、勝ち組と負け組に分かれます。もちろん後者が大多数になります。希望退職できる人でも、リ・スタートするときは決断まではあれこれ考えているようです。記事を読んでいて参考になる部分を紹介します。
職場では弧にならず、先輩、同僚、後輩との関係を大切にすること。それと、自分の技術と経験を活かすことができる分野を選ぶこと、いつかは報われるときがくると信じること、周りの理解をえること。転職するにはそれなりの備えが必要です。それには、普段からの自己研鑽に励むしかありません。前回取り上げた副業を本業に転換できるだけの技量をみにつけることです。
「知識への投資は最大の利益を生む」
ベンジャミン・フランクリン
56歳 文書管理を告げられて
56歳で役職定年の対象になった。
半導体大手のルネサスエレクトロニクスで、フラッシュメモリーの開発リーダーだった奥山幸祐さん(65)は、役職定年後の処遇について上司から告げられた。
「本社で文書管理の仕事をしてもらうことになると思う」
ルネサスの前身である日立製作所に入社してから技術畑一筋できた。生きがいを奪われることに等しかった。
どうすればいいのか。「自分の得意なものはなんだろう」と考えた。30年以上も打ち込んできた仕事で得た経験と知識だった。「早期退職に応募し、起業しよう」
でも一人では何もできない。同僚らに声をかけると、5人が賛同してくれた
全員がルネサスの技術者だった。その時頭に浮かんだのは、日立時代から兄のように慕ってきた長沢幸一さん(72)だ。人生の節目。「独立を報告しよう」と思った。
東京・国分寺のすし店で起業の決意を告げると、長沢さんから「短気を起こしてはいけない」とたしなめられた。しかし、奥山さんの決意は揺らがなかった。日本の半導体産業は苦戦しているとはいえ、世界に目を向ければ市場は成長している。必要とされる技術を開発すれば、必ずチャンスはある。
〈確かに可能性はあるかもしれないな〉店を出るころには、長沢さんも、奥山さんの起業に合流する気になっていた。
2011年4月、7人の仲間と50万円ずつの資本金を出し合って半導体メモリー開発の「フロ-ディア」を立ち上げた。平均年齢は52歳。東京都小平市に借りた10畳ほどのアパートが、新しい居場所になった。とはいえ、全くの無名の存在。2人で営業を重ねたが、反応は冷めていた。「技術者は何人ぐらいいるのですが?」「大きな実績はあるんですか?」-。
起業から2年過ぎたころ、スマートフォンの手ぶれ防止機能を支える目的などで使われる「G1」という半導体メモリーを開発した。消費電力が非常に少なく、コストも安い。これがヒットした。17年に台湾の半導体メーカーかなどから総額16億円の出資を受けるなど、国内外から注目を集めるベンチャー企業に成長した。
現在は台湾にも拠点を構え、従業員は57人に増え、平均年齢は49歳に若返った。
「この8年間は幸せでしたか」と長沢さんに聞くと、「楽しかった。あと2年は頑張るつもり」。すると、奥山さんが「5年は続けてもらわないと」と注文した。
2人は顔を見あわせて笑った。 朝日新聞 ケイザイより