植物園「 槐松亭 」

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石の値段 12個の印を鑑定する(中編)

2022年04月02日 | 篆刻
 3日続けてヤフオクは空振り、ウオッチしていたいくつかの篆刻関連への入札は軽々とよそから高値更新が続き早々に脱落いたしました。気のせいか最近は、古い時代物・在銘の細密細工の篆刻印の出品が多く、思わぬ高値がつく傾向が目立ちます。一方、今でも市販されている普及品、未刻印は、まとめて数十個出品されるのが通例で、一個当たり数十円からせいぜい100円止まりとタダ同然であります。
 篆刻人口は減り続け、練習用・学生用の印材のニーズは減っているのに、骨董的な品、蒐集家向けの希少な印材には投資目的も加わって高騰しているのではなかろうかと思います。また、金満中国人バイヤーが、日本にある書道・篆刻関連の文物を買い漁っているとも考えられます。

 流通品である印材の現在価格は、小さなものは、2,30円から高くてもせいぜい500円程度です。値段の高いものは紐がつくのもありますが、ほとんどは一つ数百gもある大きな印材なので、目方で値段が高くなっているだけであります。平均では200円というところ。

 ヤフオクで過去に落札したものは未使用品の値札が張られているものもいくつかあります。それは同じく数十円から数百円であります。たまに数万円のラベルがついてることもありますが、それは篆刻込み(制作料)の値段です。しかし、全くこれは現在市販される安物とは別物と考えていいと思います。まず時代が違います。古い未刻印材は昭和の後半の頃の販売であることが多いのです。これは日中国交正常化前後から、中国の品物がどっと入ってきたことによると思います。

 その時代は、まだ日本も物価が安く2015年を100とした企業物価指数によれば、1960年は48、1970年で54であります。つまり、物価は昭和30,40年代の倍になっているのです。加えて中国は極めて低い人件費や賃料でしたから、無尽蔵に露天掘りで取れる青田石や寿山石の印材が安値で輸出されたのですね。印材自体も、現在に比べてはるかに良質で丁寧な紐の仕上げも比べ物になりません。従って、今から半世紀も前の印材は今の値段の3,4倍してもおかしくないのです。
  
上の写真は、以前ヤフオクで落札した5分程度(1分は3m角)の紐付きの印材です。価格ラベルの薄れや汚れの状態から見てだいたい4.50年前のもので、作品用や通常使い用普及品でしょう。しかしこれらは、今ホームセンターなどで市販されるものとは全く異なります。大量生産製造されたものでしょうが、紐は丁寧な細工に彫られ、側面も角を丸く削り艶を出しております。今の石は、表面に油や蝋で艶出ししており、ワタシ達が印を彫り他人に提供するときには、角を丸く削り、サンドペーパーをかけ全面を磨き直す手間がかかります。600円前後の定価は、同じものを得ようとしたら(出回ることはないでしょうが)今なら最低千円、ものによっては2千円位の価額とみていいのです。

 さて、先日届いた「印まとめて12個」です。一個あたり2千円というワタシにとっては破格の安値で落札したものです。値打ちものであることは一目瞭然。一番上の写真は左が大きい印材で広東緑、右が100%本物の鶏血石です。(この2本だけで2万円以上しても不思議はありません)12個の印はどれも違う種類の高級石材と見ました。また、最低でも50年以上前に彫られている古印であります。

こうした類の印は、書道具専門店でショーケースに飾られて販売されるか、中国に渡って、印材専門の店で入手するような「ブランド石」であります。石の値段は、希少性や美しさ、材質によって大きく異なります。一般的には田黄石・艾葉緑・鶏血石など、産出量が極めて少ないあるいは資源が枯渇したもの、透明感があって宝石のように琥珀色の美しいものなどが珍重され極めて高額の値が付くのです。更に蒐集家・研究者は「温潤さ・品格」などによって価値を見極めると言います。

 これに、自然の形を保ったままか(切り出した石ではない)、芸術性のある精緻な薄意(浮彫)や紐が施されているか、という外見的な付加価値が足されます。また、作印、作款、刻字の作者の有無・在銘なども重要な要素となります。真正の作者名が分かっていれば「時代」も特定できるので、文物として歴史的な資料として、あるいは骨董品としての価値もでるのです。

 これから具に鑑定に入ろうと思いますが、また予定稿を過ぎましたので後日にいたしましょう。 
多謝

 

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