植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

「秋艸道人 」に触れようと思います

2021年07月07日 | 書道
書道や篆刻を学ばなければ知りえなかったことが山ほどあります。このブログの大半はその恩恵を受けていて、ワタシにとって大いなる知的栄養であり、収穫であります。

 今日は新潟県出身の歌人「秋艸道人(しゅうそうどうじん)  」であります。本名の会津八一さんと言った方が有名かもしれません。名前だけは聞いたことがありますが、ワタシがこの人のことを実際に知ったのはごく最近のことです。尾崎紅葉や正岡子規、坪内逍遥さんなどとの親交や知遇を得て、早稲田大学英文科を卒業し、中学校の教師をしながら創作活動を続け、書家や美術史家としても活躍された方です。まだ少年の頃は、「習字」があまりに下手で教師に残念がられたそうです。

 ヤフオクで落札した「篆刻入門」という本の中で、著名な篆刻家川合東皐さんの記事に「日日新面目あるべし」という八一さんの言葉を引用していました。今までの自分に満足することなく常に新しい姿を模索すべし、というような意味でしょうか。

 その名前は頭の片隅に残っていて、たまたまヤフオクで篆刻用の印材などを探している時に「秋艸道人遺墨集 」というのを見つけました。「因縁」を感じました。書道をやり始め、作品作りに欠かせない落款印を求め、自分で彫るうちに篆刻家になりたいという突飛な願いを持ちました。独学に必要な知識を得るために購入した入門書にその名を見つけ、作品集が偶然目に留まる、これはもう必然と言っていいと思います。ずっと見えない糸が繋がってる、そんな思いにとらわれヤフオクで入手したのが昨日届きました。

「日日新面目あるべし」という言葉は、会津さんが母校早稲田大学の学生に説いた心得「学規」の一節です。

 自分の今あるを大事にし、自省の気持ちを忘れず、学芸に励んで品性を涵養し、常に新たなものに取り組みなさいと解釈いたしました。

 この「新面目有可」はワタシの心に刺さりました。昨日終活したり身辺整理するとブログに書きましたが、それを恥じ入る気持ちであります。なんのこれしき、老いや忙しさを理由にして、達観し現状に満足したり歩みを止めることがあってはならない、と諭されたような気持になりました。まだ向上心を失ってはならぬのだと老骨に鞭打つ気分であります。

 早速、気を取り直して、昨日はきっかけを作ってくれた川合先生の作品を「摸刻」し、新面目有可を自分の感覚のまま彫ってみました。これも篆刻の練習でありますが、もう少し手入れをして仕上げようと思います。

さらに、秋艸道人の書です。会津八一さんは、若い頃から同郷の「良寛」さんに心酔し、その書風もまた良寛さんの影響を受けているように感じます。どこにも力を入れず、なにも技巧を用いず、一見細く弱弱しい線に、自然の風雅と繊細さが伝わってくるような書であります。良寛さん自体も、その書の卓越した精神性や芸術性が評価されるようになったのは近年だそうです。

 ここのところずっと「漢字」の書の練習に傾注しておりましたが、この機に少し仮名の練習も再開したいと思います。さすがに歌を学ぶにはワタシは素養と才能が枯渇しておりますが、良寛さん会津さんの書を学び、稽古するなら私にもできます。

 秋艸道人は75歳で病没しています。戦火に焼かれ、その貴重な研究文書や作品、膨大な資料は、彼の仕事場であった「秋艸堂」とともに灰燼に帰した後、亡くなるまでの10年間は書道・制作に猛烈に取り組んだそうです。

 代表的な短歌の一つ「天地に われ一人ゐて 立つごとき この寂しさを 君は微笑む」 こんな心境を歌った「秋艸道人 」の書を学びたい、そして、ワタシの倅が住む新潟に行く予定もあるので、その折にはぜひ会津八一記念館・良寛記念館に足を運びたいと思います。

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