ミカンの花が咲いている、と歌われるのはおそらく5月頃のことを言うのでしょう。真っ白な花は品種によってはとても爽やかな香りが致します。ミツバチなども好んで来るはずなのですが、当地平塚では養蜂家さんも近在にはいらっしゃらないし、自然界でもどんどん減少しているので、年に数回見つければラッキー、という位目にしなくなりました。
しかし、柑橘類というのは、他の果樹と違ってとても結実しやすく基本的に「自家不和合性 」が弱いので自家受精して実を生らしてくれます。素人さんが果樹をやるなら、病害虫が少なく手間もかからないのでイチオシであります。素人のワタシの果樹園は、当然ながら柑橘類が多くて、10種ほどになります。レモン・ゆず・フィンガーライム・金柑を除くと、食用果物として育てます。フィンガーライムは耐寒性が少なく、結実せず、棘が猛烈に痛いので処分するつもりですが、一度くらいは実を食べたいのでいまだ鉢植えで水やりしています。
柑橘類も他の果樹同様、①幼苗の数年は摘果して実を生らせず、木の生長を優先する ②混植が沢山の収量につながる ③いっぺんに沢山生らせると翌年は裏年で花が少なくなる ④有機肥料を沢山使い柔らかな土作りを行う ⑤水やりはほとんど不要で、特に収穫時期の2・3週間ほど前から水をやらない ⑥コガネムシの幼虫が入らない様定期的に土中用の殺虫剤を撒く、といったことを念頭に管理いたします。
今年は、昨年に続いて「不知火」に多くの実が付きました。不知火は一般的に販売される柑橘では「王様」であると思います。紅マドンナやら甘平など、苗の県外移転を禁じている品種は、美味しくても値段が高くて出回る量も限られています。不知火はその点暖かい地域ではどこでも育てられますし管理も簡単です。不知火の中で一定以上の糖度があれば「デコポン」と命名して販売できると聞きますが、ウチでは販売目的は無いのですべてデコポンと呼んでおります。まだ、植えてから4年目、しかも南側の隣家に遮られて秋から冬にかけては日照不足するのに、どういうわけか豊産、しかも美味しさが半端ないのであります。
今年2月に、実食してその甘さと瑞々しさに我ながら驚愕し、遠くで暮らす子供たちにも数個づつ送りました。全部で10個位しか無いので仕方ありません。普段母親びいきで父親には冷ややかな態度の子供たちから、この時ばかりは「びっくり!すげぇうんまい」と絶賛されたのです。
その理由は、ワタシの愛情、それは無い(笑)。自家製のぼかし肥料が奏功したのか、砂地がベースの土に合っていたのかたまたまだったかはわかりません。しかし非常に優秀な苗であることは間違いないので、毎日のようにアゲハの幼虫やハモグリガの害が無いかなどをチェックし、水切れが無いように成長期には週一度くらい水をやったりしているのです。
すでに開花から半年経過し、デコポン自体の肥大は終わりました。昨年よりは格段に数が多く(約30個)その分少し小ぶりです。初期の段階で摘果摘蕾しなかったからなのです。これからは、だんだん濃い緑色から黄色味が増えていき、貯えた養分と酸味が糖分に変わっていくのをじっと見守るだけなのです。
柑橘を始めた頃はずいぶん失敗しました。黄色くなったら収穫か?、収穫して追熟させるのか?、いつが食べごろかなど全く分かりません。だいぶ早く試食して何度も酸っぱい思いをいたしました。品種によってもまちまちですし、ネットで調べても少しづつ説明が異なるのです。慌てて収穫した「せとか」がいつまでも渋みと酸っぱいままで、皮が干からびていくのを恨めしく眺めました。
ワタシの観察や経験で言えば、柑橘は理想は「木成り完熟」であります。陽光を浴び皮が柔らかくなって、果肉が植物自体のプロセスで自然に甘くなる、甘さのピークに達した時にもぎ取ってその場で食らう、がベストであります。ではなぜ、柑橘類を早めに収穫してムロや段ボールの中で寝かせることが多いのか。一つには「酸味」を抜いてマイルドな味に変える、という効果があります。しかし、最も大きな理由は、生産農家さんが安定的に長期間出荷できるように調整しているからだと思います。いっぺんに出荷したら供給過剰で値崩れしますし、消費者も冬から春にかけて長く柑橘を食べたがるからですね。春過ぎて出回る柑橘類の多くが、保存しすぎて「スカスカ」酸味は無いが甘くも無い水気が失われた不味いものになるのです。
もう一つの理由は、害獣が狙っているからであります。人里離れた傾斜の丘や山にはイノシシや猿が出没するので、甘くなるのを待っていては荒らされるのです。獣たちも渋いものや酸っぱいものは口にしたら吐き出して捨てます。甘くて美味しいから食べに来るのです。山だけだはありません。住宅地や街中では、カラス・ヒヨドリ・メジロなどが襲来します。若干黄色くなるとつついた形跡が出てきます。皮が固い時は食べごろではないことを知っています。美味しくなる頃合いを熟知していて、果実の色(特に赤と橙色)、特有の熟した香りをかぎ取って突然穴を開けて荒らし始めます。
大規模な生産農家さんも、こうした害獣を防ぐのは極めて困難なので、味は犠牲にしてでも食べごろになる前に収穫し終えるのであります。
さて、マイガーデンは、黄色く色づき始めているデコポン・せとか・清見などに取り合えず手元にあるネットを被せました。まだ、さほど鳥害の心配は無いのですが、転ばぬ先の杖であります。5月に咲いて、半年、収穫まであと、3か月。厄介なのは、通りすがりの頭の黒い害獣、ネットも役に立ちません。
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