メビウスの輪

「最近の若い子は何考えてるかわからない」
……と言われた世代がつぶやく。
「最近の若い子は何考えてるかわからない」

「わからないが、正しいのは自分たち」
そう信じて、若い子を否定する人。
「自分たちもそうだった。彼らにも言い分がある」
と、わかろうとして歩み寄る人。

どっちも極端過ぎる。
意識して相手してしまってる点で同じ。

大人が子供のことをわからないのは当たり前。
子供が大人のことをわからないのと同じ。
そして、わかる必要がない。
……ただ黙々と、大人の役割を果たしてさえいればいい。
子供がわかろうと背伸びしたら、
「まだ早い」と、はねつければいい。

子供は、お菓子を食べる。
大人は、酒を嗜む。
子供は、ラジコンで車を動かし、
大人は、免許を取って車を運転する。
子供は、素顔が普通。
大人は、化粧するのが普通。
子供は、大人が起きてる間に寝て、
大人は、子供が寝てから寝る。

こういう領域、境界を、些細なことと手放した。
そのときの呑気な大人の膨大な隙に、
そのときの狡猾な子供がつけ込んだ。
……「老獪」な子供は、うるさい大人を「老害」と排除し始めた。
それを恐れた大人は、
更に更に物分りのいいふりを続けた。

結果、大人のような子供と、子供のような大人が増えた。
24時間営業のディズニーランド。みんなでいれば怖くない。