メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

サングラス外したら、おっとー!!

2019-04-14 22:07:53 | アイアン
『やぁメイサ! アイアン、今日あのマーケットで出会ったサングラス男だよ。
今日は君に会えて良かったよ。
あのグリーンのドレス、本当によく似合ってた。
よろしくね!』




と、まぁ、なんでもなーいメールが届いた。
私はサラリと、ありがと&こちらこそ的な返信をした。
その後もアイアンのメールは、本当になんてことない感じだった。
ただしょっちゅう、ハハハ!と陽気な笑い声が入っていたけど(笑)



『君はもうホリデーは取ったの?まだならどこ行くの?』

『長いホリデーは考えてないけど、ちょうど今海に向かってるところよ』



メールを始めて数日後、私は電車の中でそうしたためた。
咲人から来ない、返信の催促or謝罪メールを思い、まだ傷心中だった。(もー心ズタボロ)
キラッキラの海に多少癒されたところで、
アイアンから返事が届いた。




『いいね!楽しんでね。よかったら君の写真送ってくれない?』




写真?




ポチポチポチポチ





『海には来てるけど、水着の写真はないわよ。』

『ハハ!水着のつもりで言ったんじゃないよ!
君の普通の服と綺麗な顔見せて欲しいだけ♡
勿論ビキニも大歓迎だけどね!』




何つーか、本当に何考えてんのかわかんない軽〜い輩だなぁ。
ま、写真くらい送ってやらんこともないけど、すぐ送るのも面白くないよね。
大体こいつのこと、どんな人間かまだよくわかってないし。




『いいわ、送ってあげる。
あなたが先にあなたの写真送ったら、ね!』




すると、割とすぐに彼から、写真が添付されたメールが届いた。
君がバカンスを楽しんでると良いな!と書いたあと、次は君の番だよ、とも書いてあった。
写真を開いてみると……






おお



か、可愛いじゃん!!!




あの日予想した通り、めちゃめちゃ好みの顔した男がそこにいた。
私とは全然違うキレイな目。
キレイな二重のラインと甘くないつり目の形がいい。
しっかりとした髪と眉。
そしてちょっとだけ浅黒い肌。
高い鼻。
その鼻を除けば、日本人だと言っても通じそうな、濃すぎない外人。




うわー超タイプ。
あの子、サングラスで見えなかったけど、こんなに好みの顔してたんだ。
私のカン、冴えてる!


正直めっちゃタイプだけど、贔屓目なしに言っても彼はハンサムだ。
私の好みは一貫されているが、一般的な人気顔も知識として理解している。
彼は多分、嫌われにくい、高評価されやすい顔をしている。




『ありがとう。
こちらが私の写真です。
あなたも週末を楽しんで!』



と、盛り上がった割に素っ気なくセルフィを送ってやると、
カワイイ!って日本語で合ってるよね?ハハハ!と、
またよくわからないテンションで返ってきた(笑)





そんな感じでランダムにメールを続け、2週間後。
私達はとあるカフェで待ち合わせしていた。




続きます!

鋼鉄のオトコ現る!アイアンとの出会い

2019-04-13 07:45:29 | アイアン
その日はオフで、お天気は最高。
私は繁華街のジェラート屋さんにいた。
日本と違って湿気がなく、カラッとした夏はすごく気持ち良い。
でも冷たいドリンクかアイス無しで生きるには暑すぎる。


あぁー癒される。。。
ここのレモンジェラートめっちゃ美味い。


小さなその店の一面は鏡になっている。
私もアラサーとはいえ女子(苦笑)なので、鏡ごしに、ジェラートと自分をSNS用に撮影した。
ピンク色のカップを持つ私は、綺麗なミントグリーンのワンピースを着ている。
結構年季は入っているが、今夏着るのは初めてだ。
お気に入りだった。



外へ出ると、思わず目を細めた。
めっちゃ眩しい。
あたし、どこかで明日の朝ごパン買いたいな。


せっかくお気に入りのワンピを着て繁華街に出てきているから、
通い慣れたスーパーではなく、ちょっとしたパン屋で買いたい。
できれば初めての店がいい。
見飽きた大通りをそれて、細道に入ることにした。
不意に、観光客にも人気の、可愛いマーケットに出くわした。
あーそっか、ここに繋がってるのか、と小さな発見を喜んでいた、
その時だった。




「Excuse me, excuse me, excuse me!!」



まさか自分が呼ばれているとはつゆも思わなかったので、
私が立ち止まるまで、その人は私を小走りで追いかけていた。
振り向くと、サングラスをかけた背の高い男性がいた。



「(あたしか!)あ、はい?」

「やぁこんにちは。そのドレスすごく綺麗だね、めちゃくちゃ素敵だよ」

「え?あ、あぁ、ありがとう…」

「すっごく素敵!君にぴったり。完璧に似合ってるよ。ハハハ!」



と、彼はまくし立てた。
ちょ、ちょま!早口聞き取れない!汗
戸惑う私に気づくこともなく、彼は隣に並んで続けた。



「君、どこからきたの?」

「日本よ」

「日本!いいね。素晴らしいね。俺、日本語勉強しなきゃって思ってるんだよ。ハハハ!」

「そ、そう。あなたはこの国の人?」

「うん、俺はこの国出身。でもわかるよ!俺の見た目だよね、わかるわかる。
俺はこの国の国籍なんだけど、両親は某国から来てるんだ。
だからそっちのエリアの人間だよね」




はぁーなるほど。と私は納得した。
真っ黒な髪に、ちょっと茶色い肌。
英語が母国語っぽい見た目ではない。
今まで付き合ったことがない国の人だ。




「君はここで何してるの?勉強?仕事?観光?」

「住んでるわ。働いてるの」

「へぇーいいねいいね。何してるの?」

「ま、こういうことをしてるんだけど…あとまぁ休みには、ボランティアで日本語を教えたり…」

「最高だね!俺も教えてもらいたいくらいだよ、ハハハ!教えて教えて」



こ、この人めっちゃ喋るな…
おまけにめっちゃ早口!



「えっと、申し訳ないんだけど、もう少しゆっくり喋ってもらえるかしら?
私、まだそんなに英語が上手じゃないのよ」

「おっとごめんごめん!そーなの、俺って実際めっちゃ早口なんだ。
これ俺の悪い癖なんだよね。ごめんごめん、気をつけるよ。ハハハ!」



全然スピード変わってない




タスケテーーーー!!!(笑)


喋りながらアーケードを抜けそうになると、彼は突然足を止めて、日に焼けたくないと言った。
あまりに喋りっぱなしなので、通りすがりにお喋りを楽しんでるだけかと思ってたのだけど、
彼はアーケードに引っ込みながら、私にも引っ込むよう手招いた。




「(あら?ここでお別れじゃないんだ)」

「いやホント、急に声かけちゃってごめんね!君のドレス、本当にすっごく素敵だったからさ」

「あ、いえいえ。ありがと…」

「すっごく綺麗だし、本当に似合ってるよ!やっぱり美人は何でも似合うんだね!」



(°_°)




「ドレスも綺麗だけど、君がすっごく綺麗だからさ!思わず声かけちゃったよ、ハハハ!」

「あ、そ、そう…そりゃどうも…」

「君はしょっちゅうそんな事言われてるんでしょ?
みんながみんな君のこと綺麗だって言ってるんでしょ?
でしょでしょ?ハハハハハ!」


と、彼は笑った。
サングラスをかけているから定かではないけど、多分私の好みなんじゃないかと思った。
正直髪は黒髪が好きだ。
しかもすごく真っ黒な黒髪。
ビッシリと詰まって生えたそれをキッチリセットして、スーツを着た綺麗目の出で立ち。
瞳が見えないのに好みかどうかわかるのかと問われたら、確かに100%ではない。
でもサングラスが決してズレなさそうに乗った高い鼻は、超タイプだった。




「で、君、今日はここで何してるの?」

「あぁそうそう。よかったら助けて欲しいんだけど」

「何でも言ってよ!助ける助ける」

「私、パンを買いたいの。この辺で良いパン屋さん知らない?」



パン!?うーん、と彼は唸ったが、すぐに、俺パン食べないんだよねハハハ!と終わらされた(笑)
それでもこのエリアを軽く案内すると申し出て、彼は歩き出した。




「こっちに行くと大通りに出るし、その前にいくつかレストランもあるよ。
あっあとここも美味しいよ。すごく良いレストランだよ。
君はこういう料理食べたことある?」

「残念ながらあんまり…」

「そうだよねそうだよね。一度食べてみてよ、美味いよ美味いよ」



とまぁこんな感じで、一向にスピードダウンしない彼のトークと共に、
超サクッとだけど、そのエリアを紹介してもらった。




「君、名前は?」

「メイサよ。あなたは?」

「アイアン。よろしくねメイサ♡」



へへへ!と笑って手を差し出したので、私もヘラっと笑って握手した。



「会えて光栄だよ!ホントホント。
よかったら、君のメールアドレスとか教えてくれない?」

「…まぁ、いいよ」

「良かった良かった!じゃぁここにタイプして…」



と、彼の携帯を渡されたのでタイプし出したが、その間もアイアンのトークは止まなかった。
ほんっとによく喋るなこの人…しかもめっちゃ早口で。
大して内容もないことをペラペラ、止まることなく喋っていた。




「じゃ、ありがとう!今日は君に会えて良かったよ!!メールするね!」

「こ、こちらこそ。。。」

「最後にハグして良い?」




好みだし、一瞬考えたけど




「今度ね」




と手を振った。
この国ではハグは挨拶だ。
でも、初対面のナンパしてきた男とハグするのは、また話が違うと思った。
あと私日本人だし!



アイアンはあっそ、OK!とあっさり去っていった。
まーこれで脈無しって思って連絡して来ないかもな…。



が、すぐにっていうかその日のうちに
彼はメールして来た。




続きます。

ちょっとご挨拶

2019-04-08 10:31:08 | はじめに
時々見にきてくださっている皆様
そして案外しょっちゅう見にきてくださっている皆様
ありがとうございます。



更新がまちまちで、ごめんなさい。



こんなアラサーあかんたれ元お水でも案外忙しくて……(汗)



咲人の話はとても大切な話だったので
頑張って沢山書きましたが
実はもっとデカイ話になるのが、これからでございます。



よかったら懲りずにまたいらして下さい。
嬉しいです。




大岡メイサ

咲人との終わり

2019-04-08 10:10:49 | 咲人
電話が切れたのは、ただ私の携帯の電池が切れたからだった。



人生というのは、期せずして沢山のことが起こるもので。
その電話が、まさかの、私が咲人とした最後の電話になった。
あんなに毎日電話していたのに、だ。
実はこれには理由がある。




「あなた最近忙しそうね」



会う前の電話で、私はそう言った。
ほぼ毎日電話をかけてきていた咲人が、最近返信も遅かったのだ。
(今思うと、この人、よくあの二日間私のために時間作れたなと思う)
咲人はちょっと疲れたように言った。



「正直忙殺されてる。帰宅は深夜だし、副業もあるしな」

「大変ね」

「それに加えて、もしかしたら俺海外転勤するかもしれないんだ」




咲人の話では、もうすでに上司から打診されている。
行き先が問題で、咲人はその国に行ったことがない。
おまけにそこでは、彼の母国語はおろか、英語さえ通じない。
もちろん断ることも出来るけど……




「まぁ理想としては、赴任する前に一度見に行ってみたほうがいいと思うんだ。
俺がそこで生き延びられそうかどうか、さ」

「それが出来ればだいぶいいわね。
ちなみに行きたいの?」

「正直わからないよ。自分の国を出たことないし(旅行以外)」





わかるわ、と呟いた。
かくいう私も、この国に車で日本にしか居を構えたことはなかった。
英語だからまだマシだったけど、そら大変だった。



「もちろんあなた次第だけど、個人的には行ったほうがいいと思うわよ。
外国で、職を心配する必要なく住めるなんて、そんな経験なかなか出来ないわ。」

「……そうだな」

「それに期間限定なんでしょう?やってみるべきよ。
危ない国でもないんだし」

「…………。」




咲人は完全に納得していたけど、迷っていた。
そして、行くならこの頃からだと時期を教えてくれた。



咲人からの返信が滞るようになったのは、その時期からだった。
私は、寂しがりそうなものだけど…………
いくつか前の記事に書いた通り
彼のことを
「本気で付き合う相手ではない」と気付いてしまったからか
そしてすでに転勤のことを聞いていたからか
思ったより気にならなかった。




時々、げんき?忙しいんでしょう?大丈夫?とか
私の荷物見つかった?とか(笑)
月に一回くらい送った。



その度に咲人は、返信が遅くてごめんと言いながらも
長いメッセージを書いて、自分がどんな状況か教えてくれた。
嬉しかった。



私の予想通り、彼は転勤していた。
海外転勤のバタバタやストレスはよくわかる。
だから本当に、本当に、気にしていなかった。
どんなに彼から返信が遅くても。



それに、私たちは結局きちんと関係を始めることができなかった。
だから、彼を責めることも、私がその国へ行くことも、する気にならなかった。




あの夜、私がハイと答えていたら。
翌朝、喧嘩にならなければ。
私たちはもっと強く繋がって、今はもしかしたら一緒に住んでいたかもしれない。



でも、小娘でも生娘でもない私は
何が自分にとって我慢できないか
何が自分にとって必要か
いい加減わかっていた。




咲人とのことは今でも本当に良い思い出だ。(いや色々あったけどさ笑)
実は今でも、ほそぼそと連絡をとっている。
いつか化学変化が起こる気はしないけど。




繰り返すけど
人生っていうのは期せずして沢山のことが起こる。




咲人と大ゲンカして帰国した、その3日後に




私はスゲー奴に出会った。




それが次の男、アイアンである。





続きます!



最後の電話

2019-04-05 20:54:27 | 咲人
私たちの話題は、語学の話になった。



「私はあなたにとても感謝してるわ。母国語じゃないのに、私にたくさん練習させてくれるから…。」

「なんで俺がこんなに君に親切なのか、君は知ってるだろ」

「え?なんで?」

「(笑)」

「わからないわ、教えて。」

「おいおい、分からないふりしてるだけだろ。教えないぞ」

「お願い」

「君が好きだからだよ」




笑みがこぼれた。
咲人は誤魔化すように続けた。



「……と、俺も日本語勉強したいから。これが二つ目の理由」

「一つ目の理由、もう一回言って。」

「やだよ。」

「お願い、教えて。」

「オシエテ?なんて言ったの?」

「let me know って言ったの。」

「オシエテ……(メモしてる)」

「そう。お願い、教えて。」

「何度も言ったのにまだ聞きたいのかよ」

「お伝えしました通り、何度も言われてませんので」




今まで幾度となく咲人に繰り返されたスキの言葉。
でもいつも現実的な話はなかったから、
あの夜と翌朝に、ようやく、初めて、信じられるスキを聞いたと思った。
それを咲人にも伝えていた。


私の主張を理解したのか、それとも言いたかっただけなのか、
咲人はちょっと声を大にして言った。




「す、き、だ、よ!」

「爆笑」

「こういうこと得意じゃないんだ。君みたいにはできないんだよ。」

「(笑)」

「おい、笑うなよ。笑うの止めろよ、今すぐ」

「あはははは!!
はは……一つだけ笑いを止める方法があるけど?」

「嫌だ、聞きたくない」

「もう一回言うと……笑」

「絶対また笑うだろ」

「笑わないわ、約束する」

「出た!メイサの約束!守られないアレだろ!」

「約束するわよ〜信じてよ」

「うそだろ。ちなみに日本語でなんて言うの?」

「約束する、よ」

「ヤクソクスル」

「ね、お願い、言って。笑わないわ、約束する」

「………君が好きだからだよ」






微笑みが



溢れて仕方ないのは




私だけなのかな。






「私も」

「……あ、そ。」



彼のブスっとした顔が想像できる。
咲人は、居心地が悪そうにため息をついた。




「で、日本語の好きと大好きの違いって何なの?」

「まぁ、基本的にはlikeとlike a lot 程度の違いよ」

「ふーん。そうですか」

「ちなみに、I love ice cream だったら、loveだけどアイスクリームが大好き!って翻訳できるわね」

「男が男に言うのはありなの?」




プッ。
相変わらず変な着眼点持ってるな。




いくらか説明してあげたし、上手くできたと思ったけど、
やはり細かすぎる偏屈(な上に思ったより賢くなかった)彼は「あーしんどい」と私を真似た。
私はニヤニヤしながら言った。




「わかるわぁー、母国語じゃない英語で、日本語を学んでるんですものね。
かぁわいそー咲人」

「へ、可哀想なメイサ。母国語じゃない英語で、そんな生徒を教えなきゃいけないなんてな」

「あら、私にとってはそんなに辛くないわよ」

「そらそうだよ。少なくとも母国語を教えてんだから」

「そういう意味じゃないわよ」

「じゃぁ何だよ」




にっこり微笑んだ。




「私は私の生徒のことが大好きだから、楽しんでるわよ」

「……本当に?」




訝しげな声が面白かった。
私は窓の外を見上げた。真っ暗な空だ。




「勿論。今、すごく彼に会いたいのよ」

「………。」

「彼が欲しいのよ」

「…そういうこと言うなよ」

「なんで?」




咲人のやるせない表情が蘇った。




「距離があるんだぜ」

「あらそ?知らなかったわ。じゃ、私にもうそういうこと言わないでほしいのね」

「いや言ってほしい」



思わず吹き出した。
咲人のこういうところが好きだ。
私が黙ってニヤニヤしていると、咲人はさらに言った。



「俺も今、君が欲しいんだよ」




私は言った。



「私、あなたはもっと賢いかと思ってたわ。」

「そら間違いだったな」

「本当。もっと冷静かと思ったし」

「俺冷静じゃない?」

「私といる時は全然冷静じゃないじゃない。自分をコントロールできないくらい、好き過ぎるんでしょ」




俺のせいじゃないよ、とエラそうに答え、君の落ち度だ、と続けた。




「私の落ち度じゃないわよ」

「君のだろ」

「私の成功、よ」




Success?と唸った。



「いや、成功とは呼べない」

「なんで?」

「成功っていうには悪いことが多すぎるだろ。
それをもってしても余りあるいいことがある時だけ、成功って呼ぶんだ」



悪いことって何かしら?
私は首を傾げたが、聞くと恐ろしく話が長くなるので聞かなかった。
私はウンと伸びをして窓の外を見た。
街灯に仄暗く照らされた樹が目に入ると、あの日、公園で教えた”木漏れ日”が蘇った。




「影があるから光があるのよん」

「その陽の光と影の割合を教えろよ」

「今すっごくキラキラしてまーす」

「昨日は?」

「昨日はこっちは雨ね」

「(茶化してやがる…)先週は?」

「すっごく暑かったわ、あなたの街。
あなたのところは?」

「は?」




今、と私は答えた。




「キラキラしてないの?」

「……月しか見えないよ」

「綺麗な月?」

「そうでもない。見えるけど、たくさんの雲に隠れてるよ」

「じゃぁ咲人、もっと見たくなっちゃうわね」

「………。」

「彼女のことをもっと見たい、知りたい、って、思っちゃうでしょ」




咲人は少し黙って、また質問した。



「どうしたら、彼女はその姿を全部見せるの」



私はあっけらかんと答えた。



「シンプルよ。あなたの手で雲を全部どけて、抱きしめれば?」

「………。」

「捕まえて」

「………君は、捕まえられたいの?」

「もちろん。今すぐ」




言ったじゃないあなたが恋しいって、と軽く続けると、
なるほどね、と偏屈な声がした。

そこで不意に、





電話が切れた。




続きます!