川瀬有希の時の旅


「今日は何の日」と題し、過去のその日に起こった出来事を、自由気ままに語るブログです。

4月24日/ 今日は何の日

2012-04-24 00:15:00 | 忌日

(1942年)ルーシー・モード・モンゴメリ死去

カナダを代表する女性作家。
モンゴメリの作品で最も有名なのは、何と言っても『赤毛のアン』に始まる一連のアン・ブックスだ。
第一巻刊行(1908年)から百年以上経った今なお世界中で愛読されている。
日本でも村岡花子女史が最初に翻訳・紹介して以来根強い人気があり、僕もその虜になった一人。
きっかけは1979年放映のアニメ(フジテレビ放映の世界名作劇場)だったが、その後原作の世界にもどっぷりとはまった。

本当は詩人になりたかったそうだが、『アン』の爆発的セールスにより、モンゴメリは小説家としての要請から逃れることが出来なかった。
特に『アン』は、自身の手を離れたところにまで「成長」してしまった為、なかばそれが義務であるかのように続編を制作していくことになる。
それ程の人気を獲得した作品が、当初は出版社に持ち込んでも採用されず、暫くの間自宅でひっそりと保管されていたというから驚きだ。
しかも、後に出版化される際もなかばお情けで実現したそうで、その魅力は直ぐに認められた訳ではない。

僕は15歳以降の、落ち着きを身につけた『アン』の後半部分に始まり、ギルバートとの真実の愛に目覚める『愛情』までがシリーズの中で一番のお気に入りで、アンの子供達が主人公となるパート(『炉辺荘(イングルサイド)』及び『虹の谷』)は、正直言うと余り好きではない(例外的に、第一次大戦を背景とする最終巻『リラ』は、それまでにない深刻さに貫かれた展開に惹かれとても気に入ってはいるが……)。
シリーズ中、どの辺りの話が好きかは人により当然違ってくると思うが、多くの日本人の場合、お喋りで空想好きな子供時代のアンが最も支持されているような印象を受ける。

世界的な名声を手に入れたモンゴメリ。
しかし、その晩年は必ずしも幸せに満ちたものではなかった。
夫は若い頃から精神的に不安定な状態にあり、生涯完治することがなかった為、その世話で彼女は心労を重ね、遂には自身も神経衰弱に陥ってしまったと言われる。
それがとても不憫でならない。




さて、個人的に印象に残るアン・ブックスの文章をここで紹介しよう。
引用元は、村岡花子翻訳による新潮文庫・改訂版。




『赤毛のアン』より


>アンを孤児院へかえそうとするマリラと、引き取ろうと考えるマシュウの会話

「マシュウ、まさか、あんたは、あの子をひきとらなくちゃならないと言うんじゃ、ないでしょうね」
たとえマシュウが、さか立ちしたいと言い出したとしても、マリラはこんなに驚きはしなかったであろう。
「そうさな、いや、そんなわけでもないが━━」
問いつめられて困ってしまったマシュウは口ごもった。
「わしは思うに━━わしらには、あの子を、置いとけまいな」
「置いとけませんね。あの子がわたしらに、何の役にたつというんです?」
「わしらのほうであの子になにか役にたつかもしれんよ」


>マシュウがチョコレート・キャラメルを買ってきてくれた日のアンの台詞

「今晩は一つだけにしておくわ、マリラ。それからこれ、半分ダイアナにあげていいでしょう? そうしたら、あとの半分は倍もおいしくなるわ」


>初めてのピクニックを楽しみに待つアンの台詞

「あのね、マリラ、何かを楽しみにして待つということが、そのうれしいことの半分にあたるのよ。(中略)そのことはほんとうにならないかもしれないけれど、でも、それを待つときの楽しさだけはまちがいなく自分のものですもの」


>アラン夫人に香料ちがいのケーキを差し出すという失態をしでかした日のアンの台詞

「マリラ、明日がまだ何ひとつ失敗をしない新しい日だと思うとうれしくならない?」




『アンの青春』より


>ギルバートに向かいアンが語る理想

「あたしは、自分がこの世に生きているために、ほかの人たちが、いっそうたのしく、暮らせるというようにしたいの……どんなに小さな喜びでも幸福な思いでも、もしあたしがいなかったら味わえなかったろうというものを世の中へ贈りたいの」


>マリラとの会話の中でアンが口にした台詞

「けっきょく、一番、幸福な日というのは、すばらしいことや、驚くようなこと、胸の湧きたつようなできごとがおこる日でなく、真珠が一つずつ、そっと糸からすべりおちるように、単純な、小さな喜びを次々にもってくる一日一日のことだと思うわ」




『アンの愛情』より


>プリシラからレドモンド大学で何を得たかと問われてのアンの回答

「小さな障害はみな冗談とみなし、大きな障害は勝利の予報であるということを、あたし実際に学んだの」




『炉辺荘(イングルサイド)のアン』より


>スーザンとの会話の中でアンが口にした台詞

「あら、スーザン、普通の日なんてものはないわよ。どの日もどの日もほかの日にはないものをもっているんですもの」


>11月の炉辺荘にて、アンとウォルター(次男)の会話

大西洋から風が悲しげな歌をうたいながら吹きつけるにもかかわらず、炉辺荘は炉火と笑いで花が咲いたようだった。
「どうして風はたのしくないの、母さん」
と、ある夜、ウォルターがきいた。
「それはね、風はこの世界がはじまって以来のあらゆる悲しみを思い出しているからなのよ」
と、アンは答えた。




『虹の谷のアン』より


>フェイス(メレディス牧師の娘)との会話でウォルターが口にした台詞

「僕が詩を書くのが好きなわけはね━━普通の文章だと本当に聞こえないことも、詩にすると、たくさんのことが本当になるからなんだよ」


最新の画像もっと見る