『東京島』

今頃読んだのだけれど、閉塞感のある話かなと思っていたけれど
何気に開放感もありちょっとびっくり。

どうしても清子はバイタリティがあると感じる。これは『魂萌え』にも
感じた。ぎりぎりのラインでの発動なのか、それとも天性なのか。
しぶといとまで言えるほどの執着を感じてしまう。執着するものは
生だったり性だったり、財産だったりだけれど。同時に男の弱さを
よくあらわしていると思う。
清子は身体を一つの経済的でありまた精神的な優位に立たせるものとして
有効活用している。しかしその凋落から話はスタートするので、
そいうった意味では面白い。
ホンコンのバイタリティと日本人の弱体化した姿も現代の世界情勢を
あらわしていると思う。
各人のバックグラウンドの描き方は桐野らしいとおもう。
しかし深くは突っ込んでおらず、どちらかというと登場人物は
すべて現代の記号化のように思える。
あとからやってくるフィリピーナもそうだ。

最後はある意味ではユートピアの出現となる。
隔絶されたからこその理想郷。
男性同士のカップルが出来るところが面白いなと思う。
人は誰かと一緒に暮らしたくなるものだろか。
清子が生んだチータが最後に男女で結婚するより
男同士のほうが仲よさそうでいいかもと思うというくだりも、
同じように少し不思議に思うのは必ずパートナーが必要と思う
ところだ。